第三十七話

「まずは竿さおを振って、釣りばりを海に投げ入れて」

「はい!」


 とオキギ君は、竿を振った。でも釣り針は、オキギ君の手前に落下した。うーん、なるほど。まずは、竿の振り方を教える必要があるか。なので私は、説明した。


「えーとね、オキギ君。まずは、竿を真っすぐに立てて。そして、少し後ろに振るの。そしてその反動はんどうで、前に振るの。すると釣り針は遠くに飛んで行くから、そうしてみて」

「はい!」


 私に言われた通りにしたオキギ君は、釣り針を遠くに飛ばした。うんうん、よしよし。そして私は古代こだい魔法、『絶対に魚が釣れる魔法』を教えた。すると早速さっそく、オキギ君は魔法をとなえた。

「さ、魚たちよ、このにおいを感じ取れ! キャッチ・ザ・フィッシュ!」


 そして少しすると、オキギ君は立派りっぱなサワラを釣った。

「やったじゃない! オキギ君!」

「リーネさんのおかげです! ありがとうございます!」


 なので私はサワラに塩を振って、サワラを焼いた。そして穴の中にいるホビットを全員んで、みんなでサワラを食べた。ナイフでサワラを切って、葉っぱをお皿代さらがわりにしてサワラをせた。すると日がしずみ、あたりは暗くなった。


 ああ、もう夜か。うーん、今日は一日、疲れたなあ。と私は、眠くなった。するとオキギ君が、声をかけてきた。

「リーネさん。良かったら、僕たちのねぐらで寝ませんか?」

「え、いいの? 助かるー」


 オキギ君や他のホビットは、ぞろぞろと穴を目指して歩き出した。私も後をついて行くと、その穴に入り出した。なるほど、穴の中で寝るのか。まさしく、ねぐらだな。そう思いながら、私も穴に入った。


 そこは坂のようになっていたので、私は身をかがめて穴の中を下りて行った。そして地下に着くと、あなぐらは結構けっこう広かった。直径一〇メートルくらいの、広さだった。


 私が見ていると、ホビットたちは思い思いの場所で横になり始めた。なので私も、いている場所で横になった。それから私は、これからどうしようかと考え始めた。


 取りあえずオキギ君に『絶対に魚が釣れる魔法』を教えたので、これからホビットたちが食べ物にこまることはないだろう。でも何か、忘れているような気がする。うーん、何だろう?……。


 そうして考えていると、気づいた。そうか、パンだ! このホビットの国には、パンがない! やはり魚だけでは、ダメだろう。ちゃんとパンも食べないと、ダメだろう。なので私は明日は、ホビットたちにパンの作り方を教えよう。そこまで考えると私は、眠りに落ちた。


 気付くと私は、オキギ君に起こされていた。

「リーネさん。朝です、起きてください」


 え? 朝なの? このねぐらには日が入らないので、朝かどうか分からない。なので外に出てみると、確かに日がのぼって朝になっているのを確認した。


 それから私は、考えた。どうやってホビットたちに、パンの作り方を教えようかと。私は、パンの作り方を知っている。高等学校の実習で、習ったからだ。それにはまず、小麦こむぎが必要ね。


 なので私は一応いちおう、オキギ君に聞いてみた。

「ねえ、オキギ君。小麦って、知ってる?」

「小麦? いえ、知りません」


 うーん、やっぱりね。予想通りの、答えだわ。となると……。私は再び、オキギ君に聞いてみた。

「ねえ、オキギ君。この辺に、広い場所はない?」


 するとオキギ君は、少し考える表情になった。

「広い場所ですか? えーと……」


 それから心当こころあたりがあったようで、オキギ君は答えた。

「あ、あります。森の中にあります」

「え、ホント? 見せて見せて」

「はい。僕に、ついてきてください」


 そしてオキギ君が森の中に進んで行ったので、私も後をついて行った。するとそこには、開けた場所があった。たてと横、一〇メートルくらいの場所だ。うん、これならイケるだろう。


「ねえ、オキギ君。パンって食べたくない?」

「え? パン? 食べ物ですか、それは?」

「うん、そうなの。とっても美味おいしいよ」

「そうですか。それなら、食べてみたいです」

「うん。分かったわ。それじゃあまず小麦を作らないいけないから、ちょっと待っててね」


 と私はほうきにまたがって、空を飛んだ。行き先は、我が人間の国だ。私はまず商店街で、小麦のたねを買った。それから、自分の家に入った。お母さんが朝食を作っていたので、取りあえず挨拶あいさつをした。

「ただいま、お母さん! お父さんは仕事場?」

「ええ、そうだけど。どうしたの? 急に?」

くわしい話はまた後で!」


 と私は家の右側にある、お父さんの仕事場に入った。私に気づいたお父さんは、やはりおどろいた表情をした。

「ど、どうしたんだいリーネ? お母さんの話じゃ、今はホビットを探してるんじゃないのかい?」

「うん、お父さんにも詳しい話はあと。それよりもお父さん、クワとかまを売ってくれない? できれば、五本づつ」


 するとお父さんは戸惑とまどいつつも、右側を指差ゆびさした。

「あ、ああ。クワと鎌なら、そこにあるけど……」


 そうだ。私のお父さんは農業で使う、クワや鎌を作っているのだ。私はお父さんに金貨を一枚、つまり一万ゴールドを渡すとクワと鎌を五本づつ持って仕事場を出た。

「クワと鎌の料金はそれで足りるよね? それじゃあ!」と言い残して。


 そして私はクワと鎌を背負せおうとほうきに乗って、ホビットの国に飛んで行った。

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