第54話 深淵ダイブ!
ヨロイ竜が倒れたんで、さっきの扉のとこまで戻ってみると、ふつうに鍾乳洞がひろがってた。さきに進めそうだ。
「あたし、いったん、上まで戻ってみるよ。シガルタとニャルンはここで待ってて。ここはダンジョンマスターとの戦闘場みたいだから、ほかのモンスターは出てこないよ。じっと待ってれば危険はないから」
「わかりました。ニャルンちゃんをモフってます!」
スゴイな。シガルタ。本人前にして、ハッキリ、モフるって宣言したよ。
そのニャルンはなんか、さっきからようすが変なんだよな。猫族だから、光の強さで瞳孔の大きさが変わるんだけど、らんらんと輝く目で、あたしを凝視してる。いや、あたしっていうより、あたしの胸元……ん? アミュレットか?
こんな豪勢な宝石つけてるとこ、街なかで見られたらたいへんだな。カツアゲしようとするヤツらがたかってきそうだ。もちろん、ただの泥棒やチンピラにやられるアニスさまじゃないけどさ。そんなヤツら、タ〇キンぶっつぶれるまでなぐりたおしてやる。え? タヌキンだよ。タヌキン。ヤダな。ははは。急にとびだしてきたタヌキン。
「はいはい。隠しとこうねぇ」
アミュレットを服の下に押しこむと、ニャルンの目つきはふつうになった。
「ふぅ……その宝石。ニャルムの姉上さまの首飾りにすごーくよく似てますにゃ」
「えっ? ほんと?」
ない話じゃない。ニャルムは身分を隠してるけど、このダンジョンの鍵を持ってた。ニャルムの家系はものすごーく高い身分に違いない。竜の涙はマン族の王が持ってるはずだけど、それに似た宝石を所有してても不思議じゃないんだ。
「竜の右目と呼ばれてる秘宝ですにゃ」
「竜の右目……」
竜の涙に竜の右目か。なんか関連性を感じるなぁ。
あとでニャルムにくわしく聞いてみようか? それか、じいちゃんが秘宝についてはよく知ってるかも。
とりあえず、あたしは鉄バシゴをのぼっていく。おりるときはシガルタのペースにあわせてたけど、今は一人だから、あっというまだ。
「兄貴! リゲル! 子猫たち!」
誰か勝手に歩きまわって行方不明になってないかとか、兄貴が魔法の実験でもしてないかとか、あれこれ心配してたあたしは、鉄バシゴをのぼりきって脱力した。ある意味、彼らは問題を起こしてくれた。あたしのリュックをひらいて、入ってた食料を食いまくってる。
「何してくれてんだ? そいつは全員ぶんの昼ご飯だぞ?」
「だって、ヒマだったから」
「にゃにゃー。冒険のお供は美味いにゃあ」
「鹿肉サンドイッチ。庶民の味は新鮮だにゃ」
「すいません。アニスさん。でも、食べてるあいだは、じっとしてくれてるんで」
まあ、三時間もあればダンジョンは出られるはずだ。昼飯は街で食えばいいか。一人も迷子にならず待っててくれただけでいい……。
「下の道から外に出られそうなんだよ。全員であっちの道を行こう」
「えっ? このさきは? いかにも、重要な何かがありそうだよ?」
兄貴に指摘されずともわかってるさ。けど、下の道はダンジョンマスターが守ってたんだ。そのさきに出口があるってこと。
「たぶん、このさきはスゴイお宝が隠されてるとかのオマケ要素なんじゃねぇかなぁ?」
「それはあるかもね。特Aだから、レアな宝物はあるはず」
レアな宝物かぁ。売ればいい金になるんだろな。兄貴の借金返済のために欲しいは欲しい。けど、今は猫たちをぶじに外までつれだすことを優先させなきゃな。
「ダンジョン攻略に関係ないんなら、今は行く必要ないな。じゃ、下の道行くぞ。兄貴はフロート使って、猫たちを支えてくれ」
「えっ? 数秒しかもたない魔法だよ?」
「さきに兄貴が下へ降りて待ってる。そこへ上から猫たちが飛びおりる。これなら着地直前に魔法使うだけで軟着陸できるだろ?」
「わあっ、アニス。えらいねぇ。よく思いついたねぇ」
大魔法使いなのに頼りない兄貴……。
「じゃ、リゲル。兄貴と(お守りで)いっしょにおりてくれ」
二人をさきにおろしておいて、そろそろついたかなってころに、子猫たちを説得した。
「ニャルム。ニャージン。アスニャ。ここから飛びおりるよ!」
「……」
「怖いですにゃ」
「アスニャ、死にたくない!」
しょうがないんで、三匹まとめて、あたしが抱えた。ふふふ。モフりほうだいだ。キツめのハグ。毛並みいい子たちはさわり心地が違うなぁ。
「はい。行くよ? 一、二、三——」
「イヤにゃー!」
「怖いですにゃ」
「アスニャ、死にたくなーい!」
あばれるんだけど、怪力ハグから逃げられない。三匹の子猫をかかえたまま、あたしは深淵にむかって飛びおりた。
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