傘立てならぬ、ガチャ立て。
興味惹かれるその単語に、何かと思って読んでみると、それは学校の怪談と呼ぶに相応しい怪異なのであります。
とある傘立てから引抜いた傘。
傘自体は自分の傘でも、その傘立てから引き抜くのが怪異の始まりなのです。
稀に開いた傘から女の幽霊が現れる……
そんな恐ろしい状態に陥ったら、あなたはどうしますか?
それでも傘立てから傘を引き抜かねばならぬ理由、引き抜かないようにする工夫や対策、それでも引いてしまった時は……
それらが丁寧に描かれていて、まさに学校の怪異だと思いつつ、まさかの終劇にとても納得してしまうのでした。
それはきっと、多感な学生時代を送ったことのある人ならば、共感し得るのではないでしょうか。
そうだよ〜……あの時のうちらって、何か色々こだわるのにさ〜……突然どうでも良くなってやめちゃうことあったよね〜…と。
学校の怪異と名乗るのに実に相応しいお話、是非ご覧あれ。
嘗て通っていた女子高に『ガチャ立て』と
呼ばれる傘立てがあった。それは、至極
普通に学校生活の日常に溶け込んでいて
誰もがちょっとした注意こそすれ、普通に
受け入れていてのだ。
『ガチャ立て』は、まさにガチャだ。
そこに傘を入れておいて、いざ使う時に
アタリを引くと……何故だか
お化けがでる。
そして当たりを一度引いたらもう出ない。
それは周知の事実である。
この掌編の品の良さと、可笑しみに
持って行かれる。お化けは怖いけれども
お祓いをしようという話も出ない。
只、そこに在る。
由来も因果もわからないけれど。
さて、この『ガチャ立て』で当たりを
引いてしまった主人公。そして、その後の
『ガチャ立て』の顛末は…。
ほんの少し切なくもある。