【連載中】絶対に魚が釣れる魔法を覚えたので、ドンドン釣ってドンドン売ってお城を建てます!

久坂裕介

第一章 高級魚を釣ります

第一話

「お、おお? これは釣れたか?!」


 私は釣り竿ざおに、手ごたえを感じた。グンと引っられる、手ごたえだ。うーん。これはまだ、魚をったことにはならないだろう。魚を釣るとは、魚を海中から引き上げることのはずだ。なので私は釣り竿を、思い切り頭上に引き上げた。

「えーい!」


 すると魚が海中から引き上げられて、私の後ろに落下した。お、おお、やった。私は生まれて初めて、魚を釣ったぞ! 私はそれを、両手に乗せてみた。大きさは、三〇センチくらい。


 上半分は黒く、下半分は銀色。そしてその間には、黒い斑点はんてんが並んでいた。私は、この魚を知っている。イワシだ。家でもよく食べるから、知っている。それにしても、こんなに簡単に釣れるとは。


 面白くなった私は、再び黒く二メートルくらいの長さの釣り竿かられている釣り糸を海の中に入れた。その先にはエサが付いていない、釣りばりがある。でも、エサが無くても魔法で釣れる。そう、『絶対に魚が釣れる魔法』で!


 私は、意識を集中した。体の真ん中に集まった意識が右腕を通り釣竿をつたわって、更に釣り糸の先にある釣り針に到達とうたつしたイメージ。よし、今だ! 私は、魔法をとなえた。

「魚たちよ、このにおいを感じ取れ! キャッチ・ザ・フィッシュ!」

 

 すると少しして、釣り竿に手ごたえを感じた。グンと引っ張られる、手ごたえだ。なので私は釣り竿を、思い切り頭上に引き上げた。するとまた、イワシが釣れた。やったー! また釣れたー! 釣りをするのは今日が初めてだけど、魚が絶対に釣れるので面白おもしろくなった私は続けた。


 そうして私は魔法を使って、一〇匹のイワシを釣り上げた。なので魔法も一〇回、使ったことになる。すると私は、立っていられなくなるほどの精神的な疲れを感じた。なので私は、みさきの草原で仰向あおむけになった。そして、考えた。一〇回使うと、こんなに疲れるとは。漁師さんたちが、この魔法を使わないわけだ……。


 私がこの魔法をおぼえたのは今日の午後、王立図書館でだ。私は本を読むのが好きで、よく図書館に通っている。今日も借りて読んだ本を返して、次に読む本をさがしていた。すると、興味深きょみぶかい本を見つけた。『古代こだい魔法書』という本だ。


 読んでみるとその通り、昔に使われた魔法が書かれていた。なるほど。昔は、こういう魔法を使っていたのかとパラパラとページをめくってみると気になる魔法を見つけた。それが、『絶対に魚が釣れる魔法』だ。


 見つけた時は、疑問に思った。漁師りょうしさんたちが、この魔法を使っているという話を聞いたことがないからだ。『絶対に魚が釣れる魔法』なのに。


 読んでみるとこの魔法は、釣り針から全ての魚が好きな匂いを出して魚を釣るようだ。でも漁師さんたちは、この魔法を使わない。だから私は、疑問に思った。この魔法で本当に、魚が釣れるのかと。


 なので私は、この魔法をためしてみることにした。今まで、釣りをしたことは無いけれど。家にあった釣り竿と金属製のバケツを持って、この海に少し突き出た岬にやってきた。


 そしてイワシを、一〇ぴき釣ってみて分かった。これは、魔力を使いすぎる魔法だと。魔力とは、精神力だ。一〇回使うだけで、立っていられなくなるほどの精神力を使う。だから漁師さんたちは、使わないんだと。


 今の漁師さんたちは船に乗っておきに出て、魔法で魚のれを探す。そしてそこに大きなあみを投げ入れて、大量の魚をると聞いたことがある。どう考えても、そっちの方が楽だ。なるほど……。


 そう考えながら休んでいると、精神的な疲れが回復した。そしてバケツの中のイワシを、見つめた。これは家に持って帰って、皆で食べよう。でもその前に、この魚を食べたくなった。ちょっとお腹も、いてきたし。なので海の近くの林に入って、れ枝を数本持ってきた。


 そして一本の枯れ枝を、一匹のイワシの口からんだ。残りの枯れ枝は燃やすために、一か所にまとめた。それから火を付けるために、私は魔法を使うことにした。意識を、集中した。


 体の真ん中に集まった意識が、右腕から右手に。そして人差ひとさし指の先に意識が、集中するイメージ。今だ。私は、火の魔法をとなえた。

「体中の熱よ、放出せよ! ファイア!」


 すると私の右手の人差し指から、大きな炎が出た。おっと、これは大きすぎだ。私はあわてて人差し指に集中した意識を、手首にまでもどした。すると炎も、小さくなった。よし、これでいい。


 それで私は、枯れ枝に火を付けた。そうして枯れ枝が燃えたので私はその炎で、塩をふったイワシを焼いた。塩はこしにぶら下げてある、小袋から出した。もし魚が釣れたら、食べようと思っていたからだ。


 イワシを焼きながら、私は考えた。やはり『絶対に魚が釣れる魔法』は、古代魔法だと。呪文の詠唱えいしょうが必要なのは現代の魔法と同じだが、魔法名が長い。『絶対に魚が釣れる魔法』は「キャッチ・ザ・フィッシュ」と三つの単語だ。くらべて現代魔法のファイアは、一つの単語でむ。魔法はこうして簡単に唱えられるように、進化したようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る