第五十話

 それから魔族の方々かたがたは、話し合いだした。そして、結論が出たようだ。

「ふーむ、人間の小娘こむすめ。さっき言ったことは、本当だろうな? この半分の鮭児けいじと、小舟こぶねにあるさけを俺たちに渡すというのは?」


 なので私は、土下座どげざしたまま答えた。

「はい、もちろんです!」

「よし、分かった。俺たちはそれで、手をつ。さあ、鮭児を早く女王じょおうに持って行け」

「あ、ありがとうございます!」


 それを聞いた私は鮭児が入ったバケツを背負せおって、ほうきに乗って上昇じょおうした。

「はあ、危ない危ない。でももうこれで、アンラッキーは起こらないはず……」


 そして私は、ラソミ女王がいるお城を目指めざして飛んだ。お城に着くとほうきを背負ってバケツを持って、私は玉座ぎょくざまで全力で走った。そしてラソミ女王に、鮭児を見せた。

「ラ、ラソミ女王! 釣ってきました、鮭児を釣ってきました!」


 するとラソミ女王は鮭児のシッポをつかんで顔の前で、しげしげと見つめた。

「ほほう。これはまた、見事みごとな鮭児だ……」


 そして右側に立っているせた側近に、手渡した。

「コックに伝えろ。刺身さしみと焼き魚にしろと」

「はっ」


 と痩せた側近は鮭児を持つと、一瞬いっしゅんで姿を消した。おそらくキッチンに、瞬間移動したんだろう。とにかく、無事ぶじにラソミ女王に鮭児を渡せて私はホッとした。するとラソミ女王は、真剣な表情で告げた。


「よくやってくれた、リーネよ。今からが魔族の国は、おぬし客人きゃくじんとみなす」

「え? ホ、ホントですか?!」

「当り前だ。わらわが欲しいと言った魚を、釣ってきたのだ。それくらいは、当然だ。後で魔法で、国中に知らせる」

「あ、ありがとうございます!」


 そしてラソミ女王は、聞いてきた。

「さて、もう夕方だ。そなた、まるところはあるか?」

「い、いえ。ありません」

「ならば、この国の客室きゃくしつを使うがいい」

「ホ、ホントですか?!」

「当り前だ。我々魔族は、客人を粗末そまつあつかったりはせん」


 そう言ってラソミ女王は、右手の指をパチンと鳴らした。すると私の右側に、黒いメイド服を着て無表情むひょうじょうの女性の魔族が現れた。それを確認したラソミ女王は、メイドに告げた。

「そこの人間を、客室に案内しろ。そして客人として、丁寧ていねいに扱え」


 そう言われたメイドはラソミ女王に一礼いちれいして、私に告げた。

「ではリーネ様。私のあとに、ついてきてください」

「は、はい」


 そして私は、メイドの後をついて行った。メイドは階段を上り、とびらの前で止まった。更に扉を開けて、右手を部屋の中に差し出した。

「それではここが、客室になります。御用ごようがある時は中にある、りんをお鳴らしください」

「は、はい。ありがとうございます」


 と私は、部屋の中に入った。そこは広めの部屋で、大きめなベットと広めのテーブルが置かれていた。私は取りあえず、ベットにボフンと飛び込んで横になった。今日は魔法を使いすぎて、精神的せいしんてきにハンパなく疲れたからだ。うん、こうやってちょっとだけ休もう。そう思ったが私は、いつの間にかねむっていた。


 するとコンコンとという音で、私は目を覚ました。「は、はーい!」と返事をすると、さっきのメイドが木製のワゴンを押して部屋の中に入ってきた。

「夕食でございます。今日は疲れたでしょうから、ゆっくりお休みくださいとの女王からの伝言でんごんです。食べ終わりましたら皿をワゴンにせて、部屋の外に出しておいてください」

「は、はい」


 ワゴンに載せてある料理をテーブルに置くと、メイドは一礼して部屋から出て行った。テーブルの上を見てみるとコーンスープ、サラダ、パン、そして焼き魚が置かれていた。焼き魚はおそらく、鮭児を焼いたモノだろう。私は全て食べ終えると再びボフンとベットに横になり、そのまま眠った。


 そして私は、コンコンというドアをノックする音で目覚めざめた。「は、はーい!」と返事をすると、やはりメイドが部屋の中に入ってきた。

「おはようございます。大広間おおひろまに朝食を用意していますので、これからご案内いたします」

「は、はい」


 と私は、メイドの後について行った。階段をりてしばらく歩くと、大きな扉があった。メイドがそれを開けると、そこは広い部屋で大きなテーブルがあった。そしてすでにラソミ女王が、イスに座っていた。私はメイドにうながされて、ラソミ女王と向かい合ってイスに座った。


 するとラソミ女王は、聞いてきた。

昨日きのうはよく眠れたか、リーネよ」

「はい! フカフカのベットのおかげで、朝までぐっすりと眠ってました!」


 それを聞いたラソミ女王、小さく微笑ほほえんだ。

「うむ。それは何よりだ」


 と私と女王が話していると、メイドが私たちの前に料理の皿を置きだした。メニューはパン、サラダ、ウインナーソーセージ、目玉焼めだまやき、キウイフルーツだった。どれも美味おいしそうだったので、私は早速食べだした。そうしているとラソミ女王は、聞いてきた。


「それでリーネよ。今日は、何をするつもりじゃ?」

「は、はい。今日は、ほんマグロという魚を釣ろうと思います。私がこの国にきた理由は、それなので」

「ふむふむ、そうじゃったな。では、幸運をいのっておるぞ」

「はい! ありがとうございます!」

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