第三十一話

 そして私は次の日、朝日にらされて広場で目が覚めた。うーん、よく寝た。そう言えば昨夜さくやもこの広場で寝ちゃったけど、まあいいか……。


 そうして私は早速さっそく、アユを釣りに行くことにした。一応ブトノシさんに聞いてみたが、今日は私を見張みはらないそうだ。どうやら私はドワーフたちに、認められたようだ。


 なので一昨日おととい、ヤマメを釣った川に私は一人で行った。そして竿さおを振って釣りばりを川に投げ入れて、魔法をとなえた。

「魚たちよ、このにおいを感じ取れ! キャッチ・ザ・フィッシュ!」


 それそれ、釣れてよアユちゃん。そうすれば私は、五○○万ゴールドもらえるんだから。だが釣れたのは、ヤマメだった。あれー、おかしいな。私が釣りたいのは、アユなのに。


 なので釣ったヤマメを川に逃がして、私は再び魔法を唱えた。だが釣れたのは、やはりヤマメだった。あれー、おかしいなあ……。私は再びヤマメを川に逃がした後、考えた。どうすれば、アユは釣れるんだろう? この川に、アユはいないのかなあ……。


 そう考えた私は、魚の図鑑ずかんで調べてみた。するとアユは、川幅かわはばが広くてあさくて流れがおだやかな場所で釣れるらしい。私は、目の前の川を見てみた。なるほど、確かにここは川幅がせまい。だからアユは、釣れなかったのか……。


 なので私は、川幅が広く流れが穏やかな場所に移動した。そして竿を振って、釣り針を川に投げ入れた。そしていのるような気持で、魔法を唱えた。どうか釣れて、アユちゃん!

「魚たちよ、この匂いを感じ取れ! キャッチ・ザ・フィッシュ!」


 すると早速、竿に手ごたえがあった。釣ってみるとそれは、三〇センチくらいの大きさで背中は黒く腹部は銀色でエラのあたりに一本の黄色いたて模様もようが入っていた。


 魚の図鑑で調べてみた通り、これはアユだった。私はアユに、しばらくの間見入みいった。うわー、キレイな魚だなあ。こんな魚、見たこと無いや……。


 そうしてアユの美しさに見とれていたが、食べてみることにした。やはりどんな味がするのか、気になったからだ。私は森に入ってれ枝を持ってくると、塩をかけてアユを焼いた。そして、食べてみた。いただきます。


 すると身はふっくらとジューシーで、皮はパリパリとして美味おいしかった。うーん、なるほど、美味しい。これは国王が食べたくなる気持ちも、分かるなー。でも取りあえず今夜は、この国のドワーフたちに食べてもらおう。なので私は魔法を使って、アユを一〇ぴき釣った。


 そしてこの日のうたげには、私が釣ったアユがドワーフたちに振舞ふるまわれた。ドワーフたちは、美味しそうにアユを食べていた。

美味うまい! このアユという魚も美味いぞ!」

「うん! シカとイノシシと同じくらい美味い!」

「おい! 俺にも一口ひとくち食わせろ!」


 するとドワーフの国王が、私のとなりにやってきた。

「礼を言うぞ、人間の小娘。わしったが、アユという魚も美味いのう」

「そうですか。気に入ってもらって、何よりです」


 それを聞いたドワーフの国王は、真剣な表情になった。

「なあ。おぬしはこの国を、どう思う?」


 私は少し考えてから、答えた。

「はい、とても良い国だと思います。ここにくる前はドワーフは蛮族ばんぞくだと思ってたんですけど、違いました。ドワーフたちはドワーフたちの文化を守って、とても幸せそうに暮らしているので」


 するとドワーフの国王は、うなづいた。

「そうか、そう言ってくれて何よりじゃ。他の国の者は、このドワーフの国をろくに知りもしないで儂らを蛮族と呼ぶ。儂らの文化を、ろくに理解もせずにな。だからお主のようにそう言ってもらうと、やはりうれしいのう……」


 そうか。やっぱりドワーフだって、蛮族って呼ばれるのはいやだよね。もう。他の国の人たちも、ここにきてちゃんとドワーフの文化を知ればいいのに。そしたらドワーフは蛮族じゃないって、分かると思うのに……。


 取りあえず私は人間の国に帰ったら、みんなにそう言おうと思う。ドワーフは、蛮族じゃないって。そう思ったら、私は決めた。明日アユを釣って人間の国に帰って、まずは人間の国王にそう報告しようと。


 それをドワーフの国王に伝えると、彼は再び真剣な表情になった。

「なあ、人間の小娘。今の人間たちはみな、お主のようなのか?」

「え、あ、まあ。そうだと思いますけど」

「うーむ、そうか……。まあ、お主は明日アユを釣ったら人間の国に帰るんじゃったな。それじゃあこのドワーフの国の、最後の宴を楽しんでくれ」


 私はワインが入っている、木製のジョッキを高々たかだかと持ち上げた。

「はい! ドワーフの国、最高!」


 次の日の朝。広場で眠っていた私は、タキマさんに起こされた。

「さっさと起きろ、人間の小娘。今日はお前は、アユを釣って人間の国に帰るんだろう?」


 私は、寝ぼけまなこで答えた。

「え? あ、はい、そうです。あ、起こしてくれて、ありがとうございます……」


 と起きた私は、ちょっと気持ち悪かった。皆が私が釣ったアユを美味しそうに食べてくれて、これがドワーフの国での最後の宴だと思ってワインを飲みすぎたのだ。うっ、ちょっと気持ち悪い……。


 それでもタキマさんに水を飲ませてもらって少し休んだら、元気が出てきた。さあ国王に渡す、アユを釣りに行くぞ!

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