羽毛布団の冒険

佳上成鳴 カクヨムコンテスト参加中!

どこへ行ってしまったのか?

 香奈は住宅街を走っていた。


「もう~どこ行っちゃったんだろ~?」


 上を見ながら探しているが雲しか見えない。すると前から女性が歩いて来たので足を止めた。


「すいません、布団見ませんでしたか?」


 女性は、見てないわねぇ。と答えてくれた。


「羽毛布団?」

「そうなんですよ」

「羽毛布団は軽いから身軽にどんどん飛んで行って困るわよねぇ~」

「うっかり掃除で窓を開けっぱなしにしてしまって」

「うちも前そうだったわ」

「ありがとうございます」

「見つかるといいわね」


 そう言って女性と別れまた走り出す。


 今はまだ風が無いからいいが、風が吹き始めたら風に乗って遠くに行ってしまうから早く見つけなければ。


 布団が飛ぶ。この世界では布団は自由に飛ぶ物だ。たまにひらひらと飛んでいるのを見かけることがある。

 今日は掃除機をかけようと窓を開けていたら目を離した隙に飛んで行ってしまって慌てて探している。

 その時、前から杖をついたおばあちゃんが歩いて来た。すかさず声をかける。


「すいません、布団見かけませんでしたか?」


 するとおばあちゃんは満面の笑みになった。


「あら、あのお布団の持ち主?」

「はい」

「会えてよかったわ~さっき私がよろけて転びそうになった時あの羽毛布団が飛んできて地面との間に入ってくれて私怪我をしなくてすんだのよ」

「まぁ、お怪我がなくてよかったです」

「ありがとうね」 

 

 おばあちゃんは上品な笑みでお礼を言ってくれた。


「あの布団ならあっちに飛んで行ったわ」


 そう言って西の方を指さした。私はお礼を言ってその場を離れる。


「もう日も暮れるから冷えないうちに早く見つかるといいわね~」


 頭を下げて走り出す。すると道の上をひらひらと飛んでいる布団を見つけた。


「あっいた! 」


 走って布団を捕まえた。布団はまだ飛びたいとバタバタと暴れている。


「もうだめだよ! 帰るよ」


 布団は諦めたように力を抜いた。私は布団を抱えたまま歩き出す。


「でもまぁ、おばあちゃんを助けたのはよくやったよ」


 語り掛けると布団は端の方をひらりと上げた。


「さっ日が暮れる前に帰ろう」


 そう言って家路を急いだ。

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