都市伝説調査報告[メアリー•セレスト号の真実]

Yukl.ta

調査報告①[調査開始/20250810]

[メアリー・セレスト号事件]

この事件を聞いたことはあるでしょうか?

おそらく耳にしたことがあるでしょう。有名な都市伝説です。

メアリー・セレスト号。

1872年。ポルトガルのリスボン沖から西に700km辺りの海域…北緯25°西経70°の辺りで、無人のまま漂流していたのを発見された。それがこの船です。

そして発見当時。

『なぜか乗員が一人も乗っておらず』

航海史上最大の謎とされる事件です。



曰く、都市伝説

曰く、フォークロア

曰く、urban legend(アーバンレジェンド)

曰く、a friend of a friend

曰く、信じようと信じまいと…


人から人へ、人の言葉を通じて語り継がれる幾多の怪奇譚。

信じるも信じないも、全てはあなた次第。


私は、都市伝説を信じる者です。

いや…厳密には、都市伝説を探求する立場の人間です。

今回の都市伝説の調査については、とある酔狂な篤志家からの依頼ですが。


口伝を基とした噺は、必ず歪曲される。

時に怪奇性を増幅させる事を目的に。

時に怖さを煽る事を理由に。

そして時に、その真相が導き得る真の残虐さと恐怖性を誤魔化す為に。

けれど。

そこには必ず、一抹の真実がある。

伝承の始まりがある。

そう私は信じ、探求を続けています。



さて。

以下は『都市伝説で伝わるメアリー・セレスト号消失事件』の概要です。


1872年11月7日。船長ベンジャミン・ブリッグズの指揮下、[メアリー・セレスト号]はニューヨークから出港。

工業用アルコール、その他、小麦等の穀物を積荷とし、ニューヨークからイタリア王国に向かいます。


船には船員7人のほか、船長ブリッグスと妻サラ、そして娘の、計10人が乗船していました。


1982年12月5日。海原を漂うメアリー・セレスト号を[デイ・グラチア号]が発見。異常を察知した船長のモアハウスは、メアリー・セレスト号に乗船。船内に乗り込みます。

そして、驚くことに『船の中が無人』であったことに気付くのです。

不審に思ったモアハウスはメアリー・セレスト号の船内をくまなく調べました。

その結果、奇妙な事象が幾つも確認できました。


モアハウスが船に足を踏み入れた時。

船全体は海水でびしょ濡れでした。

甲板は水浸しで太陽光を反射しています。

船倉にも海水が浸水しており、探索する足底に海水の湿り気を感じます。


しかし、ポンプが壊れているわけではなく、僅かな浸水以外は船は良好な状態であり、充分に航海が可能な状況でした。


積荷は、数個の樽の破損を除けば、ほぼ無事であり、この船が目的地を目指し航海の最中であった事を教えてくれます。


しかし操舵室は…

明らかに異常でした。

羅針盤は破壊されており、六分儀とクロノメーターは消失していたのです。

航海の命とも言えるこれら計器類は、何処に失われてしまたのでしょうか。


救命ボートは、二台とも船の中に懸架されたままでした。

この事から、船員が船を破棄して逃げ出した可能性が無くなりました。

ボートの傍らには謎の血痕があり、原因不明の擦り傷も確認されました。


乗員の船室には、衣服の類や化粧道具などの身の周りの品はそのまま置いてあり、鞄も空もままでした。

船長の妻が寝起きしていたと思われる船室には、描きかけの絵があったそうです。


乗員を探し、船内を捜索する中。

モアハウスは驚愕の光景を目にしました。

食堂と思われる部屋の机の上には…。

まるで淹れたてのような湯気を立てるコーヒーと、ほんのりと暖かい一切れのパンが置いてあったのです!


モアハウスは混乱します。

確かにこの船は、航行可能な状態を保ってはいますが、

荒れた船内の様子を見れば、誰も乗っていないことは明白です。

なら、この食事は、誰が作ったものなのか!


驚きながらも、モアハウスは船長の私室に向かいます。

しかし。

その時、再びモアハウスは驚くべきものを発見しました。

船長の私室。そこには…赤く染まる血に濡れた跡のある刀剣があったのです!


「なんなんだこれは!」

「いったい船に何があったんだ!」

最後に、モアハウスは船長室に足を向けます。きっとそこに謎を解明する何かがある。そう思っていました。


船長室には、航海日誌と思しき革製の本がありました。

航海日誌の内容を読むに、メアリー・セレスト号の航海は順風満帆だったようです。

11月24日の記述には、明日には目的地であるイタリアに到着することが示唆されていました。

…しかし、日誌は11月24日で途切れていました。


11月24日のページには…

「霧が」

そう記されていました。

その日、船は悪天候に見舞われたのでしょうか…。


以降、今日12月5日までの間に船で何があったのか。それを航海日誌から知ることはできませんでした。


しかし。

日誌の最後のページを見た時。モアハウスは息を呑みます。

そこには、乱れた文字で、一言。

『我が妻…ロタンが』

記述は、それだけでした。

日付は書かれていません。



一体この船に、何が起こったのでしょうか?

ほぼ無事な船を残したまま、この船の乗組員は、何処に消えてしまったのでしょうか?



メアリー・セレスト号の乗員消失。

その理由は諸説様々あります。

[海賊船襲撃説]

[異次元消失説]

[UFO誘拐説]

[ハリケーン説]

エトセトラエトセトラ…

この奇妙な消失事件は、様々は憶測を呼び、多くの仮説が立てられました。

しかし、決定打となる仮説には未だ至りません。


様々な諸説の中で、特に説明に苦慮する部分。

それは、

①湯気を立てる作りかけの食事

②荷物や積荷を運び出した形跡がない

③血痕の付着した未使用の救命ボート

④放置された血濡れの刀剣

⑤消失•破壊された計器類

言わば通常の海難事故ではあり得ないこれらの事象が、メアリー・セレスト号事件における諸説仮説の特定を困難にしているのです。

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