第18話 味方?

「なぜ、ここに?」


​俺の問いに、目の前の人物は無感情に答えた。重厚な黒い鎧に身を包んだその姿は、まるで現代に迷い込んだ中世の騎士のようだ。


​「それは俺も問いたい。てか、何で俺を追いかけて?」


​「逃げるから、だ」


​まるで野生動物の狩りのようだ。


​「そうか.....俺は単純に、ある人間たちから逃げてただけなんだ」


​俺は地面に視線を落とす。土の感触と、追っ手から逃げたときの心臓の鼓動が、まだ指先に残っている気がした。


​「逃げてた?」


​「そう。今、ある人間たちに訳あって監禁されてたんだよ。お前も一人知ってるよ。あれだ……前に体術師と戦っただろ?その女も、だ」


​俺が口にした途端、鎧の騎士の周囲の空気が、一瞬で凍りついたように感じた。


​「ほう」


​冷たく、一切の感情を乗せない声。その「ほう」には、理解か、軽蔑か、あるいは危険な予感が含まれているのか。


​「これ、受け取れ」


​突然、騎士は大きな手のひらを俺に突き出した。その掌に乗っていたのは、真っ黒な物体。


​「なんだ.......これ」


​それは石のように思えた。しかし、ただの石ではない。妙に光沢があり、照明がないにもかかわらず闇を反射し、丸みを帯びている。


​「いつか、分かる」


​騎士は重厚な鎧越しに、真剣な眼差しをしているのが伝わってきた。兜の隙間から見えた瞳は、星のない夜空のように深く、そして、どこか切羽詰まった焦燥を帯びていた。


「なっ.....」


​俺がその黒い物体に触れると異変が起こった。


―――目が、回るのだ。

なんなら吐き気がする。


「なにを.....した」


俺は、それをポケットに仕舞う。

すると、症状が無くなってきた。


​「なんにも」


​男は一言だけ言う。


​「は......?」


​「それは、お前の自由を保証するものだ」


​騎士の影が、夜の帳に溶ける寸前、俺は彼が放った別の言葉を聞いた。


​「逃亡の手助けとなる」


​その言葉の意味を理解する前に、彼は完全に消えた。いつの間にか、だった。


「っ」


​―――この石は自由の保証?

どういうことなのか。


「本当に....これは何なんだ?」


俺は、疑問だけが残った。





そこから程なくして、森から抜けることに成功した。


「良かった....っ」


次に目指すは王都か。

ここから、東にずっと.....だよな。


「うしっ、頑張るか」


俺は、歩みを始める。

1歩、1歩と。


―――その時に感じた視線などを放っておいて。


───────────────────────


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​──────次回は、「黒い石」 です。

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