黒うさぎ

嗣見桃胡

第1話

血まみれのナイフと伝わる水っぽい触感、艶かな赤が脳を刺激した。

いつも強張った顔からは力が抜けて、むしろ優しそうに見えた。衝動に駆らた私は母に抱きつき、顔を埋めた。人生で覚える限り、初めてのハグだ。学校の鉄棒みたいな匂いだった。なぜか心が熱くって、たまらなくって、

おでこにキスをした。いつかトモダチが親にやっていたみたいに。

初めて触れた母という生物は、なんだか生温かった 。



そうして、私の母は死んだ。

涙が止まらなかった。








私は母を心から愛していた。

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