第29話 シガルタ登場
あたしは素早さと怪力をいかして、一匹ずつをパパッとやっつける。
じいちゃんはもっとスゴイよ。あたしでも目にもとまらない風のような動きでナイフをいっぺんに十本もなげ、それを全部命中させる。ナイフ回収しつつ、獲物を馬車へなげこみ、次の瞬間には別の十体をしとめてる。
さらに、じいちゃんの奥義は百発百中、ナイフ百本なげだからね。ナイフの回収のほうがたいへんだから、ふだんは十本に抑えてるんだ。
「百本なげ!」
「わあっ、じいちゃん、さすがー! あたし、まだ七本しかいっきなげできないよ。そのうち一本は外すし」
「アニス。近くのタヌキンを倒しながら、じいちゃんのナイフを回収してくれ」
「オッケー」
二人であっというまに馬車いっぱいぶんを越すタヌキンを集めたんだけど、リゲルのやつ、まだ戻んないな。
「アニスや。たくさんとりすぎても馬車に載せきらんじゃろう。少し休憩しようじゃないか」
「そうだね」
食べ物はお昼ご飯用のサンドイッチしかない。まだ昼飯には早いんだよな。でも、井戸水だけでも飲めば元気が戻る。夢中で狩ってたから、喉も渇いたよ。
すると、近くの農家から村人が出てくる。田舎だから、畑のほうが広く、家と家のあいだはすごく離れてるけど、遠くの家の人も近づいてきた。
「おまえさまらがギルドから来てくんなさっただね? たくさんタヌキンめら、しとめてくんなさって、村人一同、お礼いわせてもらいますだ。ちょっこし茶でも飲まんかね?」
「どうする? じいちゃん」
「ご親切はありがたく受けるもんじゃ。ほほう。美味そうなパンプキンパイですなぁ」
というわけで、村人たちの歓待を受けて、ひと休みだ。やけに人影の少ない村だと思ってたけど、みんなタヌキンをさけて家にこもってたんだな。あちこちからやってきて、茶菓子になりそうな果物の煮たやつとか、野菜の塩漬けとか、いろいろ持ってきてくれた。
「わしがアラーラ村の村長ですじゃ。おかげさまで、だいぶタヌキン減りましたのう」
と、村長さんまでやってくる。村長さんはじいちゃんと口調がいっしょ。声もちょっと似てるんで、目をつぶると、どっちが話してんだかわかんない。
「いやいや。まだまだですじゃ。夕方までには半減はさせとくつもりですがな」
「かたじけない。このまま、タヌキンどもに畑を荒らされては、アラーラ村は全滅ですじゃ。なにとぞ、よろしくお願いしますじゃ」
「それにしても、えらくたくさんおりますなぁ。なぜ、こんなことになったんじゃ?」
「それについては、妙なことを見たという者がありましてな。シガルタ。お話してさしあげなさい」
「はい。村長」
村長に名ざしされて、進みでてきたのは理知的な目をした村娘。あたしと同い年くらい。あたしより明るい麦わら色の髪をやや長めのボブにして、ヘアバンドでとめてる。質素なツギのあてられた服を着てるけど、けっこう美人だぞ。
「シガルタです。よろしくお願いします」
「あたし、アニス。こっちはじいちゃんのセージ・コンドル・ペッパーランド」
うちの一家はファーストネームがハーブ、ミドルネームが生き物なんだ。なんか、先祖代々、そうらしい。
「わたしのうち、村のなかでも端にあるんですよ。森が近いので、獣がときどき出てくるんです」
あっ、この子、
「あれ? ちょっと待ってよ。アラーラ村の森って、ダンジョンあったよね? それも、これまで誰も入ったことない特Aクラスっていわれてる謎の古代遺跡」
「それです」
謎の古代遺跡か。気になるな。でも、あそこのダンジョンに誰も入らないのにはわけがある。入らないんじゃなくて、入れないんだ。特殊な鍵かかってて、その鍵を管理してるのは都の王さまだって話だけどな。
「まさか、タヌキンたち、その遺跡から出てきたってこと? でも、鍵かかってるんだろ?」
「いえ。タヌキンは遺跡から出たわけじゃないと思います。遺跡の前に泉があるんですよ。とてもキレイな水が湧きだしていて、あそこの水を飲むと、疲れがとれる気がするんですよね。それで毎日、くみに行ってるんです」
「ふうん」
謎の遺跡の前に泉って、それ、ウワサに聞く女神の泉じゃね? たまーにダンジョンの最奥部とか、ダンジョンの手前とかにあるらしい。エルフィーニャ大陸を守護する女神の加護がかかってるって話だ。
「その泉のところに変なタヌキンがいたんですよね。首にすごく高価そうな宝石の
「タヌキンがアミュレット?」
タヌキンはふつうの獣系モンスターだ。ノラネコよりは強いていどの。知力もそんなに高くないんだけど。
「わたしが泉に近づくと、隠れてしまったんですが、なんとなくようすがおかしかったです。タヌキンの異常増殖に関係してるんじゃないでしょうか?」
たしかに、怪しい。
そいつは調べたほうがいいかも?
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