ローソン日本店

@satoka2

ローソン日本店

「ウィーン」

自動ドアをくぐると、

「いらっしゃいませ」と両端の店員が深く頭を下げた。


そのまま特売の知らせがあった野菜コーナーへ向かう。

「きゅうり一本、五九八円」

思わずカゴを取り、迷わず三本突っ込む。

——これは安い。幸先の良い買い物をした気がする。


次に、家庭菜園用の三ツ矢サイダーGOLDαを探して飲料コーナーへ。

棚に着き、ふと脳裏にある事がよぎった。

人は何かを探すとき、無意識に左上から目を動かすという何かで見た雑学だった。

理由もなく、その通りになぞってしまった。


見当たらない。

「また売り切れか。Uberだと炭酸抜けるんだよな」小さくつぶやき、本棚の方へ向かう。


途中、女子高生コーナーの前を通った。

ケースの向こう側には、制服姿の少女たちがずらりと並んでいる。

若者やスーツ姿の中年男性が品定めするように眺めていた。

ケースの向こうでは、泣く子、うつむく子、

笑顔で手を振るが、お腹のふくらんだ子もいた。


ふとケースの上部らへんがキラッと見えた。

目を向けるとそこにはキラキラと装飾された看板があった。

週末キャンペーン案内だ。


「男子高校生、はじめました」


ぶるっとした寒気を払い落とすよう、体をよじって通り過ぎ、本棚へ。


最近は習い事ブームがすごい。

息子が今度こそ続きそうなものを探す。


「おっ、これはすごい。週十回リモートデジタルサッカー。

今なら“コーチへのクレーム券”五枚付き。」


面白そうだと思い、問い合わせボタンを押す。


だが、アナウンスは冷たく告げた。

「現在回線が大変混み合っております。

 待機目安は、二〇七四時間後となっております。」


仕方なく、そのままレジへ。

顔認証で精算を済ませると、店員が袋を持って出口まで見送った。


「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」

深々と頭を下げられながら、店を出る。


———夜風が少し冷たい。

途中、小川の流れる橋の上で、ひとりの男と肩がぶつかった。

そんなに狭い道でもないのに。


「あっ、えっ、痛っ。」

驚き半分に、間の抜けた声が出た。


男は少し笑みを浮かべて言った。

「そうかい。まだ痛みは、感じられるのかい。」


そう言い残し、明るい街の方へ歩いていった。


「変なやつだなぁ」と首を傾げながら、

ぶつけた肩をさする。

——けれど、どこか感覚が遠い。

そう思いながら、また薄暗い家路へと戻った。

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