待遇格差なんてゴメンだ
調べたいこと、それは新垣先生のことだ。
まずは新垣先生がどこにいるか調べてみよう。できれば王や老人についても調べたいが、老人は特に魔法を自在に操る。俺が想像もつかない方法を使える可能性が高い。目の敵にはされたくないから慎重にいこう。
指先に魔力を宿し、【探知】と書いてみる。誰がどこにいるのか探るイメージだ。
するとどこにどんな人がいるのか知覚できた。不思議な感覚だ。ただこの方面のこのぐらいの距離にいる、ということしかわからない。これじゃ『気配察知』と使い方が変わらないな。
もう一度【探知】と書く。今度は周辺の建物の状況と誰がどこにいるのか探るイメージ。今度は脳裏に建物とどこに人がいるかの映像が見えた。感覚的には知覚したモノを映像として思い浮かべている、という感じか。これは便利だ。
『刻印』はある程度自由が利くようで、イメージ通りのことが起こる。そして起こる現象に応じて魔力量の消費も変わるようだ。意識して魔力を多めに込めることもできると思うが、自動で必要な魔力が徴収されるらしい。魔力のことなんてよくわからない異世界人にも易しい仕様だ。
クラスメイト達は割り当てられた部屋で寝ていたりステータス確認をしたりしているようだ。
更に範囲を広げていくと別の建物に新垣先生を見つけた。なんだこれ、馬小屋かなにかか? 人以外の生き物も探知できるようにイメージすると魔力が減って先生の近くに馬が映った。
こんな待遇の格差を堂々とするなんて。
いや、英雄の諸君とは違うからで済ませる気か。この分だと替えの下着も用意されてなさそう。
様子を見に行きがてら持っていくか。俺なら収納に入れた、で数が合わない矛盾を誤魔化せるし。
【存在偽装】でベッドに俺と同じ姿のヤツを寝かせて、【存在隠蔽】で俺自身を隠す。便利なことに足音も消してくれるようだ。ただの【隠蔽】じゃなくした甲斐があるというモノ。
俺は先生のサイズに合いそうな替えの下着を収納に入れて部屋の窓を開けて外へ出る。ベランダもなにもなかったが、そのまま飛び降りても平気だった。流石は異世界ステータス。しかも着地音まで消してくれるんだなこれが。
ただ悠長にしてはいられない。持続効果のあるモノは魔力を消費し続ける。
『気配察知』と【探知】と【存在隠蔽】を同時使用しているので魔力多めとはいえ余裕はないだろう。
降りた屋根上を伝って新垣先生の下へ。走ってみると身体が軽くてバカ速い。
着いたら本当に馬小屋だった。先生は藁の上で寝転がっている。馬が住んでいる場所だから獣臭さがあった。こんなところで寝たら匂いが移りそうだ。それも狙いか? 先生を徹底的に下げて子供を自分達側に引き込もうって腹か?
寝転がってはいるが寝つけていないようだ。バレないようにそっと替えの下着を置いて去る。ちょっと音は鳴ったかもしれないが風で藁がかさかさ言っているので大丈夫だろう。
「えっ? これは、誰かいるのか……?」
去り際に先生の声が聞こえた気がするが、無視して立ち去った。誰かに見つかったらマズいしな。先生が探らなければいいが。今怪しまれるのはゴメンだ。
大した手助けにはならないが、先生のことを気にかけている生徒がいるというだけで最後の一線は保てるはず。
今日の目的は果たした。部屋に戻って寝よう。
戻る時も窓から。ジャンプで十数メートルのところに手が届くって凄いな。ベッドに入り偽造と隠蔽を解いて目を閉じる。楽観的な方だとは思っているが流石に緊張していたのかすぐには眠れなかった。とはいえ日中帯の動きに支障が出ても仕方がない。試しに自分の手に【睡眠】と書いてみた。急激な眠気によって意識が薄れていく。恐ろしい力だ。
鍋をお玉で力いっぱい叩いたような音で目が覚める。寝起きで働かない意識が無理矢理覚醒させられた。……なんだよ煩いな。
若干不機嫌になりつつ身体を起こす。慣れないベッドで寝たせいか身体が重かった。
「朝食の時間です。昨日支給した衣服に着替えて集合してください」
昨日の老人ではない。女性の声だった。
俺は昨日から着ていた制服と下着を脱いで着替える。元の世界とは生産技術が違うのか若干ごわごわしている気がした。俺ならもっといいヤツ創れたりするのかな。スキル持ってても知識がないか。
部屋を出ると他の生徒達も集まっていた。起こして回っていたのは侍女服を着た女性だ。男子が全員集まってから食堂へ案内される。別の階から来た女子達と合流して違和感を覚える。男子は俺含めて寝癖がついているヤツも多いが、女子はさらさらだ。櫛なんかの身嗜みを整える道具はなかったと思うが。髪長い女子が整っているのは確実になにかしている。
多分、不満を増やさないために朝一で風呂にでも入れてもらったか。女子からの方が不満が出そうだしな。ただ男子も一日一回締めには入れさせて欲しいが。
食堂には長机と椅子が並び、既に料理が置かれていた。
いい匂いがして腹が鳴ってしまう。パンやスープ、肉や野菜まであった。一応鑑定したが毒は入っていなさそうだ。
生徒達の食事が始まる。
ただし、そこに新垣先生の姿はなかった。
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