ファン
カエル
第1話
私は高校3年間を勉強に費やして、全く青春をしなかった。理由は、高校受験で行きたかった高校の試験で落ちてしまったからである。大学は何が何でも志望校に行くと決めて勉強にほとんどの時間を費やした。
そして、大学入学をして最初の1ヶ月で燃え尽きかけていた。
きっと、彼に声をかけられなければ私は大学に行かなくなっていただろう。
彼の名前は山下大輝、大学にスポーツ推薦で入学してきた子だ。彼はあまり勉強が得意じゃないようで、講義の内容が分からない時は近くに座っていた子に後から「教授今日こう言っていたけどどういうこと?」と聞いている。毎回違う人に聞いているが、彼の聞く子たちには共通点があって1つが集団でいること。もう1つが賢いということだ。なので、単独でいる私に声をかけてくるとは思っていなかった。
――
ある日、講義を終えて疲れたと思いながら帰ろうとしたタイミングで突然彼は近づいて来た。
「これ、教えて!」
私は頷いてから彼の手元のプリントを見た。そのプリントは講義の最後に配られたもので、予習しておくようにと教授が言っていたものだ。内容は決して難しいものではなく化学基礎の内容だった。
受験勉強をしていれば、文系の私でも余裕で解ける問題だった。
「いいよ。」
私はそう言いながら、彼のプリントに書き込みながら簡単に説明した。
彼は真剣な顔で聞いていたけど、どうやら納得はしていないみたいで難しい顔をした後に私の説明に対して質問をしてきた。
私はその質問に対して、よりかみ砕いて説明すると彼はとても笑顔になった。
「ありがとう。」
彼は納得したようで笑顔でお礼を言ってくれた。
そして、スタスタと講義室から出ていった。
私は彼の笑顔を見て胸の奥がキュッとなるのを感じながらもその日は帰宅した。
それから、講義の度に彼のことを目で追っていた。そして、彼や彼の所属している部活のことが話題に上がっていると耳を傾けていた。
彼らは大会に出場すれば入賞してくるチームだ。そして、学内には彼らのファンクラブが大学非公認だけど何個も存在している。
噂では学年ごとに推しているグループや個人ごとのファングループ、部全体を推している箱推しグループなどいくつものグループがあるらしい。そして、それぞれのグループがお互いに牽制しあっているのでどこかのグループが彼らに急接近するということはない。
だけど、各グループは決してお互いに敵対しているわけではなくて、情報交換を絶やさずにしているらしい。さらに、彼らに危害を加えようとした者がいれば、各グループは協力してその人の排除に動くと聞いた。過去にあるサークルが彼らに言いがかりをつけたらしいが、ファンクラブが動きそのサークルは解散になったらしい。
それ以降、彼らに手を出す人はいないと聞いた。ある意味大学内のカーストでは上位だと思う。だけど、彼らはそんなことに興味がないみたいで、ファンクラブの存在にすら気がついていないみたいだ。まあ、寮生活なので部員以外の人間との交流は極端に少なく、学内の情報に疎いと聞いたことがある。
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