幼馴染が冤罪を吹っかけられたけどなんかおかしい。

サドガワイツキ

第1話 幼馴染が冤罪をかけられたんですが。


「おい聞いたかジョナサン!!!!なんかすげーことになってんぞ、悪役令嬢の断罪って!!!!」


 そういって駆け込んできたのは友人の一人、アーサーだった。短く切った金髪を逆立て、爽やかさ漂う整った顔立ちの筈の顔が信じられないものを見たという驚きの表情を浮かべている。


「騒々しいな、飯ぐらい静かに食べないか」


 紺色の長髪を首の後ろで束ねた眼鏡の男子、モーリスがサンドイッチを齧りながらアーサーを窘める。


「まぁ待てよモーリス。何があったのか聞かせてくれよアーサー」


 先に食事を終えて上半身裸で腕立て伏せをしてた禿頭の少年、ジャックがトレーニングを中断してアーサーに何があったのかの話を促す。


 アーサー、モーリス、ジャック、そして俺―――ジョナサン。

 この場にいる一同は、王立貴族学園の中でも中流以下の貴族の家が所属する騎士学科に所属している仲の良い男子グループだ。

 成績が悪いだとか態度が不真面目だとかどこでも脱いですぐ筋トレするとかで教師の評判の悪い俺達は“最低野郎”だなんて言われている。同性の友人は多いけれど異性からの評価は最底辺、まぁ俺には幼馴染の婚約者がいるから異性の目だとか評価なんて気にならないけどな。


 そんな俺達は学園の中でも来る人の殆どいない日陰の校舎裏が俺達のたまり場で、今みたいに昼休みや、やる事のない放課後は此処に集まってダラダラしていることが多くてこうして特に理由もなく集まっているのだけど・・・。


「ジョナサン!お前の婚約者のミーナが、悪役令嬢だって皆の前でルーシーに断罪されたんだよ!!」


「何なにナニィ?!?!」


 穏やかで虫も殺せないようなミーナは俺の幼馴染で婚約者だ。

 ・・・それが悪役令嬢!?断罪?!一体なんでそんなことに!!

 それに、ミーナを断罪したというルーシーはミーナの親友で、ここにいる3人の友人達が惚れている学園きっての美女である。

 どういうことだ、まるで意味が解らんぞ!!

 

 そんなアーサーが言うには、つい先ほど学園の皆が集まる食堂ホールでルーシーが年下の生徒数人を連れて壇上にあがってミーナのいじめや嫌がらせに始まり異性をたぶらかしているなどの非行を糾弾しはじめて、しまいには学園に相応しくないとまで言い切って断罪をしたというのだ。


 身内のひいき目を抜いてもミーナがそんな事をするはずがないし、ミーナが他の男を誑かす筈がない。しかしルーシーに連れられて壇上に上がった下級生たちが庇護欲をそそる仕草ですすり泣きながら、ルーシーの言葉に追従するようにしてミーナの悪行を訴えた事でミーナは酷い女だ、悪役令嬢とレッテルをはられてしまったらしい。


「妙だな。まずルーシーとミーナは無二の親友だ、ルーシーであればミーナを晒しものにして糾弾する前にまずはミーナと話し合おうとするはず。そしてその場にはいつでも冷静で頼りになる美男子・このモーリスに相談して同席させるはずだが―――」


「前半は同意だけど最後の妄想はたいがいにしとけよムッツリスケベのおっぱい野郎。ルーシーが困ったときは全身筋肉の鋼のボディをもつこの俺、“ガチムチ”のジャックに決まってんだろうが!みろよこの高速ビーチクピクピクを、これならルーシーもイチコロだぜ」


 訝し気に思案を始めたモーリスの言葉を遮り、ジャックがにっこりと笑顔を浮かべながら高速で胸筋を動かし乳首を高速で可動させるけれど控えめにいて見苦しくてキモい。


「そうかな?ルーシーが相談するなら俺じゃないかなぁ、休日にはルーシーの買い物に付き合わされたり一緒に遊びに行ったりしてるし、放課後に新作のケーキを食べに誘われたり観劇に行ってるし」


「「抜けがけしてんじゃねえよアーサー!!!!!!」」


 取っ組み合いを始めた3人の愛すべき馬鹿・・・じゃなかった友人達を窘める。


「まてまて話が脱線してる。

 俺もアーサーとルーシーがケーキ屋にでかけていてルーシーにケーキをあーんって食べさせてもらってるの見たことあるけどそれは一旦おいておいて話を続けよう」


「詳しく・・・説明してください。今、俺は冷静さを欠こうとしています」


 事態を鎮静化させようとした俺の言葉に、何故か眼鏡の奥の瞳から光が消えたモーリスがくいさがってくるけれど、無視して俺の見解を述べる。


「幼馴染のひいき目を抜いてもミーナがそんないじめをすることは無いと思うし、特に他の男に靡くこともないと俺は思っている。だからそのルーシーの断罪は妙だよな」


「だよなぁ、お前俺達の中で一番巨大な聖剣を持ってるもんな!!!!!!」


 そう言って正面に回り込むと俺のズボンをさげようとするアーサー。おいコラ馬鹿辞めろ!!


「ウオッッッ!!!デッッッッッ!!!!!!!!!!」


「デカ過ぎんだろ・・・」


「はぇ~すっごいおっきい・・・」


 3人の友達が俺の下半身を凝視してそれぞれに感嘆の声を上げているがズボン下げを阻止しつつアーサーを蹴り飛ばす。


「何をするだぁーっ!!!許さん!!」


 アーサーの首のあたりに蹴りを見舞うと、ふっと空気の抜ける音を立てて目を見開いたまま意識を失った。呼吸はしてるから生きてるな、なら何も問題はない。死ななきゃ安い!

 ジャックがアーサーの身体をガクガクと揺さぶるけれど、失神しているのかアーサーからの返事はない。


「だってよ・・・アーサーなんだぜ」


 悲しそうに呟くジャックの言葉を最後に静かになる。


「・・・けど実に妙な話だ。

 ルーシーもミーナも親友同士の筈が、在りえない冤罪をかけている。

 特にマイスウィートプリティエンジェルマイハニーのルーシーたんがそんな事をするはずがない。あのたわわな巨乳が人を貶めるような悪行を行うはずがないからのだ、おっぱい万歳!!」


「モーリス、お前の語彙って時々ヤヴェーイいよな」


「そんなに褒めるなよ」


 全然褒めてないよ。・・・しかし、惚れた女達が起こした謎の断罪劇に対して俺達は疑問を抱き、協力して調べることにした。まってろミーナ冤罪なんて俺が晴らしてやんよ!!

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