第8話:世界初の「全裸フルブースト」!真の力で大迷宮を穿つ

ケルベロス・ロードの三つの頭から放たれたブレスは、ブリーフ一枚の姿となった裸藤 真の周囲で霧散した。真の全身からは、2の113乗倍という途方もない倍率のブーストによるエネルギーが、ダンジョン全体を震わせるほどの圧力となって放出されている。

「俺の力は、まだこんなものじゃない」

真は、最後の砦、ブリーフに手をかけた。

(これを脱げば、合計114枚。2の114乗倍だ。これは、神の領域――いや、裸の領域だ!)

真は、羞恥心という感情を、もはや遠い記憶としてしか感じなかった。彼の心は、この絶対的な力を解放することへの純粋な歓喜に満たされていた。

スッ――

真は、最後の装備であるブリーフを脱ぎ捨てた。

> 『ヌーディストブースト』全解放!脱衣枚数:114枚!

> 能力ブースト: 2の114乗倍! (約1の後ろに0が34個続く倍率の1000倍!)

>

グワアアアアアアァァァァァッ!!

真の肉体から放たれた力は、もはや光だった。

大迷宮の深部に、核爆発のような閃光が走る。真の全身は、自己発光しているかのようだ。彼の周囲の空間は完全に崩壊し、次元の境界すら曖昧になる。

ケルベロス・ロードは、そのあまりの恐怖に、三つの頭で同時に悲鳴を上げた。

「あ、あああああああ!」

真は、全裸で、光を放ちながら静止している。彼を構成する肉体の粒子一つ一つが、宇宙の真理を体現しているかのように完璧な力を宿していた。

ケルベロス・ロードは、全ブーストの真の姿を前に、戦意を完全に喪失した。

「ま…負けた!人間ではない!貴様は概念だ!」

真は、光のオーラを纏ったまま、ゆっくりと右腕をケルベロス・ロードに向けた。

「お前の負けだ。そして、俺の勝ちだ」

ズドォォォォォン!!!

真が腕を振ったのではない。彼がブーストの力場を解放しただけで、その巨大なケルベロス・ロードは、存在した空間ごと、一瞬で消滅した。残ったのは、その魔力核と、真の全裸の姿だけだ。

真は、ケルベロス・ロードの魔力核を手に、迷宮の最奥部、ブースト・ウェーブの発生源である**『大迷宮の魔力核』**へと向かった。

魔力核は、巨大な水晶の塊のような姿をしており、そこから猛烈な魔力の波動が噴出していた。

真は、その魔力核の前に立ち、全裸のまま静かに深呼吸をした。

(この力を、ただ破壊に使うだけでは、もったいない)

真は、ブーストされた身体能力を、魔力の制御に特化させた。彼は、全身から放たれる2の114乗倍の力を、繊細な針のように収束させ、魔力核に当てた。

真の目的は、破壊ではない。魔力核の暴走した魔力制御システムを、物理的に修復することだ。

真の指先から、莫大なエネルギーが魔力核に流れ込む。真は、魔力核の内部構造を完全に把握し、暴走の原因となっていた数ミクロン単位の魔力回路の欠陥を、ブーストされた力で修復していく。

ピカァァァァッ

魔力核は眩い光を放ち、そして、暴走していた魔力の奔流は一瞬で収束した。

ブースト・ウェーブは、完全に停止した。

真がブーストを解除し、疲労を感じながら服を着替えて地上に戻ると、WAFや各国の防衛隊は、静まり返った迷宮入口を見て驚愕した。

「ブースト・ウェーブが、止まった…?」

「誰が?何が起きたんだ?」

その沈黙の中、真は一人、Tシャツとジーンズ姿で現れた。彼の右腕には、ケルベロス・ロードの魔力核が抱えられている。

WAFの幹部が、信じられない様子で真に詰め寄った。

「裸藤Sランク!一体、どうやって…」

真は、ケルベロス・ロードの魔力核を差し出し、涼しい顔で答えた。

「全ブーストですべて解決しました。報酬は、約束通り。そして、任務の詳細については**『ブリーフ一枚で最奥に到達し、すべてを圧倒した』**と公表してください」

真は、自身の変態的スキルを、最強のブランディングへと昇華させた。

彼の活躍により、世界は救われた。そして、世界中の人々は悟った。

Sランク冒険者・裸藤 真は、本当に服を脱いでいる時が最強なのだ、と。

翌日。世界中の新聞の一面には、こう書かれていた。

> FランクのSランク、『ヌーディスト・ヒーロー』、全裸一歩手前で世界を救う!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る