SHOGUN COUNTRY

Kay.Valentine

第1話 

戸建ての二階、翔太の部屋。午後8時。


翔太は明日の社会科テストの勉強中。


「はぁー? 徳川共和国ですってえ!」


いきなり背後から声がしたので


翔太は椅子ごと飛び上がった。


「わ、わわわっ、誰っ! 


 キミっ! ダレっ!」


「ごめんなさい。


 わたしセリーヌっていうの」


「ど、どうやって入ってきたの!」


「未来から来たの」


「未来から? はぁ……? 


 何言ってんの?」


「ごめんね。


 実は、ひいおじいちゃんに


 会いたくて100年後から来たの」


「ひいおじいちゃんて、ダレ?!」


「そこにいるキミ」


「えっ、ボクのこと? 


 ボクがキミのひいおじいちゃん?」


「そう。ひいおじいちゃんは


 とても偉い人だったんだって。


世界の歴史を変えた人なんだって


歴史の授業でも習ったよ」


「えぇっ? そんなこと言われても


 分からないよ!」


「そうよね。ごめんなさい。


 きちんと説明するね。


実はね、私のパパは時間省の役人なの。


だから、こっそりとパパの


タイムマシンを拝借してきたの。


もちろんバレたら大変なんだけどね」


「へえ~、そうなんだ。


 キミは案外とワルなんだね。


ま、まぁ、とにかく、


そこのベッドに座って話そうよ」


「わかったわ。


 あら、この時代のベッド、硬いのね」


「キミは何歳?」


「14歳よ」


「じゃあ、年上だね。ボクは12歳だから」


「その年を選んで来たのよ。


 あれ、この言葉づかい、大丈夫かな?」


「うん、ふつうだよ。


 べつにおかしくはないけど」


「よかった。ココちゃんのおかげね」


「ココちゃん?」


「うん、超AIチップの名前」


「超AIチップって?」


「100年後の人工知能よ。


私たち、生まれるとすぐに


小指の爪くらいのチップを


脳に埋め込まれるの。


そして、AIチップのココちゃんが


言葉も文化も、なんでも教えてくれるの。


脳のなかにドラえもんがいるって感じね」


「へぇ……。なんかすごいな」


「それでね、ココちゃんに頼んで


 ちょっと原始時代に行ってきたの。


 今はその帰り道ってわけね」


「ゲ、ゲンシ時代だってえー!」


「そんなに大きな声を出さないでよ。


 翔太くんだって遊園地に行くでしょ」


「遊園地と原始時代じゃ、


 ぜんぜん違うじゃん!」


「私たちの時代ではそんな感じなの」


「はあ~~?」


翔太は頭が混乱して


あんぐりと口を開けたまま


固まってしまった。


「ところで、その『ひいおじいちゃん』


 ていう言い方やめてくれない?


 まだ前途ある少年なんだから」


「わかったわ。じゃあねえ……、


 翔太くんて呼ぶね」


「うん、それならいいよ」


翔太は自分の机に戻った。

 

セリーヌも立ち上がり翔太の横に来た。


机の上には、


教科書と地図帳とノートが広がっている。


地図は徳川共和国というタイトル。


「そうそう。“徳川共和国” ? 


 それってどこの国?」


セリーヌが大きな声をあげるものだから、


驚いた翔太は口を尖らして言った。


「なんだよ、ボクたちの国じゃん。


キミは徳川共和国を知らないの?」


              つづく

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