四章 家族っていいな

第20話 リゲルの家族



 ぶじに湖の洞窟から出てくると、テディパパは涙を流して喜んだ。


「おおっ、これが湖の石か。なんと美しい宝石だ。よくやったぞ。オベッサ。これでおまえも一人前だ」

「父上……」


 あれ? 人間語しゃべれるんだ。『くまー』しか話せないかと思った。さっきは興奮してたから? もしかして、テディベア的赤ちゃん語の一種か?


「礼をいう。お嬢さん。これは約束の報酬だ」

「ははぁ」


 金貨二十枚をもらって、森の出口まで送ってもらった。おとなしい息子が、まさかの暴れん坊大熊だとは思わなかったけど、いい仕事であった。くふふっ。


「じゃあ、リゲル。今回はほとんど活躍してなかったから、お給料は金貨一枚ね」

「一枚かぁ」

「何? 不満なの?」

「あ、いや、不満ではないですよ。金貨一枚なんて大金だし、ありがたいです。ただその、ちょっと前から、ばあちゃんのぐあいが悪いので、いつもよりお給料がよければ薬を買って帰ろうかと思ってたんです」

「……」


 そういや、たくさん弟妹いるとかいってたっけ。そのうえ、病気のばあちゃん? 飲んだくれの親父? 母ちゃんはひたすら子どもの世話と家事にあけくれ、さらには頑固で有名な近所の迷惑じじいまでいるのか!


「リゲルんちって、ド貧乏なのか?」


 金髪美少年の顔がひきつった。


「や、ヤダな。そこまでじゃありません」

「安心しろ? うちほど借金かかえてる家は、マンエンディじゅう探しても見つかんないぜ!」


 ひゃああああああー。

 自分の言葉に寒くなった!

 うちって、うちって……マンエンディ一のド貧乏なのか。


 頭をかかえるあたしを見て、リゲルは残酷にも「あはは」と大笑い。


「まあいいです。早めに仕事終わったし、午後から僕だけでできそうなかんたんな依頼をギルドで探しますよ」


 そんなふうにいわれると、あたしがケチな雇いぬしみたいじゃないか。じっさい、ケチなんだけどさ。だって、借金返さないとだからね。


「じゃあさ。あたしの買い物につきあってくれよ。そしたら、現物でボーナスつけてやるからよ」

「ほんとですかっ?」

「パンとかチーズとか食いもんだぜ?」

「助かります! 双子の弟たちが育ち盛りで」

「へぇ。双子かぁ」


 てなわけで、街に帰ると市場へ行って、念願の食料を買いあさった。たっぷり十日ぶんはあるね。山盛りのパンにチーズにフルーツ、干し肉、それに生でもかじれる野菜だ。あとはナッツ。うちじゃ兄貴が調理係だったから、いなくなるとあったかい料理が食べらんない。あんな兄貴でも役に立ってたんだなぁ。


「わあ、すごい量ですね」

「こんだけ買っても大銀貨二枚ぶんだ。リゲル、おまえんとこの弟妹って小さいんだろ? 甘いもんでも買ってこう」

「ありがとうございます! 弟妹も喜びます」


 オベッサのくれたビスケット、美味かったもんなぁ。あっちのはお貴族さまの家庭の料理番が作ったやつだから、とびきり高級な材料を使ってんだろうけどさ。


 てなわけで、ビスケットを袋いっぱい買って、リゲルのうちへ行ってみたんだけど……。


「あれ? 小さいけど、意外と小ぎれいな一軒家じゃないか」


 街外れだから、家のまわりに小さな畑もある。庭にはニワトリ。裏庭にはヤギ。花なんか咲いててさ。絵に描いたように平凡なアットホーム。想像と違う。


「ただいまぁ。みんな。今日は雇いぬしのアニス・ビー・ペッパーランドさんが、みんなにお菓子や食べものを持ってきてくれたんだよ」

「わあっ、兄ちゃん。おかえり〜」


 四、五歳くらいの男の子がかけだしてくる。

 えっと、双子の男の子ってのは? 育ち盛りにしては小さいから、この子たちより年上かな? てことは、四人兄妹か。いや、違うな。一つ年下の妹がいるって話してた。


「五人兄妹かぁ。そりゃ食費稼ぐのもたいへんなわけだ」

「えっ? 違いますよ?」


 ん? ひらいた戸口から、母ちゃんっぽい人や、じいちゃん、ゴホゴホ空咳しながら、ばあちゃんらしき人物が出てくるのはいい。


 でも、でもね。そのうしろから、さらに十二、三の少年二人。そっくりだから、これが育ち盛りの双子。さらにうしろから、八歳くらいの女の子ゾロゾロ。さらにさらに、もっと小さい子がワラワラと……。


「あっ? ちょ……何人兄妹なんだーっ?」

「私の下にベガって妹がいて、その下が双子のアンタレスとアルタイル。次が三つ子のカペラ、メンカリナン、アルマーズ。最後が四つ子のカノープス、デネブ、カストル、アルデバラン。十一人兄妹です!」

「十一……」


 シャモ族のピヨピヨたちの十二つ子と、そう変わんないんだけど?

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