トリックオアトリート
「今日はハロウィンよ、ハロウィン!
大人たちをおどしていっぱい、いっぱいお菓子を巻き上げてやるんだから」
「ほどほどにしないと罰が当たるよ」
「そんなのあるわけないじゃない。
夜遅くまで起きてても、嫌いな野菜残しても、神様が私を罰することなんてなかったんだから」
今日はハロウィン。
子供たちが秘密基地に集まって、今日の予定を話し合っていた。
そして話題が、今日の仮装を何にするというというものになると、先ほど一段と張り切っていた女の子が悪戯を思いついたのか、目を輝かせた。
「たった今、お菓子をたくさんもらう手を考え付いたの」
「その作戦ていうのは?」
幼馴染の少年が問いかけた。
「まず、魔女の仮装をするでしょ。その上にカボチャ頭をかぶるの。
そうするとね、私が同じ家に二回訪れても誰だか分からないって寸法よ」
「もう一度いうけど、そんな悪いことすると神様から罰が当たるよ」
「だから、そんなことあるわけないんだって」
「でもさ、それやられると俺たちのお菓子の取り分が少なくならない」
「そうだそうだ」
彼女の恐ろしい計画を耳にして、他の子たちは震えあがった。
何せ、それをやられると自分たちの取り分がなくなってしまうかもしれないからだ。
「分かったわよ。あんたらが回った家でしかやらないから」
そういわれると、他の子たちは反対することなく。唯一反対していた幼馴染も場の雰囲気に流されてしまった。
「ハッピー・ハロウィン!」
カボチャ頭が元気よく、他の子たちを引き連れ家々を回っていく。
「やっぱりさ、魔女計画やめようよ」
「なによ、あんたは私が失敗すると思ってるの」
「いや、ただ単にお菓子はもう十分だと思ったんだ」
と、幼馴染は口にした。
「もうこれだけあったら、お菓子を運ぶこと自体が大変だよ」
「それもそうね、いったん家に帰っても、お母さんにばれるかもしれないし」
しばらく考えたのちに、彼女は食べて減らせばいいという結論に達した。
「かぼちゃマスクの上から食べるなんてお行儀が悪いよ」
「でも、顔を見られたら、二週目ができないかもしれないじゃない」
と言って、手を止めない。
食べにくいせいか、キャンディーらや綿菓子やら。
いろんなものが口から転げ落ちた。
「よし、あらかた片付いたし、2週目言ってくるわ」
彼女はかぼちゃマスクを取ろうとして、固まった。
「何これ、どういうこと」
「どうしたの?」
「マスクが取れないの」
「きっと、口からこぼれた砂糖のせいだよ」
「とって、これとって!」
ただでさえ遅い時刻。
これ以上遅くなると、大人たちが速く帰れと言う忠告だけで、お菓子をくれなくなるかもしれない。
彼女はカボチャ頭を上下左右に振って、どうにか脱ごうとする。
「落ち着いて。
砂糖で引っ付いてるんだから、水をかければ取れるよ」
幸いなことに公園が近くにあり、そこにあった水飲み場で砂糖を洗浄できた。
「ああ、ひどい目にあった」
ふうっと一息ついていると、公園の近くを通りかかった子供たちが少女を指さし、
「化物!」
と、叫んだ。
「ねぇ、これどうなってんの」
慌ててトイレにある鏡に向かう。
どうやら、水は砂糖だけではなくヘアスプレーも流してしまったらしい。
鏡にはこの世のものとは思えない彼女の姿が映し出されていた。
「良かったね、多分だけど、今年一番ハロウィンにふさわしい格好だよ」
幼馴染はお菓子がたくさんもらえるといった。
「いかない」
しかし、少女は首を振る。
「こんなかわいくない格好人に見せたくない」
そういうと彼女は家に帰っていく。
「欲をかくから神様が罰を下したんだよ」
その背中を見つめながら、幼馴染が言ったとおりでしょと語りかけた。
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