第二十四章 再会

三人は墓の前で手を合わせた。


この世界がいつ終わるのかはわからない。


でもHOPEの影響下にもかかわらず、美しさと絶望に気付いたこの父親を前に


カナメは心から尊敬の念を抱かずにはいられなかった。




「さぁマコ。そろそろ行きましょう」


「うん!パパ!またね!」


どこまでも美しいやり取り。


カナメはまたしても心が救われた気がした。




その時──


背後で、大勢の足音が地面を揺らした。

金属がぶつかるガシャガシャという音が、銃器を連想させる。


カナメは反射的にマコの手を取った。

視線を走らせ、緊張が胸を締めつける。


現れたのは、軍の部隊だった。


そして、部隊の中から──


「……カナメ!?」


女の声。

一瞬で全身の血が逆流する。


心臓が、ひどく跳ね上がった。

ああ……共鳴がなくなって、本当によかった。

そうでなければ、きっと最適化された心拍数に戻されていた。


今は、このまま、制御なんかできない感情のままでいたかった。

この奇跡に、ただ感謝したかった。


「カナメ!!!」


「……エリ!!」




軍人たちの人垣を押しのけ、白衣の女性が飛び出してくる。

息も荒く、涙に濡れた顔。


走り寄る勢いのまま、二人は抱き合った。


「カナメ……カナメ……!バカ……!

どれだけ心配したと思ってるの……!」


「……ごめん。

後で、ちゃんと全部話すよ……」


そのとき──


ドス、ドス、ドス!

大地を踏み鳴らす重量感。


ああ…HOPEがなくてもわかる。

勘弁してくれ。

もうエリだけで十分なんだ。


「カナメェ!!! よく生きてた!!」


ガシィィッ!!


エリごと、強烈に抱きしめられる。

……センイチ大将だ。


ずしりと体を締めつける腕。


「い……痛いよ、大将……」


「いや本当に……よく……よく無事でいてくれた……!!」


胸に顔を埋めるエリが、小さく震えていた。

胸に、涙で暖かくなる感覚が広がる。


顔は見えなかった。

でも、それでよかった。


このまま溶けて、一つになってしまえたらいい。


……そう願った自分がいた。


その気持ちが、何の合理性にもよらないただの“感情”だと気づいたとき、

カナメはとても嬉しかった。

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