グレイベア妖異危険情報
帝国妖異対策局
GYT-007 フランソルの孤娘たち
【 管理番号 】GYT-007
【 通称 】嵐の乙女(テンペスト・メイデン)/ 種馬狩り(スタリオン・ハンター)/ フランソルの
【 脅威レベル 】 黄 (Yellow)
対象は高度な戦闘技術と集団戦術を有し、特定の条件下で他種族(特に男性)に対し極めて攻撃的になる。生息域が限定的であるため「赤」には至らないが、遭遇した場合、銀級以上の熟練パーティでも全滅のリスクが非常に高い。
【 概要 】
GYT-007は、八百万諸島の特定海域「風切り諸島」にのみ生息が確認されている、雌(しせい)のみで構成される亜人種族。 外見は一般的なケンタウロス族に酷似しているが、多様な人種的特徴を持つ美しい女性の上半身を持つ。彼女らは独自の精霊信仰と戦闘文化を保持しており、ギルドの接触試行に対し一貫して排他的な姿勢を維持している。 ギルド内では、彼女らが風の精霊を使役し水面を疾走する姿から「アネーモス・サジタリ」(古代語で「風の射手」の意)のコードネームで呼称される。
【 識別特徴 】
下半身は馬に酷似するが、一般的な馬よりも小型で、鹿を思わせる俊敏な体躯を持つ。毛並みは滑らか。上半身は八百万諸島の多様性を反映し、黒髪、金髪、獣耳を持つ個体など様々だが、例外なく「女性」の形態をとる。
画像
https://kakuyomu.jp/users/teikokuyouitaisakukyoku/news/822139838447903135
❖ 装備
軽装の革鎧や、海草と獣骨で編んだ装束を纏う。全員が風切り諸島の霊木から削り出した大弓を携行している。
❖ 音
彼女らが集団で疾走する際、風を切る音と共に甲高い「ヒュイイィィ」という笛のような音が発生する。これは彼女らの鬨(とき)の声、あるいは意思疎通の手段と考えられている。
❖ 匂い
潮の香りと、嵐の前のオゾンのような鋭い匂いを放つ。
【 生態および能力 】
❖ 雌のみの社会
GYT-007の集落において、雄の個体(成人・幼体問わず)が目撃された記録は一切存在しない。繁殖方法は不明だが、以下の「種馬狩り」との関連が強く疑われている。
❖ 種馬狩り (脅威能力)
年に一度、双月が嵐雲に隠れる「大嵐の季節」に、彼女らは最も活性化する。集団で諸島外の島嶼や航行中の船舶を襲撃し、他種族(人間、獣人、亜人)の男性、特に屈強と見られる個体のみを優先的に拉致する。
❖ 風の精霊使役
八百万諸島の民間信仰に根差した原始的な精霊魔法を行使する。矢に風の力を纏わせて貫通力と射程を増大させるほか、短時間であれば水面を駆けることも可能。
❖ 卓越した弓術
GYT-007は生まれながらの射手であり、荒天の海上であっても驚異的な命中精度を誇る。集団による一斉射撃は、小型艦船の甲板を数秒で制圧する威力を持つ。
【 遭遇時対応プロトコル 】
❖ 警告
「大嵐の季節」において、男性のみで構成されるパーティ(あるいは男性が多数を占める船舶)は、絶対に「風切り諸島」海域に接近してはならない。
❖ 対処
女性冒険者や子供に対しては、縄張りに侵入しない限り比較的寛容である。敵対した場合、彼女らの機動力を削げる沼地や狭い洞窟、鬱蒼としたジャングルに退避することが推奨される。
❖ 弱点
融和の女神フランソルの聖印を掲げることで、一時的に攻撃を躊躇させることが可能との報告がある。これは彼女らがフランソルの加護下にあるため、争いを望まない(融和)の意思表示として認識されるためと推測されるが、効果は保証されない。
【 過去のインシデント記録 】
❖ インシデント GYT-007-01
ギルド所属パーティ「碧の槍」(銀級、男性4名・女性1名)が風切り諸島にて消息を絶つ。3ヶ月後、女性メンバーのみが隣の島で保護される。彼女の証言:「嵐の中、笛の音と共に乙女たちが海を駆けてきた。彼女らは仲間(男性)だけを網で捕縛し、私には目もくれず嵐の中に消えた」
❖ インシデント GYT-007-02
アシハブア王国所属の奴隷商船が航路を逸脱し、GYT-007の襲撃を受ける。報告によれば、積荷の商品(奴隷)のうち、屈強な男性奴隷20名のみが連れ去られた。護衛の傭兵(男性)も全員拉致され、女性や子供の奴隷、老齢の船員は一切無視された。
【 ギルド調査員からの注記 】
八百万諸島は「融和」の女神の管轄だ。それにも関わらず、他種族との融和を(特に男性とは最悪の形で)拒絶し孤立する彼女らを、誰が呼んだか「フランソルの孤娘たち」とは……皮肉が効きすぎている。
拉致された男性たちのその後は不明だ。生還者の報告例はゼロではないが、全員が例外なく記憶の混濁と重度の衰弱が見られ、数週間以内に原因不明の衰弱死を遂げている。彼らは一体、何を「捧げさせられた」のか……憶測は禁物だが。
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