第51話 謎の洞窟



 はてしなく続く鉄バシゴ。もうこのまま永遠におりてくのかなって思ったころに、やっと足が床についた。さっきまでの切りだされた石でできた感触じゃない。靴の底にあたるのは、ゴツゴツした岩だ。


「じゃ、ニャルン。いったん、おろすよ?」

「はいですにゃ」


 ほんとはずーっと、おんぶしててもいいんだけどねぇ。おろしたほうが動きやすいのは事実だ。このさき何が起こるか、わかんないからな。


 だいぶ深いから、上で石の床ふみはずしたら、死んじゃうよ。これは失敗できないやつだ。やっぱり、シガルタには入口まで戻ってもらうしかないのかな?


「にしても、モンスター出ないな。妙に薄ら寒いし、ダンジョンのなかでも特殊な区域なのかも」


 たまにある聖域とか、そんなとこだ。


 目の前の岩壁に洞窟がある。そのなかへ入っていくと、あのヒィヤーって風の音はますます強くなった。ボーボーうるさいくらいだ。野獣の咆哮ほうこうにしか聞こえない。


「不気味なところですにゃん。怖いですにゃ」

「ニャルンはあたしとシガルタのあいだにいてくれ」

「にゃあ……」


 一列縦隊で進んでくと、天井からたくさんの鍾乳石がぶらさがる場所に出た。けっこう広いホールだ。ピトピトと地下水のしたたる音がして、冷気がただよってる。


 うーん。この感じ。なんとなくだけど、ものすごく強いボスがいるんじゃないかな? ダンジョンマスターかもしんない。


 このメンバーでダンジョンマスターと戦闘になったらヤバいなと思ってたら、まもなく行きどまりになった。ていうか、鉄の扉が行く手をふさいでる。鍵がないとひらかないみたいだ。


「ああ、これ以上、進めないか」

「ニャルムさんに鍵を借りてきたらどうですか?」


 シガルタはいうけど、たぶん、ムリだろうな。ダンジョンの奥にある鍵ってのは、たいてい内部のどっかに隠されてるもんだ。


「もしかしたら、上の道のさきに進んだら、鍵があるのかもしんないな」


 しょうがないので、ひきかえした。鍾乳石のホールまで戻ったとき、落ちてきたしずくが首すじにかかった。


「あっ、冷てっ」


 思わず見あげたあたしは、ギョッとした。天井スレスレぐらいに穴がある。わき道っていうか。もちろん、何十メートルも離れてるんで、あたしの位置からじゃ、そこまで行けないんだけど。


 下からだとアーチ型の窓みたいに見えるその場所に、人影が立ってる。遠いけど、金色の巻き毛をなびかせたその姿は、ギルバートさん……のような?


「ギルバートさん!」


 大声で呼びかけた。けど、あたしの声が聞こえたのか、聞こえなかったのか、ギルバートさんらしき人影は、くるりときびすを返して、穴の奥へ消えてしまった。


「ギルバートさーん!」


 ダメだ。もう姿が見えない。

 なんだ? 今の? 幻か? ほんとにギルバートさんの霊?


 人影の消えた虚空をじっと見つめる。


「アニスさん。どうしたんですか?」

「シガルタにはさっきの人、見なかったの?」

「さっきの? なんです?」

「あそこに立ってたろ?」

「すいません。上まで見てませんでした」


 薄暗いし、不気味だし、しょうがないか。それとも、ほんとに亡霊なのか? それはそれで、なんかヤダ!


「あれ? あそこに変な岩があるな」


 さっきの人影がいた穴のすぐ下だ。彫刻された模様が見える。円と火焔で太陽みたいなものが描かれてる。


「あの模様、どっかで見たな。あっ、そっか。ここに入るとき、扉に浮き彫りされてたんだ」


 ほんで、ニャルムが鍵を使う前に、そのまんなかの円を押してた。すると、パカッと円が割れて、なかから鍵穴が出てきたんだ。


「気になる。シガルタ、ちょっとアレ、弓矢で射てくれないか?」

「そんなことしていいんですか?」

「たぶん、いい、と思う」


 シーフの勘だ。入口で鍵穴を隠してた模様。てことは、あのまんなかの円を押せば、ここでも何かが起こるんじゃ?


 シガルタの一射め。途中の鍾乳石にあたって落下。二射め。立ち位置を変えて鍾乳石をよけたけど、今度は遠すぎて届かず。


「ダメです。鍾乳石のないとこからだと遠くて、あそこまで矢が届きません」

「うーん」


 あたったとしても、威力が弱いと、うまく模様のまんなかを押せないかもしんない。


「なんとかもっと遠くまで矢の勢いが保ってくれたらなぁ」


 遠くまで、遠くまで……遠く……?


「ああー!」

「ありましたね!」

遠射ファーヒットだ!」


 よかった。ちょっとくらい高くても買っといて。さっそく役立ってもらおう。

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