彼女
わさび醤油
彼女
寒いね。
笑いながら自分に問いかけてくる彼女は鼻まで赤くしていて、見ていてとても可愛らしかった、ということを覚えている。彼女のあとにつづいて歩いていき、あの場所で二人で長話しでもしたような気がする。いつまで彼女のあとについていったのか、今ではあまり覚えていない。
雪が止みませんね。
彼女はそういった。たしかに昨日から降り続いている。そのときはそのように捉えていたが今ではわかる。彼女の言った意味が。
先にいきますね。
白い布団には彼女の細くて白い肌は映えない。そして淡々と告げるあの声色。自分はすっかり記憶から無くなってしまったみたいだ。
新しい服を買ったの。
いつかは覚えていない。思い出せないが言っていた。黒い美しい艶のある髪に、映える真っ白なワンピース。だっけ。ああ、自分はここまで忘れてしまったのか。あとどのくらいしたら彼女のことを忘れてしまうのだろう。
彼女が通り過ぎるたびに香る、あれはどんな匂いだったか。
はて、彼女とは誰だったか。
彼女 わさび醤油 @ss_oo
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