第9話 雨降る月曜と相合傘

「へっ...?」


俺は数秒、思考と同時に自分の体も固まった。そして数秒間、耳の中には雨音だけが入ってくる。


「ほら早く!」

「はっ!?」


心寧は俺にぴったりとくっつき、腕を絡める。突然すぎる心寧の行動に、俺は目を丸くして抜け出そうとするが、心寧は逆に絡めた腕を強くし、抜け出せないようにしてくる。ちょっと柔らか...いや考えないようにしよう。こいつ...距離感バグってやがる。


「周りの目気になるんだけど!?」

「まぁまぁ!」


俺はため息を漏らしながら折り畳み傘を広げる。相合傘なんて俺は初めてするんだが、どういう表情をすればいいんだ...?ていうか他者目線から見たら完全に高校生カップルじゃないのか...?


「早歩きでお願いします...」


校門から出た俺と心寧は、雨の中を歩き始める。ちなみに、俺の帰り道とは真逆。そうしないと嫌われるに決まってる。まず、こうしないとダサすぎる。


「たっくんはこの学校慣れた?」

「まぁ、男子一人しかいないけど...お前らがいたから慣れたよ」

「へぇー!」


雨音が雑音となり、心寧の声が聞こえにくい中、会話を続ける。


「ここっ...水月は家どこら辺なのか?」

「んー、学校から15分くらい?」

「へ、へぇーまぁまぁ遠いんだな...」


今にして思えば、小学生の頃は心寧の家に行ったことがなかった。遊ぶときはいつも俺の家に来てカードゲームをしたり、テレビゲームをしたりして色々遊んでいた。そんな思い出を浸りながら俺は心寧を見る。


「っ!?」


俺は見てはいけないものを見てしまい、一瞬で前を見て額に手を当てる。なんといっても雨のせいで...心寧の2つのメロンを守っている例のアレが...!!


「ん?」

「うおっ!?」


突然俺を覗き込んできた心寧に、俺は声を上げて驚いてしまう。


「どうしたの?」


覗き込んだ心寧と余計に見えるアレに、俺は心の中で悶えながら、咳払いをして心寧に言う。


「な、なんでもない!とりあえず早めに歩かないか...?雨が激しくなるかもしれないし...!」

「えー」


早口で話す俺に心寧はむすっとした表情で俺の提案を否定する。というか心寧は自分で気づいてほしい。


「はいはい早く行くよ」


数分後に、心寧はとある家を指さして足を止める。


「ここー」

「え、大きいな」


外から見た限り2階建てだが、間口や奥行きが広く、大人数で住んでも大丈夫そうな大きい家だ。俺はその家をじっくりと見た後に心寧を見てから言う。


「じゃあ帰るわ」

「うん!今日はありがとう!」


心寧は俺から離れて、玄関に向かった。俺はそれを見送った後、傘を持ちながら背を向けて歩き出す...はずだった。


「おかえりーって雨で見えてるよ!?」

「ええええ!!本当だ!!」

「気をつけなー」

「何回目なのよ?」


聴いたことあるような声に思わず俺は振り返る。そして玄関の前で仲良く話している4人を見て、口が勝手に...


「は?」


それと同時に傘が手から滑り落ちて、俺は立ち尽くしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る