第一章 第十八話「教室①」

〈お詫び〉

 予約投稿が完了していなかったらしく、昨日更新することができませんでした。申し訳ございません。




 シアの筆箱に書かれた、「アルシア・リーズ・ミッチェル」という名前が見えた。ミッチェル家ってことは、ブロンシェ王国の比較的近くにあるラベトリア王国の裕福な伯爵令嬢ね。ミッチェル伯爵は、ラベトリアの外交大臣で、準侯爵でもある。シアル家はユースア帝国の子爵令嬢。

 この世界ではしょっちゅう「凖」や「小」のついた爵位名を見かける。彼らは転勤貴族の一族。文官貴族や騎士貴族、領治貴族とは違って、国から何かしらの仕事えを任され、しょっちゅう他国へ移り住む貴族のこと。転勤貴族の子女は「国際学問協会」が定めた魔法学校へ行くことが求められている。インターナショナルな学校に様々な国の貴族を集めることで、差別や孤立など、トラブルを防ぐ効果がある、らしい。

 「準」や「小」のつく爵位は仕事の功績によってもらえるもので、「準」のつく爵位は一代きり、「小」のつく爵位は十代先まで名乗ることができる。それらの爵位の序列は、「準」か「小」の後につく爵位名の一つ下の序列で、「小」の方が「準」よりも序列が高い。わたしのお祖父様はもともと公爵だったけれども、文化大臣で、幾つもの破損した修理不可能な「国の宝」を特殊属性「時戻りの力」で直したことで、小公爵の位を与えられている。将来的にはどちらも弟のカオルが継ぐ予定。わたしの母方の祖父は家計が火車でお母様がカミヤ家に嫁ぐことでなんとか財政を取り戻したあまり「器用ではない」方だけれど、小侯爵の位を持っている。そちらはセイラが継ぐ。わたしは商会を継ぎなさい、と言われているけれど、多分カオルが継ぐことになる。

「わたくしたちって転勤貴族でしょ?なんの仕事でここへ来ましたですの?わたくしの父は外交小大臣でお母様、お姉様と共にブロンシェへ来ましたの。冬はブロンシェの、夏はユースアの社交界に出ていますわ。魔法陣は四つも持っているの!ねえ、貴方たちはいくつですの?」 

 なるほど、魔法陣についてわたし達に「教え」たかったんだ。魔法陣は一つが屋敷を一つ建てられるほどの値段。一つの魔法陣からその他の設置した魔法陣まで転移することができる。お金持ちなのかな?

 小大臣は、大臣の補佐として選ばれる四人の人物で、準子爵の位を併せ持つことができる。

「シアはどうですの?」

 シアはまたか、と言うような表情でニコラインを見て、話し出した。

「私の父は外交大臣で準侯爵、魔法陣を六つ所有しているわ。私は夏も冬もラベトリアの社交界に参加しているわ」

 ブロンシェの社交界には参加していない、ということ。

「カレンは?どうですのぉ?」

「わたしの実家は転勤貴族ではないよ。母方の祖父は伯爵兼小侯爵、父方の祖父は公爵兼小侯爵。魔法陣はお祖父様達は10くらい持っているはずだけれども、うちはお父様が転移魔法を使えるから持っていないよ」

 この話を学校でしたのは初めてかも。自慢みたいに聞こえてもっと嫌われちゃうもん。今回は相手に聞かれたから答えたけれど。

「貴族だと言うことを忘れて仲良くしましょうね?」

 ニコラインが言った。だったら財産に関する話をしなければ良いのに。

「はーい、皆さん、静かに!」

 ミセス・アルバーが手を叩いて談笑していたみんなを静かにさせた。

「本来は算数の時間なのですが、」

 算数!?わたしの一番好きな教科。難問を解けた時の達成感が好き。

「新しい生徒もいますし、一時間目は自己紹介の時間にしましょう!」

 残念。だけれどみんなのことを知れるのは嬉しい。

「それではカレンさんからどうぞ」

「はい!」

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