一目惚れ

 ずっと一緒だよ。

 健太はお休み前にいつもそう。声をかけてくれた。

 健太はいつも彼女をそばに置いていた。お出かけの時も、落ち込んでる時も。さすがにお風呂は一緒に入れなかったけど。


 大好きだよ、エリー。 

 健太の優しい言葉が好きだった。

 とてもとても好きだった。

 なにせ、エリーは健太のことならなんでも知っているのだから。


 なのに。


「うわぁぁ〜」

健太はその女を見たとき聞いたことのない歓喜の声をあげた。


 いつも優しくエリーを包みこんでくれていた手から彼女はこぼれ落ちた。

 地面に尻もちついたというのに、健太はエリーを気にもとめない。


「まって」

 エリーは声を上げたいのに、何も言えなかった。

 そのことがとてもとても悔しかった。


 ずっと一緒だよ

 その誓いがもはや懐かしい。


 今、エリーは暗くて狭いところに押し込められていた。

 近くで健太の声が届くのに、どうしても話しかけられない。



 エリーは最後にこう願った。


「私の心臓に熱をくべたのはあなたなのですから、せめてこね心臓が止まる前に、あなたの手で引導を渡してください」


 その願いは叶うことはなかった。

 やがてエリーの心臓がただの鉄屑になってしまう。


 もはや、助けを呼ぶことすら叶わない状況。


 エリーはもう何もかも諦めていた。

 でも、助けは来た。

 新しく来たあの女が彼女を見つけたのだ。


「健太、おもちゃで遊んだら片付けなさいっていつも言ってるわよね。ポチが人形くわえてるわよ」

「ごめんなさい、ママ」

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