元同僚と久々に飲み会をする

 それから数週間後の夜。


「それじゃあ……かんぱーい!」

「おう、かんぱーい!」


 都内某所の繁華街で俺は元同僚と酒を飲み交わしていった。元同僚と飲みに行こうと約束をしてからだいぶ日が経ってしまったが、ようやく一緒に飲みに行ける日がやって来た。


「んく、んく……ぷはっ! いやー、酒うめぇなー! ここ数週間ドタバタに巻き込まれてたから全然飲めてなかったんだよな。だから今日は久々に酒が飲めてマジ最高だぜ! 正月休みもなくて死にそうだったから、今日誘ってくれてありがとな!」

「はは、それなら誘った甲斐があったってもんだな。あ、そうだ。そういえばあのクソ上司死んじまったって言ったけどさぁ……あのクソ上司って俺が辞めた後はどんな感じだったんだ? やっぱりクソのままだったか?」

「そんなの当たり前じゃん。本当にクソ過ぎなヤツだったよ。セクハラ、パワハラなんて日常茶飯事だったし、深夜残業や休日出勤も当たり前だったからな。しかも残業代とか休出手当も一切出さねぇし、マジで終わってたわ。そのクセあのクソ上司は毎回接待でキャバクラとか行ってたらしいからマジでクソだわ」

「なんだそりゃ。俺が辞めてからも相変わらず酷いクソっぷりだったんだな。いやー、そんなクソ上司が死んじまったとかマジで最高だなー! ざまぁ過ぎるぜ!!」

「はは。まぁそうだな。だけど死んじまったヤツの事をあんまり悪く言うのは止めとこうぜ。クソ上司の事は毎日イラっとはしてたけど、でも別に死んで欲しかった訳じゃないしな」

「なんだよ。良い子ちゃんぶりやがってよー。もっと俺と一緒にあのクソ上司を罵倒してやろうぜ。ぷはは!」

「おいおい、酔っ払い過ぎだよ。少し水でも飲んで落ち着けよ。だけど何でアイツは急に自殺なんてしちまったんだろうな。あんなに毎日楽しそうに部下イビりしてて、それなりに高い社会的地位も手に入れてたのにな。金だってかなり持ってただろうにもったいねぇ話だよな。それと噂によるとアイツは愛人も何人か作ってたらしいぞ」

「は、はぁ? なんだよそれ。アイツ独身のクソジジイのクセに愛人を作って遊んでたってのか? マジでふざけてたんだな! はぁ、全くよ……まぁでも高年収で愛人を沢山作って人生を謳歌してたってのに、あっさりと首吊って死んじまうなんてマジで馬鹿過ぎるよな。ぷははっ!!」

「お、おいおい。だから笑い過ぎだって。アイツは確かにクソ上司だったけど、でも死んじまったヤツの事をそれ以上悪く言うのはよそうぜ……」

「っち。なんだよ。さっきから良い子ちゃんぶりやがって。せっかく大嫌いだったクソ上司が死んで最高の気分だってのに……ま、いいけど」


 そう言って俺は元同僚に悪態をつきながらも酒をどんどんと飲み進めていった。


「まぁでも最近どこの会社でもあんなクソみたいな上司がいたり、パワハラ体質な会社が沢山あるらしいぞ。本当に嫌な世の中になっちまったよな。俺の知り合いもそういう腹黒い上司がいてしんどいって話をよく聞くわ」

「そういう話は最近よく聞くよな。俺の友達も皆パワハラとかサビ残の強要とかされてるヤツばっかりだし。あ、知ってるか? 最近ブログとか9ちゃんねるで会社で起きた酷い出来事とかをリスト化した投稿とか書き込みが増えてるらしいぞ。そんでそういうヤバイ会社の事を“ブラック会社”って呼ぶんだってさ」

「ブラック会社? ……ぷはは、面白い言い回しだな。クソみたいな会社の事をブラック会社って呼ぶのめっちゃ面白くて良いなー」

「笑ってる場合かよ。お前も今休職中なんだし、次働くときはそんなブラック会社じゃない所で働けよ。そんで今度は頭に血が上っても絶対に殴りかかったりしないようにしとけよ? お前はすぐに血が上るタイプだから俺はそこだけが心配だよ」

「あはは、大丈夫だって。俺はもう大人になったから大丈夫さ。これからはそう簡単にブチギレたりはしねぇよ」

「そうか。それなら良かった。ま、それとお前の就職活動に関して力になれそうな事があれば何でも手伝うから、そん時はいつでも相談にきてくれよ」

「おう。サンキュ。はは、こんないいヤツと友達になれて本当に良かったよ。それじゃあ改めてかんぱーい!」

「おう。かんぱーい!」


―― チンッ!


 こうして俺は元同僚ともう一度乾杯をしていき、俺達はそれからも楽しく飲み会を続けていった。


 それにしても今の世の中はあんなクソ上司みたいな腹黒いヤツがどこの会社にも多数いるなんて本当にクソ過ぎる世の中だよな。


 だから次の就職先でもアイツみたいな典型的なクソ上司がいる可能性は十分高いだろう。まぁでも別に問題はない。何故なら……。


(次の就職先に前みたいなクソ上司がいたとしても……はは、これからはそんなクソ上司なんてサクっと呪殺しちまえば良いだけだもんな)


 俺は心の中でそう笑いながら酒をどんどんと飲みほしていった。


 ……よし、それじゃあ次の職場でもクソみたいな上司がいて……そんで俺にクソみてぇな指図してきたら……あの呪術師を使ってサクっと殺してやろう……。


【“起”承転結:了】

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