(24)キラキラ

 ゆういち君と出会ってから3日後 細江ゼミの講義

 「。。就活やる気ある?」


 「、、、は?」


 、、、こいつまた可笑しくなったか。3ヶ月前に『オレが浮気したから悪いんだけど、きょうかと別れて落ち込んでる』って言ってる時もやべー奴だと思ったけど、また何か様子が変な気がする。


 「、、、今のって独り言?」


 「あ。うん!ごめん。この前、合説(就職活動における合同説明会の略)で同じ大学の就活生に言われちゃったんだよね〜」


 「、、、なんで?」


 「お、おれの企業担当者への質問がイケてなかったっぽい」


 、、、最近のこいつは。この調子でいつも自信無さそうにしている。昔のヒーロー気取りのオレ様キャラはどこへ飛んで行ってしまったことやら。


 「質問しないよりは良いだろ。そいつはきっと小賢しい質問してて、それに梅沢は劣等感を感じているんだろうけど、質問に上も下も無いから。質問はたかが質問でしょ。明らかに事実と反対なこと言ってなきゃ大丈夫」


 「ありがとう。でも。それでもやっぱり彼の方が優秀だったよ。向こうの担当者も目をキラキラさせてたし」


 「。。人の目が急にキラキラする訳無いじゃん。梅沢の気のせいだろ」


 「か、彼の質問のときは。回答する前にいい質問ですねって言ってたし。」


 。。たし、たし。って。五月蝿いなあ。


 「担当は2人目以降に回答するときは、めんどくさいからその枕詞を省略しただけだろ」


 「たしかに!お、俺の次の人もそう言えば言われて無かった。なるほどな〜ありがと!風花さん。」


 単純なところは不変で助かる。キラキラ輝く少年のようだ。しかし問題はその例の男。危険な臭いがするな、梅沢にとって。近いうちにまた必ず、衝突する気がする。


 「てか。最近の風花さんってなんか変わったよね?丸くなったって言うかなんと言うか。」


 五月蝿いなぁ。。私は適当に相槌を打ちながら、あまりの梅沢らしい真っ直ぐさに、心の中で微笑を浮かべていた。


 この年の名古屋の桜は、平年より3日早く開花したそうだ。

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