ロイ=ロッサーナ物語(β版?)
@soyogukaze
1日目 100段階
「*#、逃げて!*#、早く!!」
僕を追いかけて、何かがどんどん迫って来るのが分かる
「&%くん。&%くん、もう足が痛いよ。疲れたよー」
僕の前を走ってる小さな女の子は、すでに疲れ果てていたが、逃げなきゃと言う生き物としての本能と、僕の声のせいだろうか?森の中の獣道を転がるように走り降りていた。
「あっ」
「*#!!」
僕の前を走ってる少女の脚は絡み木の根に足を取られて転んだ。
「&%くん、痛いよー。血が出てるよー。わーん」
恐怖と疲れと、何よりも足に走る痛みで少女はついに、その場に座り込み泣いてしまった。
「*#大丈夫?」
「&%くん、痛いよー。血が出てるよー」
女の子は体のあちこちをすりむき、膝からは血が流れだしていた。
ガサ
「*#立って、早く」
「&%くん、無理だよ。痛いよー」
「僕が、ここで戦うから、*#は師匠を呼んで来て」
「でも、&%くん」
「早く!行って!!」
「うん・・・」
僕は家からこっそり持ち出した。おじいちゃんの形見の剣を手に、震える膝で音がした方を見て構えて、必死に女の子を逃がそうと頑張った。女の子は体の痛みを我慢して再び走り出した。
「師匠連れて来るからー」
「すぐ、帰って来るからー」
女の子は大きな声を出して、僕に声をかけながら坂を下って行った。
ガサッ、ガサガサッ
草を搔き分けアイツがついに姿を見せた。黒くて大きいアイツは、空腹では無かったのか子供の僕らの脚でも逃げれる程度の速度で追い、今もすぐに襲えば食べれるだろうに、僕をじーっと見ていた。
「こいっ、おじいちゃんの剣でお前なんか倒してやる」
言葉なんて通じないだろうが、必死に強がって見せた
黒くて大きなアイツの体が一瞬低くなったかと思ったら、僕を目掛けて飛び掛かって来た。
「う゛っ、いてぇーーー」
僕は激痛で目を覚ました。
「うわっ何見てるのよ!!死ねこの馬鹿兄貴!!」
僕が激痛を我慢し見上げると、そこには白いパンツが見えた。それは、僕を起こす為にベッドに乗って思いっきり、股間を踏みつけてた妹のパンツだった。
「何もあんな起こし方しなくても」
股間の痛みを我慢しつつ、高校入学の祝いに買って貰ったスマホを探し。僕は画面を見た。
「うわっ、やべぇー」
入学式も終えて今日が高校の最初の授業の日だと言うのに、僕はスマホを買って貰えた喜びもありネット小説を夜遅くまで読みふけり、そのまま寝落ちをしていたのを思い出し、後悔をした。いや、そんな事をしてる場合でも無ければ、股間の痛みが治まるのを待ってる場合でも無い。美香(みか)が呼びに来るまで5分と無いのだから、急いで制服に着替え鞄を手に階段を駆け下り、歯を磨いて顔を洗い、手櫛で髪を
「あっ寝癖がとれねぇーって、時間が」
寝癖は後でどうにかするとして、台所にお弁当を取りに向かう
「母さん、お弁当は?」
「そこにあるでしょ?ちょっと、あんな何その寝癖。ちゃんと直して行きなさいよね」
「そんな事してる場合じゃ」
「クスッ、まだ時間あるから、直しておいでよ」
丁度この時間に呼びに来るはずの美香は、我が家のリビングで寛いでいた。
「今日の最下位は、牡羊座のあなた。今日は事故に注意が必要な1日となってしまいそう。ぽかぽか陽気で眠たくもなりますしね。牡羊座の人も、そうでない人も事故に気を付けて、行ってらっしゃい」
TVの占いの声が遠くでする中、僕は必死に寝癖と格闘していた。
「早く」
「時間あるって言ったじゃん」
「急げば間に合うくらいの時間はあるって事だよ」
「何それ」
「そもそも、優(ゆう)が寝坊してたのが悪い」
「うっ」
「あとね。妹ちゃんが言ってたんだけど」
「えっ?」
駅へと走りながら話をしていたが、美香が気になる事を言った。まさか、今朝の事だろうか?妹のパンツが見えたのは事故だし。そもそも、ミニスカートの制服であんな場所に立って、僕の股間を踏んで起こすのが悪いのであって・・・
「優も男の子なんだなって」
「あいつ何言ったの?」
やっぱりパンツの事か?
「あっ、京子おっはー」
「美香おは、朝から走ってるとか元気いいねぇ」
「違うよ。優が寝坊しただけで」
「ほんと、美香は優の面倒ばかり見て無い?」
「幼馴染だからね。腐れ縁ってやつだよ」
「美香可愛いんだし、あんな奴放っておいて彼氏作っちゃいなよ」
「ええ、彼氏なんて作ったらお父さんに殺されるよ」
「あはは、確かにお父さん厳しそうだもんねぇ」
駅が近づき中学からの同級生と合流した。走って来たおかげで電車には余裕で間に合いそうだ。そして、僕が幼馴染から、ただのモブや空気のようになる時間の始まりでもあった。小学校に上がる前に、美香の家が相続税を払う為に売った土地に建てられていた小さな家を親が買って、僕は引っ越して来て美香と出会い。家が一番近い同級生と言う事もあってか妹と一緒に3人で良く遊びお風呂とかも一緒に入った事がある間柄だ。小学校に入ると、美香は可愛くて、勉強も運動も出来て、家までお金持ちで、僕はと言えばその真逆な訳で・・・。
「美香はどんな人ならいいの?卒業式にも告られてたよね?」
「うーん、優しい人?」
「ええー、またそれ?」
「だって、優しい人が良いんだもん。怖い人とか浮気する人と無理だし」
「いやいや、芸能人の誰かに似てる人が良いとか何か無いの?」
「私はそう言うのは特には無いかなぁ?京子は?」
「絶対に背は180以上で、顔がヤマケンに似てて、あとお家がお金持ちとか?って言うのは冗談であぁでも身長は175は欲しいかなぁ、後は運動部に入っててカッコイイ人がいいかなぁ」
「それってバスケ部の」
「違う違うって」
そんな話聞きながらギリギリ同じ集団と言うか、何か話しかけられて反応しておかしくない距離で僕はついて行く。恋話と言えば美香が誰かを好きと言うのは聞いた事が無い、僕はと言えば美香が好きだけど、誰が好きかなんて話になると適当にクラスで人気がある子の名前を言っていた。そう言えば、僕が誰を好きと言ったのかを誰に聞いたのだか毎回、あの子はサッカー部のキャプテンと付き合ってるよとか、その子は野球部の子に片想い中だよとか教えてくれてたな。まぁそんな事教えて貰えても、好きでも無い子だったから落ち込む事は無かったんだけど
「おっ、美香じゃん。おは」
「おはよう」
「ねぇねぇ、昨日のさ」
駅ではさらに同じ中学から同じ高校に通う連中と合流をして、リア充達は朝から昨日のドラマの話や彼氏や彼女の事とか、期間限定メニューの事などなど楽しそうに語り合っていた。ここでも僕は空気だ。
「もう、毎日これに乗って行くの?」
「電車通学って憧れてたけど、自転車で通える場所にしとけば良かったかも」
まだ2回目の通学時間の満員電車、みんなの口から愚痴がこぼれていた。僕はと言えば、美香が痴漢に合わない様になるべく美香の後ろにとそればかりを考えていた。
「間もなく工事区間を通過いたします。大きな揺れにご注意下さい」
アナウンスを聞いた僕は脚に力を入れて揺れへと備えた。
クーウウウンンンン
ガタンッ
「キャッ、すいません」
「あっ、うん」
「あっ、ありがと」
「うん」
ポジション取りが良かったのか、上手に美香を支える事が出来た。朝の占いの事故に注意とは多分この事だったのだろう。結構大きな揺れだったし、その前のブレーキもなかなか厳しかったし
「着いたー」
「ほんと、途中の揺れきつかったよね」
「俺は余裕だったけどな」
「お前吊り革持ってたくせして、こんなになってたじゃねーかよ」
「うっせい、お前なんてリーマンのオッサンに睨まれてただろ」
「よお、優」
「おう、おはよう」
「お前、昨日更新されてたアレ読んだか?」
「ああ教えてもらったやつな、読んだ読んだ。アレ読んでて今朝寝坊してさぁ」
「何してんだよ。でも、アレ面白いだろ?」
「おう、昨日更新された所まで一気に読んでしまったぜ」
「だろだろ」
俺も別にぼっちと言う訳では無い。入学式の日にクラスで友達になったコイツがいるしな。ぼっちタイムから解放され楽しいオタトークを始めから僅か1分・・・
「くそー、学校案内にこんなの書いて無かったぞ。詐欺だー」
と連れが愚痴っていた。俺も愚痴りたいが、すぐ前に美香がいるから強がって愚痴らないでみたり
「糞そー誰だよこんな階段を通学路にしたやつは!」
そして2分後には強がりは何処へ行ってしまったのか、僕は連れと一緒に愚痴っていた。そんな僕達の前のリア充達は、皆運動部だったからか、カッタリー程度の事は言っていたがすぐに雑談へと戻り、何事も無いように階段を上って行ってたい
「でも、まぁ100段もあるだけの事はあって、景色は良いんだよなぁ」
「だな。ああ東京行てー」
「いや、ここも一応東京都だろ?」
「秋葉行てーなぁ。バイトでもしようかな」
「秋葉なら春休みに何度か行ったぞ俺」
「えっ、マジかよ」
と、安い小遣いな俺には遠い秋葉原に春休みだけで何度も行ったとかいう、羨ましい話を聞いていると
「キャー」✖複数
突然の突風にめくられるJK達のスカート
「おっ」
(ヨッシャー)
声が自然と出てしまった連れは周囲に白い目で見られていた。美香のは素早くスカートが押さえられ見えなかったが。中学の時の同級生の子のが白、黒、ベージュと3枚ほど見えた。これも事故かな?事故にあったのは女の子達だけど、とは言えあいつら牡羊座だっけか?
(見たっ?)
と、美香からの睨み+口パクが僕のとこへと来たので、慌てて手も首も横に降って否定をした。見たかったけど見えなかったんだよコンチクショー。まだ何だか疑ってるような感じで前を向き直していた。
「なっ、優。この階段もなかなかいいな」
「おうそうだな」
と、小声でやりとりをした。
100段階を登り切ると公園があり、その脇道を通りすぎると道路があって、道路の向かいがすぐ学校になっている。階段を避けると車道の脇を長い距離歩くの事になるので、自転車通学組以外は大体が駅から階段を登って通学をしていた
「じゃ、私はあっちだから」
「授業終わったら一緒に帰ろうね」
「うん、わかった。じゃあ」
美香は頭がいい。この学校自体は極々普通の公立で偏差値も50あたりだ。私立の進学校にも行ける頭の良さの美香が何故ここを選んだのかは知らない。ただ、特進科があり偏差値は70だとかなんとか・・・僕は本当は偏差値45もない自転車で通学出来る学校に行く気でいたのだけど、美香が私立の進学校では無く、ここを受けると知ってから必死に勉強をして何とか補欠合格を果たしたのだ。中3の俺グッジョブ。
「やっと終わったぁ」
「じゃ、俺部活行って来るわ」
「いてらー、俺は帰って他の作品漁るわ」
「いいのあったら教えてくれよ」
「あったらな」
と、言う訳で初日から小テストとか面倒な事もあった授業達が終わり、僕はスマホで良さげな作品が無いかチェックしながら、学校を出た。
僕がスマホを見ながら歩くのに慣れて無いからか、後ろでしていた美香の声が大きくなってきていた。高校では部活には入らずに予備校に行って大学受験モードに入ると言ったけど、本当だったんだな。
「危ないっ」
「えっ?」
次の瞬間、僕は高く青い春の空を見ていた
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