第二章 エルフの国で釣ります

第十五話

 さわやかな風が吹き始めた、五の月の上旬。でも私の心は、全然爽やかじゃなかった。魚を釣ってくれと言う依頼いらいが、全然無いからだ。 アオマさんの魚屋さんからも、カツオを釣ってくれと言う依頼も無い。何でも最近は、漁師りょうしさんがカツオを釣ってくれるからだそうだ。


 そういうわけで私は最近、魚を釣ると言えば家で食べるためのイワシを釣るくらいだ。でももちろん、お金はもらっていない。だから銀行にあずけてある貯金も、全然増えない。


 なのでその日も家で食べるために三匹のイワシを釣ると、私はみさきで大の字になって寝ころんでいた。あー、退屈たいくつだー。だれか魚を釣ってくれと言う、依頼は無いかなー。


 すると私を呼ぶ、声がした。

「おお! いたいた! リーネさん、探しましたぞ!」


 声がした方を振り向いてみると、そこにはお城の兵士長へいしちょうのイホリさんがいた。私は取りあえず、挨拶あいさつをした。

「あ、これはお久しぶりです。こんにちは」


 私の挨拶を聞いてイホリさんは、話し出した。

「リーネさん、早速さっそくですがお城にきていただけないでしょうか?」


 え、お城に? するとまさか?! 私は期待して、聞いてみた。

「ひょっとすると国王からの、魚を釣ってくれと言う依頼でしょうか?!」

「はい、その通りです。良かったら今から、城にきていただけないでしょうか?」


 やったー、依頼だー! しかも国王からの依頼となると、相当そうとうのお礼が期待できる。なので私は、答えた。

「もちろんです! さあ、お城に行きましょう!」


 と私とイホリさんは、黒塗くろぬりの馬車でお城に向かった。お城の中の玉座ぎょくざに行くと、国王が待ちわびた表情をしていた。

「おお、リーネ。久しぶりだな」

「はい。国王もお元気そうで何よりです」

「早速だが、釣ってきてもらいたい魚があるのだ」


 やったー! やっぱり、魚を釣ってくれと言う依頼だー! 私は久しぶりの依頼に、少しワクワクしながら国王の依頼の言葉を待った。すると国王は、話し出した。

「実はそなたに、ヒラメを釣ってきてもらいたいのだ」


 ヒラメ? 私は食べた記憶きおくはないが、確か高級魚のはずだ。なるほど今度は国王は、ヒラメを食べたいのか。そう考えていると、国王は話を続けた。

「実はヒラメは、エルフが住むサエワ国にしかんでいないのだ。だからサエワ国まで行って、釣ってきて欲しいのだ」


 それを聞いて、私は少しなやんだ。うーん、サエワ国か。サエワ国はこの人間が住むヅキミ国の、東にある。確か魔法も進歩しんぽして、それに伴って国も発展しているはずだ。


 だが私はまだ、行ったことが無い。一度は行ってみたいと思っていたが、まだ行ったことがない。そういう国に初めて行って、魚を釣るというのは少し不安だ。そう考えていると、国王は告げた。

「もしサワエ国で見事にヒラメを釣ってきたら、そなたに三○○万ゴールドを渡そう」


 さ、三○○万ゴールド?! それを聞いた私はすぐに、国王に頭を下げた。

「分かりました、国王。この、この国で一番の釣りである私が、見事みごとにヒラメを釣ってきましょう! はーはっはっはっはっ!」


 それを聞いて国王は、顔をほころばせた。

「おお! 釣ってきてくれるか?!」

「はい、もちろんです。見事に三○○万ゴールド、いやヒラメを釣ってきて見せましょう」

「うむうむ。それでは、期待しているぞ」

「はい」


 そうして玉座を離れると、イホリさんは城に外まで一緒いっしょにきてくれた。そして、話し出した。

「まあサワエ国なら、問題無いでしょう。このヅキミ国とも、国交こっこうがありますし」


 なるほど。確かに国交が無いと、国に入ることもできないだろう。でも、その国交があるというのなら安心だ。そうしてイホリさんは、私を黒塗りの馬車で家まで送ってくれた。


 私は早速、お母さんに話をした。これからサワエ国に行って、魚を釣ってくると。突然の話でお母さんはおどろいた表情になったが、結局は応援おうえんしてくれた。

「そうかい、そうかい。サワエ国に行くのかい。まあ、サワエ国なら安心ね。そこに住んでいるエルフの、悪いウワサも聞かないし」


 そうしてお母さんは、以前私が預けた一〇万ゴールドが入った袋を私に手渡した。

「まあ、このくらいのお金があればいいでしょう。魚釣りは最早もはやお前の仕事なんだから、しっかりと釣ってくるんだよ」

「うん!」


 一〇万ゴールドを手に入れた私は家の外に出て、金属製のバケツと竿さお背負せおった。そしてほうきにまたがって、風の魔法をとなえた。

「風の聖霊せいれいよ、おどり出せ! ウインド!」


 そうして一〇メートルほどゆっくりと上昇じょうしょうして、東を向いた。あっちに、サワエ国があるのね。よーし、行くぞー! 私はほうきの後ろに、意識を集中した。するとそこから風が出て、ほうきは飛び始めた。


 初めて行く国、そして三○○万ゴールドのお礼をもらえるヒラメを釣ることを考えると、私は自然とワクワクした。よーし、いっちょエルフの国に行ってみるかー!

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