元社畜令嬢 〜今世こそは良い人生を!〜
@zerosiki_00
初めての異世界
1 次こそは
「ただいま......」
疲れのせいか無気力な声でつぶやき家に入る。
12月に入り寒くなって来た今日も帰宅時間は夜11時。
我ながらよく働いた。
電気も付けずに1Kの部屋に歩きそのまま小さなベッドに倒れ込む。
「......はぁ、何やってんだろ俺......。」
将来を考えずに高校生活を過ごし、卒業。
そのままテキトーに入った会社がまさかのブラック。
辞める勇気もなく勤続15年。共に青春を謳歌した友達とも合わず、彼女も無し。狭いアパートに寂しく1人暮しだ。
「はあぁぁ....」
もう一度大きなため息をつき気持ちを切り替える。
自分に残された時間は少ない。あと6時間半でまたあそこに行かねばならない。
あ、今日明日当番だからいつもより30分早く行かなきゃ。
風呂に入って、飯を食って、歯磨いて。
早く済まして寝たいが身体が動こうとしない。
「もう、いっか。このまま寝ても。」
どうせ誰も気にしない。
ああ、まぶたが落ちだした。うん、やっぱりこのまま寝よう。こんな日があってもいいだろう。
何も無い人生、こんな些細な変化くらいあった方がまだいい。きっと死ぬまで変わらない、山も谷もない人生。
後悔が無いわけじゃない。きっと次があればこんな生き方選ばない。
もし次があるならば。
次こそは。
山あり谷ありの素晴らしい人生を謳歌したいものだ。
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眩しい......
目を瞑っていても分かる太陽の光で俺の意識は覚醒した。やはりあのまま眠ってしまったらしい。欠伸をして起きようと考えふと思い至る。
朝日?......しまった...!!!
12月で朝日出てるってことはもう結構いい時間じゃねぇか!?
カッと目を開き体を起こそうと力を入れる。
そして、開いた目をさらに目玉飛び出すんじゃないかぐらい見開く。
なんだこの部屋。
割と高いであろう自分の身長よりデカい窓、メッキかガチの貴金属か部屋中にキラキラと輝く煌びやかな装飾、おまけに見知った俺の部屋が10倍になってもまだ小さいであろう一室だ。
いや、ココドコ???
ていうか身体起こせないし。いやいや、落ち着け。動揺しても何も始まらない。一旦深呼吸して心を落ち着けもう一度周りを見回す。
(首が動かないので目を使い)
......柵?しかもなんか揺れてね?
さっきまでとの部屋のギャップと実は起きてからずっと揺れていた視界に思わずえずき「うぇっ」と声を出す。
すると、頭上から声が聞こえた。
「あら?少し激しかったかしら。」
優しく、けれども俺がえずいたことに少し慌てた様子の声が聞こえその声の主であろう人影が視界に映る。
......美人である。まず肌ツヤがすごい。まるで絹のような質感に見える。そして宝石のような紅い眼。何より目を見張るのはこれまた輝く金髪縦ロール。
ザ・漫画の貴族的なその女性はまるで聖母のような瞳で俺を見つめた後自分の胸に抱きこう言った。
「よしよし、ごめんね。もう大丈夫よ、シーナちゃん」
そこで俺は初めて自分を見つめ直し、今の自分の状態を理解した。
赤ちゃん。
いやいやいや!?ちょっと待ってくださいよっ!?
確かに今の状況は母親にあやされてる赤子のそれだよ!!
でも俺もう33なんですけど!?
チョットキブンイイケドこれはきついものがあるんですけどおぉぉおぉおぉおおお!!!!!
俺の悲痛な心の叫びは「びゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」という紛うことなき赤ちゃんの泣き声で部屋中に響き渡った。
これが、この世界へ転生を果たした俺の最初の記憶である。
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