【5話】法則とちゃうねん、知らんけど。-2
「語、どうする。」
ふいに、律葵が促す。
「なんで俺に聞くんだよ?」
「だって家主じゃん。どうする?ニコルちゃん、困ってるんだって。」
律葵の表情からは、同情の色が伺えた。こいつ、すぐ感情移入しちゃうんだよな。バカだから。ま、そういう真っすぐでお人よしなところが良いところなんだけど。
「これでも出て行けって言ったら、俺はひどいやつか?」
「いいや、そんなことないと思うよ。信じられない気持ちもわかるし。よくわからない現象にこれ以上巻き込まれるのが嫌な気持ちもわかる。流石にそこのスライムちゃんを売ろうとしたらひどいと思うけど。」
「キャロル・ノエル。ニコちんとかにはキャノって呼ばれとる。」
普通に話に入ってきて、普通に名乗るなよ。ペース狂うなあ。
「あー、もう。わかったよ。今回はキャノ?の可愛さに免じて、話くらいなら聞いてやるよ。その代わり、ちゃんと全部説明しろよ。」
「キャノ『さん』、な。こう見えて、うちのがお姉さんやから。あと、うちが可愛いのは当たり前やけど、うちに論破されたから折れたのに、その言い訳に使われるんはなんかええ気せんで。」
なんだよ、このスライムは。人がせっかくこの場を丸く収めようと思ったのに。
「ごめんなさい、只埜さん。私が未熟なばっかりにご迷惑かけて…。」
「もう、いいよ。俺のほうこそ、さっきは怒鳴ったりしてごめん。」
女の子相手に大声あげるなんて、確かに大人気なかった。律葵も頭を下げる。
「ほんで、どこまで説明したっけ?」
「未来から来たってとこですよ、キャノさん。」
「語くんと違って、律葵くんは素直やなあ。やから選ばれたんやろな。」
「俺が選ばれた?何にです?」
私が来たときを思い出してください、とニコルが回想を促す。
「覚えてますか?私が最初にこの部屋に入ったとき、なんて言ったのかを。」
「覚えてないな。強盗みたいに入ってこられてビックリしてたし。」
「いや、俺は覚えてる。確か、俺に向かって「やっと会えましたね」って。」
「さっすが、律葵くんやなあ。人の機微をしっかり見とる。」
なんだよ。キャノとやら、やたら律葵の肩ばっか持つじゃん。俺だけアウェイみたいになってきたじゃん。家主なのに。
「キャノ『さん』や言うとるやろ。」
「いいじゃない、キャノ。私も全然年下だけど、キャノって呼んでるし。」
「ニコちんとは長い付き合いやからな。ほんでも、語くんだけはなんか腹立つから嫌や。」
未確認生命体に拒絶されてるやん、俺。
「それで、どういう意味なんですか。やっと会えましたねって。」
「そのまんまの意味ですよ。やっと会えたんです。私は律葵さんを探していたんです。」
「何のために?さっき、任務と言ってましたけど。」
「そうです。任務です。ただ、これについて説明するとなると…。更に胡散臭い話になってしまいますが、構いませんか?」
ニコルはちらっと俺のほうを見る。なんか居心地が悪い。家主なのに。
「ここまでの話も充分胡散臭かったし、話してくれていい。俺だって全部説明しろって言ったしな。」
「お、ちょっと素直になったやん。」
茶々を入れるな、ネコミミスライム。
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