手っ取り早く天国に行くためには、自己犠牲が最適らしい

つかとばゐ

第1話 天国に行きたい

「アルト.....っ、ねぇ行かないでよ....っ!ねぇ!」


「ダメだよ....、アルトく.......んっ!」


「いやっ!いやだよ......っ!きゃああああっ!」


―――いつからこうなってしまったんだろう。この子たちは、昔はこんな風じゃなかったはずだ。


もっと....ガンガン冒険していく感じで、心配なんてされることの方が少なかった。


「いや、大丈夫だから....」


俺はそう言ってパーティで暮らしている家から出ようとする。


「レナっ.....やって......っ」


「ごめん.....っ、ごめんなさい....アルトくんっ」


後ろを振り返ると、魔術師レナが俺に向けて魔法を唱えようとしていた。これは何回目だろうか。


「あっ.....ぐっ」


いつも、この魔法を食らって意識が無くなる。多分睡眠魔法とかの類だろう。さて、今日はどんな夢を見るのかな.....





数年前。


「うお~っ」


この世界に、俺は思わず感動してしまった。美しい自然、美しい景観、美しい動物.....どれをとっても美しいという感想が出てくる。


「確か....ゲームの世界だっけ?」


……そう、ここはゲームの世界。

かの有名ゲームたちの売上を優に超えたというファンタジーゲーム、【Several Of Kings】というものの世界だった。


「楽しかったなぁ。なんせグラフィックとかエグかったよな」


ストーリーはもちろんのこと。操作性やグラフィックのどれもこれもが非の打ち所のない作品だった。


「まぁ、この世界はすぐ去ることになりそうだけど」


―――実は、俺はいくつかの年月が経ったら、再度天国へ行かなければならない。


「俺は被験体らしいからなぁ」


女神様が言うには、「お前は被験体じゃ。じゃから、10年以内にはここへまた戻ってこい」 と。


「転生させることを実験なんて.....倫理観バグってるよなぁ」


天国の人たちは意外と、人間のことを見下しているのかもしれない。


​「っうし。まずは情報収集と、当面の生活費をどうにかしないと」


​それじゃあ、街へと行くかぁ。

……ってか、女神様が用意してくれたこの身体......若いからよく動けるなぁ。とりあえず、早くこんな森から抜け出そう。





​街にて。


​「へいらっしゃい!お前さんはここに来るのが初めてかい?」


​賑やかな人々の声と、香ばしい匂いに釣られ、この世界のことを知るには酒場が一番だろうと考えた俺は、店へと入った。


​「ああ.....そうだ」


金が無いことは伝えておこう。


​「すまない....今、金が無くて....。実は、この街の情報が欲しくて立ち寄ったんだが」


​そう謝罪すると、店主は「いやいや......ちょっと待ってろ」と言ってきた。


​「.....?」


​……にしても本当に食欲をそそるような匂いだな。


​「へいっ、お待ちっ!食えって」


​「....え?い、いやいや悪いですよこんな」


​「良いってことよ。さっきの発言聞いちゃあ、こっとしては嬉しくてな。新参者ってのは困ってるもんだ。飯食ってけよ」


そう言うので、有難く出された料理を食べることにした。

―――ビーフカレーだった。


「ねぇ」


唐突に、右隣の席の人にそう言われた。


「んん?」


「君、一人で来たの?」


「ああ......そうだ」


「へぇ~」


何か考えるような仕草をしていた。

……というかこの人、めちゃくちゃ美人だな。


「あー、私のパーティに入らない?」


「―――へ?」


唐突すぎて訳が分からなかった。


「だって、その年齢で喋ることも出来るんでしょ?」


あぁ、そうか。

ここの世界は識字率とかが低いのか。


───俺は特典で読み書きが出来るからな。


「んで、どう?私のパーティに入らない?多分、見たところ君は騎士とかそういう類いに見える」


どうしようかな。

……そもそも冒険はしようと思ってたし、別にいいのかもしれない。


「ああ......入る」


「おおっ!ありがとうね~っ!いやさぁ、実はパーティを募集しているのに、なぜか皆入ってくれなくてね.....」


す、数年間??

それはやばくないか?


「そ、そうなんだな」


「だから~っ、君は記念すべき私のパーティの一人となる訳だなっ!」


なんか、喋り口調が変わっているような気がしたが、気にするのはやめることにした。


「それじゃあ、私のことを紹介しようっ!んーとね、私の名前はレナって言うんだっ!役職はこう見えても......魔術師なんだっ」


「魔術師か......凄いな.....っ」


気付けば感嘆を漏らしていた。

すると───


「君は.....良い奴なんだな」


え?


「私は、こんな喋り方だから魔術師とかに思われないんだ....その、男勝りというか.....だから演じたりして、どうにかパーティに入れようとしたんだが.......」


なるほど。

だから口調が変わってたのか。


「全然そうは思わないかな、俺は。魔術師ってかっこいいじゃん?俺は偏見とかないよ」


「.......ありがとうっ!」


顔を見るとすんごく嬉しそうな顔をしていた。

……再度言うが、本当に美人だな。


艶らかで長髪な髪は背中まで伸びており、凛々しさを感じるような目に口。どこかの美術館に写真として飾ったとしても差し支えのないほどだった。


「それじゃあ、次は君のことが知りたいな?」


「ああ......俺は───」


自身のことを大体説明し、この街の事を聞きながら飯を食べて、ギルドへと向かうことにした。





「はい、はい......宜しくお願いします.....っ」


今、ギルドに着いてレナが俺のパーティ加入の申請をしている所だ。


「ん......?」


ギルドに置かれていたとある書物が目に付いた。

───聖書?


「これでも見て、手っ取り早く天国に行く方法でも探しておくか.....?」


結構その聖書は古びれており、触れた指が少し黒くなるほどだった。


「ほー?」


読んでみると、正直難しいことばかりが書かれていて、肝心な天国な行き方?がない。


「まぁ、聖書だし」


天国=死んでるってことだから、それを仄めかすようなことは書かれている訳ないか。


「いや......これって」


そう思って閉じようとしたところ、ある一節が目に入った。


───自己犠牲をした者は、天国へと行かれたのであった。


「これだっ!」


1度は考えたことはある「自己犠牲」。

それをしたら、天国に行けるらしい。


「自己犠牲で死ぬって....かっこいいよな」


正直、やばい考えなのは百も承知である。

一応言っておくが、希死念慮を抱えている訳ではない。


「よし、将来的には天国に行くために自己犠牲をしまくろう」


そう独り言していると、背後から気配を感じた。


「ねぇ、天国に行くって......どういうことだ?」


なにやら、不安そうな顔をしてレナはそう尋ねた。

……どう言い訳しよう?


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───────────次回は、「命の危機」です。

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