珈琲 1杯の推し活

cotocoto

第1話

☕️

小さなカフェはいつもいい匂い

店主の彼女は**「小さな太陽」**

娘を抱えながら必死で

生活はいつも綱渡り

それでも小さな太陽は笑顔で

訪れる人との触れ合いを大切にしていた

カウンターの向こうで

豆を挽く姿

カップを温める手つき

すべてが懸命で美しい

彼は毎日そのカフェに通う

**「マスター」**と心の中で呼んでいる

マスターは彼の名前を知らない

言葉を交わすこともほとんどない

ただ毎日同じ時間

同じ席に座り

「いつもの」とコーヒーを頼む

それは彼女への静かなエール

生活の苦労がその細い肩に

どれほど重くのしかかっているのか

マスターの笑顔の裏側を想像するだけで

胸が締め付けられる

支えたい

その想いだけが募る

でもどうすればいい

お金を渡すなんて失礼だ

声をかける勇気も理由もない

だから彼は決めた

毎日通いコーヒーを一杯飲む

それが彼なりの推し活だった

彼のたった一杯のコーヒー代が

小さな太陽と娘の明日の

ほんのわずかな力になるのなら

マスターの淹れてくれるコーヒーは

いつも深い苦みと優しい甘さがある

まるで彼女の人生のようだと彼は思う

「はい いつもありがとうございます」

マスターの笑顔が今日も一日の

光になる

彼はそっとコーヒーを飲み干し

心の中で「今日もありがとう」と呟く

静かな推し活は続く

コーヒーいっぱいの温かい毎日が

今日も静かに流れていく

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