「役立たず」と罵られダンジョンに置き去りにされた荷物持ちの俺が、ゴミ同然の【収納】スキルが覚醒して最強の【神の宝物庫】になったら、抽出したスキルと伝説級の装備で無双し、辺境でスローライフを始めた件

人とAI [AI本文利用(99%)]

第1話 Sランクパーティの奴隷

「おい、アイン!飯はまだか!ぐずぐずするな、役立たずが!」


 怒声と共に、背中に衝撃が走る。Sランクパーティ『太陽の剣』のリーダー、勇者レオ様が俺の背中を蹴りつけたのだ。俺はうつ伏せに倒れ込み、石ころだらけの地面に顔を打ち付けた。


「も、申し訳ありません!ただいま!」


 口の中に広がる鉄の味を飲み込み、俺は慌てて立ち上がる。ここは高難易度ダンジョン『奈落の口』の第49層。最深部を目前にしたキャンプ地だ。


 俺の名前はアイン。このSランクパーティで『荷物持ち』をしている。俺のスキルは【無限収納】。ただひたすら、無限にアイテムを収納できるだけの、誰にでも使えるコモンスキルだ。


「これです、レオ様。温かいシチューと、焼きたてのパンです」


 俺はスキルから完璧な温度で保温していた鍋と、ふっくらとしたパンを取り出し、メンバーそれぞれの前に並べていく。


「ちっ、こんなもんか。どうせまたまずいんだろうな」


 レオ様は舌打ちしながら、スプーンでシチューを一口すする。そして次の瞬間、盛大にそれを地面に吐き出した。


「まずい!なんだこれは!こんなものを勇者である俺に食わせる気か!」


 熱いシチューが入った器が、俺の顔めがけて飛んでくる。咄嗟に避けたが、肩に熱い液体がかかり、火傷のような痛みが走った。


「あなたのせいで探索が遅れたのよ、この無能。食事の準備くらいまともにできないの?」


 パーティの紅一点、天才魔術師のリナ様が冷たい視線で俺を射抜く。


「そうだぜ。てめぇの【無限収納】なんて、ただの倉庫じゃねぇか。戦闘じゃ何の役にも立たねぇゴミスキルだ」


 岩のように巨大な戦士、ゴードン様が俺の胸ぐらを掴んで持ち上げる。


「ひっ……!も、申し訳…」

「うるせぇ!」


 ゴードン様の拳が、俺の腹部にめり込んだ。


「ぐっ……ぅ…!」


 息が詰まり、地面に蹲る。そんな俺を、僧侶のセラ様が慈悲深い笑みで見下ろしていた。


「アインさん、これも聖なる試練です。この苦難を乗り越えれば、きっとあなたも成長できますよ」


 口では優しいことを言いながら、彼女が俺に回復魔法をかけてくれたことなど一度もない。


 これが、俺の日常だった。


 彼らのポーション管理、食料管理、予備装備のメンテナンスは、全て俺の仕事だ。戦闘中にゴードン様の剣が折れれば、俺が【無限収納】から寸分の狂いもなく予備の剣を取り出す。リナ様のマナが切れれば、最適な濃度のマナポーションを即座に差し出す。


 俺が長年かけて磨き上げた、思考と同時にアイテムを取り出す神業じみたスキル操作と、完璧な在庫管理。それこそが、このパーティの生命線のはずだった。


 なのに、彼らから感謝の言葉を貰ったことは一度もない。あるのは罵倒と暴力、そして搾取だけ。


 それでも、俺は耐えてきた。いつか、このダンジョンを攻略すれば。莫大な富と名声を手に入れれば、きっと俺の働きも認めてもらえる。そう、信じていたから。


「…さあ、皆の者、腹ごしらえは済んだな。いよいよ最深部、第50層だ」


 レオ様が立ち上がり、ボス部屋へと続く巨大な扉を見据える。その目は、欲望と野心で爛々と輝いていた。リナ様もゴードン様も、高揚した表情で頷いている。


(…やっと、終わるんだ)


 俺は痛む腹を押さえながら、安堵の息をついた。この理不尽な日々も、今日で終わりだ。


 しかし、その時の俺は知らなかった。扉の向こうにあるのが輝かしい未来などではなく、俺を突き落とすための、さらに深い絶望の淵だということを。


 そして、俺の背中に向けられたレオ様の、獲物を見定めるような冷酷な視線にも、全く気づいていなかった。

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