異世界転生『リアル・プレイヤー』――ゲームっぽい世界で始まる現実は、チートスキルと共に――

日傘差すバイト

異世界転生 勇者

 

 18歳の夏に、やっと念願のバイクを購入した。

 免許自体はもっと早くに取得していたけど。

 欲しいバイクを買うお金が溜まるまで、待っていたから。


 とても嬉しかった。


  

 その愛車GROMに乗って。 


 初めて一人で旅行に出た。

 ただ隣町に行って、有名なお店のラーメンを食べて帰ってくるだけの予定だ。


 晴れていて絶好の天気。


 小さめの車体は、軽くて取り回しが良く。

 颯爽と吹き付ける心地よい風に、つい浮かれて制限速度を超えてしまう。


 普段はうるさいと思うエンジン音なのに。

 今だけは、その鼓動も振動も、好きに思える。


 バイクを買ってよかった。


 そう思いながら。

 街の交差点に差し掛かった時。

 前方を走るトラックが左折する、その右側から、交差点に進入した。


 直後。


 意識は断絶した。





 ――九条連くじょうれんは、ブレーキすら掛けずに右折しようとした軽自動車を回避しようとしての横っ面に弾かれて転倒した。


 時速、80キロ。


 その速度で投げ出された身体は、中央分離帯に激突し、後続のトラックのタイヤに頭部を含め、全身を擦り潰された。


 頭部は原形をとどめず、中身は漏れ出し。

 引き裂かれた身体から、骨ごと生きるための機能がぐずぐずになってあふれ出した。


 


 



 ……軽快な音楽が鳴っている。


 真っ暗な視界。


 バイクで交差点に入ったと思ったら、目の前が真っ暗になった。

 そう思っていたが……。


 瞼を開ける。


 すると、文字が見えた。


 ――キャラクターを作成してください――



 まるで、オンラインゲームのキャラクタークリエイションだ。


 種族、性別、年齢、容姿、ジョブ。


 選択の項目が、浮かび上がる。


 しかし、その状態から戻ることは出来ない。


 ブブー、と音が鳴り。


 ――キャラクターを作成してください――


 の文字が明滅するだけだ。


 

 できることは、意識とともに動くカーソルで、項目を選択する事。

 それだけだ。

 


 つまり。

 

 ……これは……やはり死んだのではないか?


 これは……、まさか。


 そう思いつつ、項目を選択する。


 まず種族。

 ヒュム、エルフ、ブラウニー、獣人、ダークエルフ……等々。

 種類は多岐にわたるが、どれもファンタジー色が強いらしい。


 とりあえず、人間にあたるであろう、ヒュムにしよう。


 次に、性別と年齢


 性別はそのまま、♂で良い。

 年齢もそのまま18で良い。


 その次は、容姿。


 

 てきとうに高身長イケメンをでっちあげておく。

 髪だけキンパツにしておくか。

 もう少し色白にして、目を青くしておこう。

 日本人ぽくはなくなったが、ファンタジーならこの西洋人なイケメンで問題ないだろう。

 

 そしてジョブだ。


 やはり、勇者、戦士、神官、斥候、魔法使い……。

 様々なカテゴリーが用意されているようだが、全部、RPGによくあるやつだ。


 ゲームの世界にご招待する気なのか。


 

 どの職業にもパッシヴスキルがあるらしく。

 勇者のパッシヴスキルは、【経験値分配】

 仲間一人に経験値を任意の割合で受け渡せる。

 もしくは、全員に等分配する事が出来るらしい。

 

 職業を決めると、初期スキルの設定が開く。

 

 勇者はパーティメンバーを有利にするスキルが多いのだな。

 その中で一番、コレだ、と思った【経験値取得率+900%】を選択した。

 つまり、10倍になるという意味だろう?

 分配とのシナジーも考えれば、これが良い。 


 あとは名前だが……、まぁ『レン』でいいや。


   名前:レン

   種族:ヒュム

   性別:♂

   年齢:18

   容姿:長身西洋風金髪イケメン

  ジョブ:勇者

 初期スキル:

    P:経験値分配

    A:経験値取得率+900%


 これで、最終決定。



 

 

 すると、眩い光に包まれる。



 そうして、気が付けば、見知らぬ地に立っていた。


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