ミニガン持って防御力極めたら最強じゃない?
K2(けにー)
第1話
地球にダンジョンが出現して早1年。
スタンピードにより街が壊滅的被害を被る……などという創作の様な展開は発生せず、一時的な混乱はあったが、今では日常風景の一つに収まったダンジョン。
ダンジョンでは、モンスターを倒すとステータスが獲得できる様になった。
ゲームでおなじみのアレである。
レベルも存在し、上がると体力や魔力といった項目が上昇。つまり人間として成長し、更に強くなったことが一目でわかるようになった。
勿論スキルも存在する。
剣術や槍術といった武術系スキルから、身体強化や視力上昇といった肉体的に作用するスキル。そして火属性魔法や水属性魔法といった魔法系スキルまで、判明しているものだけでも千を超えるスキルが。
私的には戦闘系スキルが欲しいな、と願わずには居られないが、運良く戦闘系スキルが当たるのは稀。
これからのダンジョン探索に活かせるスキルなら何でもいい。そんなスタンスで、私はステータスを得るためにダンジョンへと赴いた。
そうそう。なんで探索者になったかって言うと、単純に就職が嫌で、一人で気楽にお金を稼いで生活したいからって言う理由です。
だからハズレスキルが出たら……頑張って就職するしかない、嫌な未来が待ってます。
頼むよダンジョン!私に使えるスキルを下さい!
初めてダンジョンに入る人向けに開かれている探索者協会主催の講習会。講師役兼案内人の自衛隊員さんにゾロゾロとついて行き、適当な木の枝が渡される。
「ステータスの取得のため、その棒でスライムを潰して下さい」
言われるがまま、視界に入ったスライムに棒を振り下ろした。
「えいっ」
<ステータスを取得しました>
おぉ……事前に知ってたけど、頭に直接響く電子音声に驚く。
「問題なく取得出来ましたか?出来たなら、講習は此処までですので各自解散でお願いします」
言い忘れていたが、此処はダンジョン第一階層。基本的に無害なスライムだけ湧く安全なエリアであり、この様な講習を行う場として利用されがちな、ただの広場である。
だからモンスターと戦う殺伐としたダンジョン内部でも、此処だけはほのぼのとした雰囲気が漂っている理由だ。
既に探索者として従事している人たちは、この階層に用がないので、そそくさと次の階層へと進んで行く。
講習メンバーから離れて一人になると、その場に座ってステータスを開く。
――――――――――――――――――――――
名前:
年齢:18歳 性別:女 レベル:1
所属:日本国
体力:12/12
魔力:100/100
筋力:10
敏捷:3
耐物:20
耐魔:20
精神:10
所持スキル:【ミニガンLv1】
――――――――――――――――――――――
「ミニ……ガン?」
説明しよう!
ミニガンとは、複数の銃身を回転させ、電動モーターで連続発射する機関銃のこと。毎分2000〜4000発といった非常に高い発射速度で、人は一瞬でミンチになる凄まじい威力を誇る、凶悪な火器のことだ!!
シュワちゃんが警察相手にブッパしてる武器の事です。
いや知ってるって方はごめん。私も知ってる。
で、スキル詳細だけど、下記の文章が表示された。
――――――――――――――――――――――
スキル【ミニガンLv1】
魔法機関銃ミニガンを召喚する。
魔力を消費して弾丸を放たれる。
発射レート:毎分4000発固定
1弾薬=1魔力
――――――――――――――――――――――
詳細とはこれ如何に、と言わんばかりに簡潔な紹介文。ただ発射速度や弾薬の供給先が判明した。1弾薬=1魔力とはつまり、現状だと100発撃てる計算になる。
……んん?
ちょっと気になったので、スマホでAIに質問を投げかける。
毎分4000発のミニガンで100発を撃ち切るに掛かる時間は何秒ですか?
A:理論値約1.5秒。
継戦能力無さ過ぎで草。
もはや雑魚なまである。
一掃射分にも満たない火力で、このミニガンを主兵装として利用する場合は、どうにかして魔力を増やさなければ話にならない。
ゲームの様に魔力を恒久的に10増やす、といった効果を持つアイテムなどが非発見な以上、魔力を増やす方法は現状だと唯一つ。
レベルアップしかない。
引き金を引いた瞬間には撃ち終わる主兵装(次弾なし。ただし確kill)。これでどの様にレベル上げしろと?
……ミニガンを、鈍器として利用するとかどうだろう?
名案ではなかろうか。
ひとまず召喚してみて、鈍器として使えるかどうか確かめよう。
『召喚』
六本の銃身を備えた、無骨な、それでいて機能性を兼ね備えた威圧的なデザイン。うん。かっこいいんだけどね。
それよりもっ
「おっ―――もッ!?」
重すぎ。調べてみたら本体だけで18kgもあるらしい。こんなに重かったんだミニガン……てっきり5kgくらいだと思ってた。
ただ、これだけの重量物だ。振り回すことができれば、それはもう立派な鈍器に早変わりだろう。
近くに居た無害なスライムに落とす。潰れる。粒子となって消滅。ドロップは無し。レベルアップもなし。
まぁ当然の結果ですわな。
一旦召還。
因みに、一度手にしたからか利用方法がスッと頭にインストールされた様子。
えーどうしよう。今のところ直ぐ撃ち切っちゃう武器だけしかないから、その後は鈍器として振り回すしかない。
ただ筋力は低いし、敏捷は無いも同然。これでは攻撃も当たらないし、有効打になり得ない。
ステータス取得時から低い値の項目は、レベルアップ後も伸びが悪いが常識。
他ステータスに比べて耐物、耐魔が高いから……防御力重視で基本受け身になるとか?耐物とか高ければ攻撃を無力化出来るのは知られてることだし。
ただ、それも
でも早く動けて回避できないなら、もう受け身になるしか無いじゃん。
………………待てよ?
すべての攻撃を防御……物魔耐性で防ぎつつ魔力を何らかの手段で回復。それでミニガン撃って、また亀のように身を守る。序に自動回復系スキルもあれば完璧。
ミニガン持って、防御力極めたら最強なのでは?
今後のレベルアップ時のステータス上昇幅などの不確定要素は多々あれど、実現できれば攻守整った人間要塞になれる。いや、一応動けるから戦車か。
目指そう、人間戦車!
―――こうして菜々の目標が決まった瞬間だった。
まぁ今後の成長しだいで頓挫するかも知れないが、その時に目標を定め直せばいいでしょうと気楽に考え、レベルアップ目指して第二階層へと進みたいと思います。
階段を降りると直ぐに第二階層。
狭い平原の第一階層と違って、見渡す限りの広い土地。木々が点在する草原であり、ここから人間を積極的に攻撃してくるモンスターが出現する階層でもある。
ただまぁエンカウント率は低い。
というのも、他の初心者さんがレベル上げの為に大量に存在するせいで、モンスターの取り合いが発生しているからだ。
因みに何処のダンジョンでもこんな感じらしい。
だから危険率は高いけど、第三階層へと向かう事が非公式サイトで推奨されている。
ただ実行する人は殆ど居ない。普通に複数体で襲って来るモンスターが出現するからだ。余程素晴らしいスキルをお持ちなら兎も角、初心者の状態で挑むのは無謀過ぎる。
私を省いて、ね。
複数体相手とかミニガンの標的でしかない。
てことで、第二階層をスルー。
エンカウントせずに数十分。
階段を降りて第三階層へと到着した。第二階層と違って木々の密度が増し森のような環境になっている。死角が多いので注意が必要だ。
更にここからは人型モンスター……創作では御馴染みのゴブリンが登場する。
緑色の肌を持った醜顔の子鬼で普通に気色悪い生物だが、初心者が苦戦する最初のモンスターと言われている。
理由は棒や石などの原始的な武器を使うから―――ではなく。
人型だから殺すのに拒絶感や罪悪感を抱くから、らしい。
は?
先に述べたが、ゴブリンは気色悪い醜顔の子鬼である。これ殺せないとかアタオカでしょ。同じく気色悪いカテゴリーに属するゴキブリとかは普通に殺せるくせして、なに日和ってるんだか。
馬鹿馬鹿しくて草生えましたわ。
なんて第三階層のレビューを思い出していると、グギャグギャ騒がしい木の棒装備のゴブリン✕5とエンカウントした。
「「「「「グギャッ!!」」」」」
「うわぁキッショ……」
因みに彼らは雄しか存在しないため、女性を見ると嬉々として襲って来る性質がある。勿論、目的は繁殖と言う名の強姦。
尚、ダンジョンで強姦された女性が妊娠した、なんて話は聞かない。
被害者の心境を慮って意図的に情報が遮断されている可能性もあるが……
まぁ兎も角その様な理由から、彼らは菜々を見つけるなり、武器である木の棒を放り投げ、股の粗末な棒を仰け反らせながら走り出した。先走って何か垂れてるけどキモすぎる。
見るに耐えない。
取り出したのは当然、ミニガン。
重さに耐えつつ構えると、引き金を引いた。
六銃身が回転するモーター音。そして蜂の群れに襲われるような発砲音と共に放たれるは、躰を瞬時に蜂の巣にする鉛の嵐。跳ね上がりそうになる銃身を必死に水平に維持しつつ横に一凪。
それだけでゴブリン達は、背後の木々共々ミンチに早変わりした。
ざまぁwww
<レベルアップしました>
<レベルアップしました>
<レベルアップしました>
「おぉ〜腐っても三階層のモンスター、経験値が美味しいね」
見た目及び性格は最悪だけど、此処だけはミリ評価できるかも知れない。
暫くして死体は粒子となって消滅。代わりにドロップアイテムに変化した。全て魔石で特筆すべき物はない。
ササッと拾って、ステータス確認の為に階段に退避する。
階段にはモンスターが寄って来ないので、ある種の安全地帯として利用されている。丁度休める段差があるのも重宝されるポイントだろう。
あ、因みに他人の移動に邪魔にならないよう、左右に寄るのがマナーとのこと。
「さて……どれくらい成長したかな」
ステータスを開く。
――――――――――――――――――――――
名前:
年齢:18歳 性別:女 レベル:4
所属:日本国
体力:18/18
魔力:324/400
筋力:22
敏捷:5
耐性:60
魔耐:50
精神:11
所持スキル:【ミニガンLv1】
――――――――――――――――――――――
おお……かなり成長を感じる。
特に魔力。最大値状態なら6秒撃ち続けられる計算だ。1.5秒からしたら十分の成長だろう。その他の数値も細々とだが上昇している。
この調子で頑張って継戦能力を高めよう。
てことで、少し休んでまた第三階層に足を踏み入れた。
――――――――――――――――――――――
星がほしー……欲しいです。
よろしくお願いいたしますm( _ _ )m
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