(13)高揚

 昼 東海大学キャンパス内中央広場 

 夏休みが明けると、キャンパス内の学生の一部は姿をくらます。1年生もようやくサボりを覚えるのだ。そんな閑散とした広場で、一際高揚が目立つ存在がそこにはあった。


「紅葉ちゃん〜。今年のミスコン出るでしょ!」


 「ん?まぁみんなが出た方がイイって言うなら出るよ!」


 「そりゃあ出た方がいいよ!紅葉ちゃんかわいいもん!絶対優勝するよ!」


 「まぁ出てみないとわかんないけどね」


 昼休み 東海大学キャンパス内食堂

 「お!紅葉ちゃんいるぞ!今日もやっぱりかわいいなあ〜。しょうた!お前行けよ!」


 「はっ?何で?やだぁ〜。てか無理!」


 (食堂も騒がしいな。気が高ぶっている。)


 「紅葉ちゃんって、親なにしてんの?」


 「ママは銀行のなんか偉い人。二星銀行で働いているの。私生まれは福岡なんだ。ママも大学はこっちなんだけどね。中京学園大学でさー。国立の。今43歳。23で結婚して、25で私を産んでる。かわいさはママ譲りかな」


 「すごーい!」


 「あ、でもママに似てるのは目だけかも。目ってか目力。ルックスは私の方が上だから。なーんてね」


 (おまえはばか丸出しだ。おまえだけじゃない、ここにいる全員、ばかしかいない。)


 (やけにあそこのグレーの子だけ静かだな。背もわたしと同じ167ってとこか。)


 「わたし、ミスコン出るわ!ふみこちゃんも見に来てね!」


 「わーい!やったー!紅葉ちゃんかわいいし、ルックスもいいから絶対優勝するよ!」


 うるさいよ。かわいいだの、ルックスがいいだの。おまえに言われなくてもそんなことわかってるよ。それよりも絶対見に来いよ。勝手にテンション上がるな。


 でもチャラチャラしたイベント。ばからしいけど、嫌いじゃないよ。


 翌朝 花村の自宅

 「英一。。。?もう起きてたの?」


 「ああ。オレ様、ミスターコンに出場しようと思うけどどうかな?オレ様の大学生活という100本のバラに、101本目を加えようという話だ!」


 (駄目だ、こいつ。早くなんとかしないと。。。)


火照った私の身体が、気持ちと共に急激に覚めていくのを感じる。


 私達の将来設計が。なんとかしないと。。。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る