第9話 ピヨピヨがいっぱい
わあっ! 可愛いー! ピヨピヨだー!
そっかぁ。ハーピーって子どものときは完全鳥型なんだぁ。二足歩行の人型になるのは大人になってからなんだね。見ため、まんまヒヨコだよ。
黄色いふわふわのピヨピヨ。お目々は黒く、ふにゅっとしたクチバシで、サイズはほんとの鳥のヒナよりだいぶ大きい(猫サイズ)けど、それがよりいっそう、ぬいぐるみっぽい。
可愛いなぁ。可愛い。ピヨピヨがいっぱいだー!
「——って! 何匹いるんだー!」
奥さまの目が白くなったので、あたしはあわてて咳払い。コホン。
「あ、いえ。たくさん、おられますね。何人おられるんでございますか?」
「十二人ですわ。この子たちは去年に生まれた兄妹ざます」
脅威の十二つ子!
「そ、そうですか。この子たち全員をつれていくんですか?」
「もちろんざます」
むっ、むむぅー。
まあ、いっか。Fクラスで金貨十枚なんて、やけに報酬がよすぎると思った。ギルドの依頼なら、ほんの銅貨数枚だもんね。Aクラスダンジョンでさえ、金貨一、二枚ってとこ。ピカピカの金貨を十枚ももらえるなんて、かなりヤバめの特級ダンジョンくらいだよ。
「そういうことなら、行きましょう。お子さまたちは冒険職についてますか?」
「まだですわ。適性を見てからにしようと思って。まずは、とりあえず戦士の戦いかたを教えてあげて。戦闘の基本ですからね」
「ははぁ」
ふぅ。ちゃんとできるかな。いくら可愛いからって、十二羽……いや、違った。十二人は多いでしょ。
しかもだよ? この子たち、なぜか洋服着てないから、見わけがつかないんだよ。完全鳥型って、ちょうどいい服がないのかな? せめてリボンだけでもつけといてくれれば。個体識別の重要性が無下にされてる。
「じゃ、あの、Fクラスのダンジョンなら街なかにもあるんで、そこに行きましょう。マンエンディF13が最適かな。あそこなら馬車もとめとけるし」
はい。移動となると、またまたピヨピヨたちが我さきにと馬車に乗りこんでいく。もしかして、馬車のなかって、ピヨピヨ山盛りになってるのかな?
はい。やってきました。
広場から歩くこと十分。
古い建物が多い旧市街地に入ると、今は使われてない昔のお屋敷がけっこうある。今にもくずれそうなやつとか。そういう場所はなんでか、自然にダンジョン化しちゃうんだよね。どっかからモンスターがやってきて住みつくせいかなぁ? ダンジョンって、ほんと不思議だ。
もとがお屋敷だったんで、いしだたみの前庭がある。えっと、なんてったっけな? 車なんかよせ! じゃなくって……まあいいや。そこに馬車をとめてもらう。
「わが子たちよ。あなたがたは誇り高きハーピー族の
「ピヨー!」
「ピー!」
「ピヨー!」
「ピヨー!」
「ピヨー!」
あっ、一羽だけ返事まちがえた。それにしても、すごい団結力だ。
もしかして、毎年十二羽ずつ生まれてくるんだろうか? だとしたら、お城のなかピヨピヨだらけだなぁ。だから、教育ママは子どもたちのあつかいに、あんなに長けてるのか?
大丈夫かな? あたしにあのピヨたちを制御できるんだろうか? ほのかな不安をいだきつつも、ダンジョンへむかう。
なぁに。しょせんFクラスよ。スライムしか出ないんだからね。Fクラスにはダンジョンマスターも出ないしね。
「はい。みんな、行くよ〜。あたしのあとについてきてねぇ」
「ピヨ?」
「ピヨピヨ?」
「ピヨー!」
「ピヨピヨピヨ!」
「あっ、ちょっと! どこ行くの? ダメだって。そっちはダンジョンじゃないでしょ? こっち、こっち。こっちだって」
「ピヨ?」
「ピヨピヨピヨ」
「ピヨピヨ」
「ピピー!」
ああっ、ダメだ……。
さすがにヒヨコちゃんは幼すぎたか。お母さん、厳しいなぁ。獅子はわが子を
こんな可愛いピヨちゃんたちをよくもダンジョンに送りだせるもんだ。まだ遠足気分だよ? みんなで遊んでるつもりでいる……ふふふっ。あたし、この仕事、やれるかなぁ?
一羽、また一羽とふよふよ歩きまわる猫サイズひよこを、はっしと捕まえては前へ進んでく。ある意味、モフモフはしほうだいだ。夢のモフモフ。やっと、玄関ドアまでたどりついた。
不安だ。不安しかない……。
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