【 ギルド管理番号 】 GYT-058

【 通称 】女神の涙滴 ／ 辺境伯の癒し泉

【 脅威レベル 】 黄 (Yellow)

　泉自体に直接的な攻撃性はないものの、湧き出る水が持つ異常な活性効果は未知数であり、過剰摂取や悪用は予測不能な結果を招く可能性がある。また、泉は超古代文明の遺物「封印指定ダンジョン AZ-001」の一部と強く疑われ、現在は管理者レンによって厳重に管理されている。不用意な接触や不埒な行動は、管理者による排除措置を誘発しかねない。ただし、管理者への敵対行動や利用規約への重大な違反は、予測不能かつ苛烈な報復措置（脅威度：黒 に相当する可能性）を招く危険性が極めて高い点に留意すること。

【 概要 】

　フィルモサーナ大陸中央部、メジャイ王国東部の広大な辺境荒野に、突如として存在する不可解な泉 。周囲の枯渇した環境とは対照的に、常に清冽な水を湧き出させている 。この水には、通常のポーションを遥かに凌駕する治癒・活性化効果が確認されているが、その起源および原理は一切不明 。その存在は、現・辺境伯アラン・タシュオルが発見し、彼と良好な関係にあるグレイベア地下帝国初代ギルドマスター・タヌァカ皇帝陛下へ情報が提供されたことでギルドにも認知された。泉および周辺領域は、超古代文明の遺物「封印ダンジョン」である可能性が極めて高い 。現在はアラン辺境伯配下の管理インターフェース（コードネーム：レン）によって管理されている 。泉へ至る道は整備され、多くの旅人や冒険者が訪れるようになったが、泉の利用には管理者の許可が必要であり、ルールを破る者には厳しい対処がなされるとの報告がある。

【 識別特徴 】

　直径1メートル程度の小さな泉 。水は極めて透明度が高く、泉の底の小石まで視認可能 。泉の水は絶えず岩の間から湧き出ているが、溢れることなく周囲の乾いた大地に吸収されている 。泉の周辺半径数メートルの範囲のみ、瑞々しい苔が密生している 。

画像

https://kakuyomu.jp/users/teikokuyouitaisakukyoku/news/822139838449293782

❖ 魔力反応

　泉およびその周辺領域（半径約2km）では、極めて高密度かつ純粋な魔力が恒常的に観測される 。この魔力は特定の属性を持たず、根源的な生命力、あるいはダンジョンの維持に関わるエネルギーであると推測される 。

❖ 水の効果

　飲用した場合、対象の体力および魔力を急速に回復させる 。重度の疲労や軽度の負傷であれば、少量で顕著な効果が見られる 。回復効果に加え、精神的な高揚感や活性化作用も報告されている 。

❖ 付随現象

　泉周辺には、管理インターフェース（コードネーム：レン）と呼ばれる脅威が存在する。彼女は通常、銀髪碧眼の女性の姿（プライマリボディ、あるいはセカンダリボディと呼ばれる）をとり、メイド服を着用して泉の利用者を監視している 。アラン辺境伯以外には基本的に無表情・無感情に対応する 。

【 生態および能力 】

❖ 水の生成

　泉は枯れることなく常に一定量の「癒しの水」を生成し続けている。生成メカニズムは不明だが、地下深くに存在する「AZ-001」本体からのエネルギー供給によるものと推測される。

　活性化・治癒: 泉の水に含まれる未知の成分、あるいは高密度魔力により、生物の自然治癒力を極限まで高め、細胞レベルでの活性化を促す 。これにより、体力・魔力の回復、軽度の傷や疲労の治癒が可能となる 。ただし、重篤な疾患や呪詛、欠損部位の再生に対する効果は限定的（※アラン辺境伯のスキルと併用した場合、通常では考えられない効果が発現する可能性あり ）。長期的な摂取や過剰摂取による身体・精神への影響（例：魔力循環系の変質、特定の成分への依存性、体質の変化など）については未解明であり、注意が必要である。

❖ スキル増幅

　特定のユニークスキル（例：【家庭菜園】【収納】）と泉を中心とした半径約2kmの領域内の魔力場が共鳴し、スキルの効果を異常なレベルまで増幅させる現象が確認されている 。他のスキルに対する影響は不明だが、潜在的に他の能力をも変質させる可能性がある。

❖ 管理者の権限

　管理インターフェース（コードネーム：レン）は、泉および周辺領域（ダンジョン機能範囲内）において、絶対的な権限を有すると推測される 。空間転送 、物質生成・加工 、環境制御、侵入者排除（SSS級冒険者相当の戦闘力による物理的排除を含む ）など、その能力は計り知れない。泉の不正利用や周辺での破壊行為、管理者への敵対行動は、即座かつ苛烈な報復を招く。

【 遭遇時対応プロトコル 】

❖ 訪問

　泉への訪問自体は現在可能だが、常に管理者レンの監視下にあることを認識すること。事前にアラン辺境伯、または現地の管理事務所（文官ハロルド管轄）に目的を届け出ることが強く推奨される。

❖ 泉の利用

　泉の水を飲むことは基本的に許可されているが、節度を守ること。大量の採取、独占、汚染行為は厳禁。違反者は管理者レンによる実力行使（最悪の場合、消去される可能性）を受ける。

❖ 管理者への対応

　管理インターフェース（コードネーム：レン）に遭遇した場合、敬意を払い、敵対的な言動や不審な行動は絶対に避けること。彼女の指示には絶対に従うこと。彼女はアラン辺境伯以外には基本的に関心を示さないが、不埒な行動や泉への害意に対しては容赦がないとされる 。

❖ 戦闘行為

　泉周辺での戦闘行為は厳禁。魔物が出現した場合も、管理者に任せ、手を出さないこと。周辺環境やダンジョンシステムへの影響は予測不能であり、管理者による制裁の対象となる。

❖ スキル使用

　泉周辺での大規模なスキル使用は控えること。特に空間干渉系や大規模破壊系のスキルは、管理者およびダンジョンシステムを刺激する可能性がある。

【 過去のインシデント記録 】

　記録 GYT-058-01 (日付不明): 冒険者パーティを追放され放浪していたアラン（当時）が、瀕死の状態で泉を発見。泉の水を飲んで生還 。その後、彼の所持スキル【家庭菜園】【収納】が異常な強化を遂げる 。この情報が、後に友好関係を結んだグレイベア地下帝国タヌァカ皇帝へ共有され、ギルド調査の端緒となる。

❖ 記録 GYT-058-02 (アラン辺境伯による報告)

　アランが泉周辺で【家庭菜園】スキルを使用し、異常な成長速度と特殊効果（魔力回復、筋力増強など）を持つ作物を生成 。これらの作物は「神トマト」「聖者のピュアルート」などと呼ばれ、魔神級の呪詛すら浄化する効果を示したとされる 。

❖ 記録 GYT-058-03 (アラン辺境伯による報告)

　泉周辺領域に侵入した狂暴化魔獣（ダンジョン由来の可能性）に対し、管理者レンが介入。一瞬で対象を無力化、あるいは消滅させたとされる 。詳細不明。

❖ 記録 GYT-058-04 (日付不明)

　冒険者パーティ「ダンジョンシーカー」が泉周辺で消息不明。泉の魔力反応を探知後、ダンジョン由来と思われる施設を発見し、内部の魔獣に襲撃されたとのこと （詳細は別ファイル参照）。泉との直接的な関連は不明だが、周辺地域の危険性を示唆する事例。

❖ 記録 GYT-058-05 (複数冒険者の証言)

　泉の噂を聞きつけ訪れた冒険者数名が、「泉の水を過剰に汲み上げようとした」「管理者の制止を無視して泉周辺の環境を汚損しようとした」「管理者レンに対し侮辱的な言動や物理的な接触を強行しようとした」結果、忽然と姿を消す事例が複数報告されている。いずれもアラン辺境伯は関知しておらず、管理者レンによる自主的な排除措置と推測される。生存者の証言は「気づいたら荒野に放り出されていた」「デコピンされたと思ったら気を失っていた 」など様々だが、共通して「二度と近づきたくない」と語っている。

【 ギルド調査員からの注記 】

　この泉は、単なる魔力の源泉ではない。アラン辺境伯の報告を鵜呑みにするわけではないが、彼のスキル増幅現象（効果範囲は泉を中心とした半径約2km）や管理者レンの存在は、我々の理解を超えた技術、あるいは魔法体系を示唆している。調査は必要だが、深淵を覗きすぎてはならない。

　回復効果は確かに驚異的だが、果たして代償はないのだろうか？ 長期的な摂取や過剰摂取による身体・精神への影響（例：魔力循環系の変質、特定の成分への依存性、体質の変化など）については未解明であり、警戒が必要である。 飲んだ者は泉、あるいはダンジョンに「何か」を捧げている可能性はないか？ アラン辺境伯自身が、気づかぬうちにシステムの「一部」になっている、なんてことは……考えすぎか。

　くわえて、あの管理者レン……彼女の言う「SSS級相当」が真実なら、我々ギルドが対処できる存在ではない。アラン辺境伯との関係が良好なうちは良いが……。彼女の「旦那様」への忠誠心は絶対的なようだが、その基準も我々とは異なる可能性が高い。彼女の機嫌を損ねることだけは避けたいものだ。

　結局のところ、この泉はアラン辺境伯と、その背後にいる管理者レンという存在の支配下にある。「癒しの泉」であると同時に、機嫌を損ねれば即座に牙を剥く「気まぐれな竜の顎」のようなものだ。敬意と節度。それだけが、この地で許される作法だろう。