(5)出会い

 昼下がり 細江ゼミの講義

 「カミヤマフウカです」


 なんだ?でかいネズミのようじゃあないか?いや、ネズミは立たないなあ。ジーパンもはいてるし。ねずみ男?ん?長い髪。女?!ネズミ女だ!!


 オレは一瞬で理解し呆然とした。


 「カミヤマフウカ、、、だと?」


 はて?聞き間違えたのかな?そんなネズミ女なハズがない。あれだ!同姓同名の別人だ。同姓同名の別人が講義室を間違えたんだ。危ないところだった。一体いつからアレが、期待の新人、カミヤマフウカと錯覚していた?

 

 「遅刻ですよ。席に座ってください。席はそうですねー。一番後ろの梅沢君の隣にしましょう。梅沢君。案内してあげてください」


 オレは反射的に無言で手を挙げた。


 ネズミ女がこちらに歩いてくる。でかい。オレよりも。ヘッドホンもでかい。周りの音とか聞こえてんのか。


 「風花さん。遅刻して早々申し訳ないのですが、来週がちょうど今月4週目ですので、プレゼン発表日となります。1週間で仕上げるのは酷かと思いますので、当日は見学でも構いません」


 「、、、大丈夫です」


 「オレは梅沢英一。よろしくな。いやーでもキミついてるよ!ラッキーってやつ。なんせオレは前回のプレゼンで優秀賞取ってるんだぜ。テーマ選定からパワポ作成まで、分かんないことは何でも聞いてくれよな」


 (、、、こいつ。心にも思っていないことを。)


 「、、、大丈夫。ちなみにその優秀賞って廊下に貼ってあるやつのこと?」


 「そうそれそれ!やっぱり目についちゃったか~」


 「私はあんたの資料見ても、、、優秀だと思わなかったよ」


 「、、、努力も才能の欠片も無いと思った。その、いま画面に写ってるやつもセンスないって言うか」


 「!!!」


 (しまった。完全に言い過ぎた。さすがにこれは申し訳ない。)


 「じゃあオレもここはフェアに0から作り直すとしますか!」


 そう言うとあいつは、作成中のスライドを、目の前で全て削除して見せた。


 「なんか久しぶりに急にやる気でてきたわ。本気だしちゃうからねオレ」


 「、、、」


 「努力も才能の欠片も無い?そーだろうよ。オレは天才肌だからな。ケンカ売られてんなら買うぜ?おもしれー女。退屈してたからちょうどいいや」


 「喧嘩はそろそろ止めましょうね。来週まで時間もあまりありませんが、プレゼンはしっかり忘れないようにしてください。」


 教授が止めると同時に終業のベルがなった。


 、、、天才肌ね。

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