第27話 たかだが人間、されど人間
レナは、背後に突きつけられた剣の冷たさに、全身の血が一瞬で凍り付くのを感じた。
「嘘……! ありえない……!」
彼女の魔法「リアル・タイム」は、周囲の全てを遅延させる絶対的な時間支配のはず。その支配下で、人間が瞬間移動じみた加速をすることなど、物理法則も魔術の理も完全に無視している。
アルトの剣の切っ先が、わずかに彼女の皮膚に食い込み、冷たい感触の後に、一筋の熱い血が流れ出す。
「お前の『コレクション』は、今日で終わりだ、レナ」
アルトの声は、荒い息切れと共に発せられたが、その意志は鋼のように硬い。心臓を掠めた傷と、魔力による内側からの灼熱感は、彼を今にも立たせていられなくさせるはずだった。それでも、彼は立っていた。
レナは震える声で、顔を痙攣させながら絞り出す。
「……アルト、貴方は……貴方は人間なのに! なぜ……なぜ私を拒むの!? 私が時間を止めて、永遠に貴方を愛してあげるのに!」
彼女の頭の中では、アルトを永遠に手元に置くという、ただ一つの狂気が絶対的な真実として存在している。この状況は、その真実に対する冒涜であり、理解を超えたエラーだった。
リアは、アルトの背中越しに、二人の緊迫した対峙を見つめていた。彼女の全身を巡る死の魔力は、いつでも飛び出せるように臨界点に達している。だが、アルトの「下がれ」という言葉と、彼の眼差しの真剣さが、彼女の行動を縛っていた。
「愛? 狂った執着を、愛だと履き違えるな」アルトは冷酷に言い放つ。「俺は、お前が愛した『過去のアルト』なんかじゃない。俺は……ただの人間だ」
彼は剣を持つ手に力を込める。レナの首筋の血が、ぽたりと地面に落ちる。
その瞬間、レナの理性が完全に決壊した。
「ああああぁぁぁ!! 違う! 違う! 貴方は私だけのものよ! 私が……私が、貴方を永遠にしてあげる! リアル・タイム・オーバーロード!」
彼女は、振り向きもせずに、手元の杖を天に向けて突き上げた。
杖から放たれた魔力の光は、先ほどとは比べ物にならないほど巨大なエネルギーの奔流となり、路地裏を、そして周囲の空間そのものを歪ませ始める。
それは、彼女の魔力の全てを、この場にいる全ての存在を破壊するために注ぎ込んだ、自滅的な最大魔術だった。
「アルト、逃げて!!」
リアは、瞬時に大鎌を振るい、青い死の炎でアルトの背中を押し、彼をレナから引き剥がそうとする。
だが、アルトは動かなかった。
それはなぜか?
「その技こそが概念を超える……つまり原石を持っていくのに最適なんだよっ!」
───俺はそこで死を待つのだった。
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───────────次回は、「天国の沙汰も原石次第」です
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