曇り空と、制服の向こうの君
白よもねこ
第1話 曇天と、後悔と懺悔
小さいころからマイペースで変わり者と言われ、相手の心情を読むことは得意だが自分の感情を表に出すのは苦手で表情が乏しく、何を考えているかわからない子とよく言われた。
思春期になってもあたりまえに人付き合いは苦手で、恋愛などしたためしはない。
女の子に興味はあったが、いつも愛情・恋愛というものに接するとどう対応してよいかわからず、とりあえず逃げて遠ざけた。
それでもときおり胸の奥に灯る、ほのかな愛だの恋だのという目に見えない曖昧模糊な感情の帰結は、当然のようにいつもむやみに自分や他人の心を傷つけた。
その日は朝から高速道路を走る車を運転していた。車は快調に走り 天気は曇り空だったが気分がよかったのでラジオから流れる流行り曲に合わせて「麦わらの~」などと口ずさんでいた。
・・・ふいに雨が降ってきた。それほど強くない雨だったが車のワイパーが作動しフロントガラスの雨を弾き飛ばす。
ラジオから流れる音楽が変わりケツメイシの「涙」が流れだす。この曲を聴くと、よくこの曲を聴いていた青春時代を思い出す。無知で無気力だった中学生時代の思い出は後悔と懺悔、未熟で自己保身しか考えていなかった自分への嫌悪感に満ちている。
さびのリズムに乗ってセンチメンタルな歌詞が流れだすと気だるい今日の空模様と相まって、過去の感情にどんどんと同化していき、自分が今さっきまでどんな感情でいたのかを、思い出すことが困難になっていた。
あれは中学3年生の夏、生まれて初めてラブレターをもらった。その日は今日と同じように気だるい、やけに熱く湿った日だった。
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