第2話
俺、
では、なぜ彼女ができたなどと
ていうか、俺に彼女なんてできるわけないじゃんね。
俺が彼女と呼ぶのは、ここ最近ハマッているゲームのヒロイン、
今風に言うなら推しキャラ、一昔前の言い方をするなら二次元嫁とでも言えば良いのか。
そんなわけで、俺は自分が好きなキャラクターの布教活動をしようと雨野に話題を振ったのだが――何故か、教室中の空気が固まった。
現在は昼休みの真っただ中。
授業が始まるまでは、まだもう少しばかり時間に余裕がある。
そのはずなのに、授業開始の号令直前のように、教室中から音が消えた。
「え……何? 何があった?」
思わずキョロキョロと辺りを見渡す。
すると、なぜかクラスメイト達は俺と目が合いそうになると顔を逸らしはじめた。
なんだ? 俺に彼女がいるだけで、こんなにドン引きされるの?
あるいは、俺が嘘をついてると思われているのか。
結果的にそう聴こえてしまったかもしれないけど、別に嘘をつきたかったわけじゃない。
でも――。
『うわ~、あんな嘘ついてまで見栄を張りたいのかよ』
『オタクな上に虚言癖とか終わってるね』
『男として落第じゃん』
誰もそんなこと言ってないのに、俺の脳内に自分への中傷の言葉が流れ始める。
ああ、心が死にそう。
「あ、あのな、雨野。彼女って言うのはさ……」
静寂に耐えかねて、『彼女』という言葉の真意を解説しようとしたところで、雨野が俺の言葉を遮った。
「何……彼女って。どんな子? 名前は? SNSアカウントは? 住所は?」
雨野の声には、いつもの明るいトーンはない。
声だけでなく、表情も感情が抜け落ちたよう。
見慣れた笑顔が消え失せた雨野の顔は、思わず震え上がるほどに恐ろしかった。
「きゅ、急にどうした……? なんか怖いぞ雨野?」
「ふ~ん、アタシ、怖いんだ。へぇ。そっか、ごめんね。怖い女で」
あ、あれ?
なんか怒ってる?
「ま、待て待て、どうした本当に? たしかに俺に彼女なんて天地がひっくり返ってもあり得ない話だけど、雨野にそこまでドン引きされるレベルなのか?」
いつも俺のくだらないアニメトークを笑って聞いてくれる雨野が、ここまで拒否反応を示すなんて。
正直、だいぶショックだ。
天地がひっくりかえるよりも、雨野が俺に冷たい対応をする方が深刻な問題である。
どのくらい深刻かと言えば、好きな漫画がアニメ化したのに、自分が登録していないサブスク動画サービスの独占配信だと知ってしまった時くらいにはショックだ。
しかも、その作品以外には見るものが全くなくて、月額料金がバカ高いときくらい絶望的だ。
お願いだから、dan●meかア●プラで見られるようにして欲しい。
閑話休題、事態はこれだけでは収まらなかった。
なんと驚いたことに、雨野がポロポロと涙をあふれさせたのだ。
「なんか、ごめんね。アタシ、もしかして鬱陶しかった? 好きな人がいるのに、毎日アタシが話しかけるから、お弁当食べるの付き合ってくれてたんだね。本当は、彼女さんと一緒に居たかったんだね」
クラス中から注目を集めている。
心底軽蔑した目を向けられている気がするが、何がいったいどうしてこんなことになっているのか、理解不能。
もう、なりふり構っていられなくなった俺は、ついに叫び声を上げた。
「聞いてくれ雨野! 俺の彼女は……『ぴゅあぴゅあ・めもり~ず』の星屑ララちゃんなんだぁぁぁぁぁ!」
頼むから、誰か俺を殺してくれ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます