第6話 ダンジョン最奥にて



 険悪な空気のまま、ついにダンジョンの一番奥までやってきた。


 Cクラスダンジョンなんで、洞窟も地下二階までしかない。そのもっとも奥がホールになってる。どまんなかに、ヤツはいた。


「ミノタウロスの親戚だね」


 資格試験のとき、見たままのやつだ。あのときは別に戦う必要なかったから、ミノタウロスの親戚のよこをかけぬけて、奥の壁にタッチして帰ってきたんだけど。


 ミノタウロスの親戚って名乗るだけあって、頭がウシ、首から下が人間なんだけど、ビースト族じゃないのは、ひとめでわかる。だって、そのウシの頭、どう見てもなんだよね!


「このミノタウロスもどきを倒した証か。やっぱり、アイツが持ってるオノだよね」


 オノっていうか、手斧ちょうなっての? 片手で持てる小型のやつ。本家本元のミノタウロスは、もっとデッカいの持ってんだろうけど、コイツはあくまで、まがいものだからさ。


「じゃ、あとはよろしく」


 あたしが戦士たちをふりかえると、いちおう前に出ていく。けど、なんだろなぁ? 戦士たちの目つきが剣呑けんのんだ。クオームを中心にして、こっちを見ながらコソコソ話してる。


 ヤダなぁ。なんか、たくらんでるっぽい。


「サユリンさま。あたしたちはさがって見てましょう。このへんなら、戦闘の範囲外ですから」

「うん」


 キュッとにぎってくるサユリンちゃんの手がふるえてる。ううっ。守ってあげたい。いや、守るんだけどさ。


 いい商売だなぁ。獣人専門案内人になろうかなぁ。そしたら、なかにはモフらせてくれる可愛い子もいるかもしれない!


 やっと、クオームたちが陣形をとりだした。

 ミノタウロスの親戚は身長だけは高い。ふつうの人間にくらべたら、頭一つぶん大きい。B級戦士でも油断すると危ない。


 なのに、なんだろなぁ? アイツら。変な陣形組んでる。ふつうなら戦士三人もいるんだし、三方からかこむんじゃないの? 三人が縦一列になって、ミノタウロスにまっすぐむきあって。


 一人ずつ、かわりばんこに攻撃してくんだろうか? A級戦士がCクラスマスターに対してなら有効かもしれない戦略だ。ひと太刀ずつ浴びせれば、三撃めにはミノタウロスの親戚ていど倒れてるだろう。A級戦士の一撃はそうとう重いから。


 でも、彼らはB級だ。Cクラスマスターに対して優位ではあるけど、そこまで余裕で勝てるってわけじゃない。


 変だなぁ。

 なんか勝算でもあるのかな?


 ようす見してると、クオームたちがいっせいに走りだした。ミノタウロスもどきに対してじゃない。あたしたちのほうにむかってだ。


 ミノタウロスもどきは怒って、こっちに突進してくる。そりゃそうだ。さんざん、目の前で挑発しといて、いざってなると逃げだすんだから、腹は立つだろうな。


 とかいってる場合か?

 さっきまでは戦闘場所からだいぶ離れてた。でも、今はもうほんの鼻のさきまでミノタウロスもどきが迫ってる。


 あわてて見ると、サユリンちゃんのつぶらなお目々から涙がこぼれてる。恐怖にふるえてプルプルしてるじゃないか! わかる? 可愛い子ウサギちゃんがプルプルなんだよ? この殺人的なキュートさ!


 あたしたちの直前で急カーブして、ミノタウロスもどきをよけながら、クオームのやつがニヤッと笑うのを見た。アイツ、さてはわざとだな。あたしにバカにされたと勘違いしてたから、その仕返しってわけだ。


 プルプル泣きじゃくるサユリンちゃんを見て、あたしの頭はカーッとなった。


 えーい。こうなったら、本気だすしかない! ふだんはさ。ほんというと猫かぶってんだよね!


 手斧ふりまわしながら、突進してくるミノタウロスの前で、あたしは両足ひらいてふみしめた。片手でサユリンちゃんを抱きあげつつ、もう片方の手で手斧のをすばやくつかむ。


「こんのアホンダラがー! サユリンちゃんが怖がってるだろうが!」


 片手でブンと手斧ごとふりまわすと、大男のミノタウロスもどきが、かるがる空中に浮きあがった。そのまま、あたしのぶんなげる方向に、ポーンとぶっとんでく。最奥の岩壁に激突したミノタウロスもどきは、そのまま、目をまわした。


「はん。ミノタウロスにもなりきれねぇのぶんざいで、あたしに楯突たてつこうなんて、一億年早ェーんだよ!」


 ああ、クオームたちの鼻白んだ顔がユカイ。

 けど、これで、あたし、嫁の行き手がなくなったー!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る