量産体制、始動

アキラはすぐに『ノヴァ・ライター』の最上位プランに課金した。夜勤明けの睡眠時間を削り、アパートの一室に引きこもる生活が始まった。


彼の戦略はシンプルかつ大胆だった。


「多作・高速・多様性」


多作・高速: 質より量を優先し、AIに次々と小説を生成させる。長編一本に時間をかけるより、短編~中編を大量に投稿する方がランキングには有利だ。ランキングは「PV」と「いいね」で決まる。作品数が多ければ、それだけ誰かの目に留まる確率は上がる。


多様性: 異世界ファンタジー、現代ラブコメ、SFミステリ、ホラー……。あらゆるジャンルの「売れるテンプレ」を研究し、AIに微調整を加えながら生成させた。


アキラの仕事は、AI小説編集者とでも言うべきものだった。


市場調査: ノベル・アトラスのランキングを徹底的に分析し、現在流行しているジャンルと、不足しているニッチなジャンルを見極める。


プロット設計: AIに渡すための「種」となるプロットを、売れ筋テンプレを参考に組み立てる。ただし、既存作品の丸パクリにならないよう、一ひねり加えることを心がける。


微調整と投稿: AIが生成した文章を一通り読み、致命的な矛盾や、人間が読んで不快になるような不自然な表現がないかチェックし、修正を加える(主にタイトルやキャッチコピーの煽り文句の強化)。


連載スケジュール管理: 投稿頻度を徹底管理。毎日最低2作品、多い日は4作品を投下する。


最初は苦労した。AIは確かに優秀だが、完璧ではない。時々、登場人物の名前を間違えたり、物理法則を無視した描写をしたりする。それを手動で修正するのは骨の折れる作業だった。


しかし、アキラは夜勤で培った地道な集中力で、この作業を「ゲーム」として楽しむようになった。


「よし、AIちゃん、今回は『追放された聖女は隣国で最強スローライフを送る』の第1話だ。主人公の心情描写を、もっと湿度高めに頼む」


「えーっと、『俺の幼馴染が実は異世界転生者で、俺の知らないところでチート能力を隠し持っていた件』、これはタイトルが長いな。『幼馴染は隠れチート』でいいか。よし、投稿!」


そして、1ヶ月が経過した。


アキラの投稿作品は、38作品に達していた。

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