2.4 VSクソ教官

「……何だ、誰かと思えば、昨日の赤髪じゃないか」


「あ?」


長く垂らした銀髪を片手でサッとはらってニタっとした笑みを浮かべる教官。


思わず顔を顰めた。


「誰かに電話してたようだな。ママか?それともコネの相手?」


「お前に関係ねえよ」


「……おい、俺は教官だぞ。敬語を使え」


「無理」


昨日はそれどころじゃなかったから構えなかったが、いちはやく俺が魔法を使えないことを報告して即退学を勧めたのがこいつだ。


あと言動がいちいち鼻につく。個人的に嫌い。

教官がチャラチャラ髪伸ばしやがって。


「……まあいい。どうせお前はそのうち退学だ」


「は?何、まだ聞いてねぇの?慈悲深ーい校長のおかげで俺の退学は取り消しになったんだぜ」


って、慈悲深いかどうかはしらねぇけど。


「……貴様、またコネか」


「ノーコメントで」


明らかに教官の顔が険しくなる。

肩をすくめて俺は用具室を出ようと教官の横を通ろうとした時、腕を掴まれた。


「それほどのコネをどうやって得たんだ?身体でも使ったのか?」


「は?」


……………キモ。


近づいてくるそいつと距離をとってみるが、あごをガッと手のひらで挟むように掴まれる。


「見たところ顔しか取り柄がなさそうだもんな」


無意識に拳を握りしめた。


いやいや、落ち着け。レイ=アスデル。

俺は今一応降格がかかってる身だ。

教官を殴るわけにはいかない。


「こーいうの、セクハラっつーの。知らねぇ?」


「ハッ、生意気なの口を聞けるのも今のうちだ。この実力主義の学院で顔だけじゃ――」


「カッ、ペッ」


「…………」


「…………」


顔に吐き出された何かに手をやる教官。

触るとべちょっと音がして、手に取ってみるとそれは明らかに唾。


「手は出してねぇし。唾はノーカンだろ?」


そう言って肩をすくめ、ベッと舌を出して見せると、教官の顔がみるみる赤くなった。


……んー、やっぱダメか。


ガチャ、バンッ


「おい待て!クソ、誰かその赤髪捕まえろ!!!」


「邪魔邪魔!どけ!」


「えっ、うわ」

「ちょ、うっ」


人をかき分けながら廊下を全力疾走。


アハハハハ!

うける!顔真っ赤にして怒っちゃって!


「(太陽様の)神聖な唾だぜ?ありがたく思えよクソ教官!」

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