第四章 新しい光

白い世界が広がっていた。

草の香り、金色の風。


「おかえり。」

ソウの声がした。


「ただいま。」


「どうだった?」

「行ってよかった。ちゃんと、さよならが言えた。」


マイは残った金貨を握りしめた。

「新しい自分になりたい。」


ソウは笑った。

「いいね。君はもう、解き放たれたんだ。」


マイは街へ行き、白いワンピースを選んだ。

鏡の中の自分が笑っている。

それはもう、“誰かの妹”でも、“誰かの娘”でもなかった。


扉の前で鍵をかける。

——カチリ。


長い橋を渡る。

ソウが待っていた。


「おかえり。」


マイは空を見上げた。

透き通る青の中、金の光がひとつ流れていく。


もう、戻れなくてもいい。

ここで、笑っていられるなら。


風が髪を揺らす。

その香りの中に、ほんの少しだけ金木犀の匂いがした。


——終わり。

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解き放たれた異世界へ @runa_yuzuki

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