第34話:よう、起きたか


「ん……」


 そうして安藤先輩と愛してるゲームをして、色々あった後に帰ってきて。部屋のリビングに血溜まりがあって。そこでカーマは目を覚ました。


「よう。起きたか」


 俺は血臭がするなかで部屋にいたくないので窓と扉を全開にしていた。とりあえずハウスクリーニングを依頼するレベル。既に予約はしている。どうせマンションのエントランスのセキュリティは高度なので、扉や窓を開けていても侵入者はそういないだろう。


「あれ? 私……」


 そこでカーマが目を覚まして、キョトンと俺を見ている。


「あれ?」


 あれ、じゃないんだが。


「私、死にましたよね?」


「そうだな。出血性ショックで死んでいたな」


「何で意識があるんですか?」


「俺が蘇生させたから」


「…………ちょっと何言ってるか分かりません」


「俺も別に理解させるために言ってるわけでもないしな」


 そうして血の臭いが酷い中で、俺はコーヒーを飲む。


「ていうかリビングに血を撒き散らすなよ。俺に迷惑がかかるとは思わんのか」


「でもアキラ先輩が刺してきて……」


「まぁ原因が那辺にあるかと言えば、確かにアイツだが」


「はぁ。素敵でした。アキラお姉様の愛を感じられましたから」


 だからって刺されていいとは思わんのだが。そもそもリビングに飛び散った血が俺にとっては迷惑であることは変えようのない事実でもあり。


「あ、血で汚しちゃいましたね」


「場合によっては請求するからな」


「お金ない……」


「前はどうやって暮らしてたんだ?」


「メイド喫茶で、そのー」


「ほう」


 ハウスクリーニング代もそこから出してもらうか。


「それはアキラ先輩に請求してくださいよー」


 言われてみれば確かに。で、なんでアキラを上げたんだ? 以前の経緯から刺されるってわかっていただろ。


「だってアキラ先輩だったら嫉妬して私を刺してくれると思うじゃないですか」


 言っている意味が欠片も分からんのは、俺のせいか?


「痛くなかったのか?」


「超痛かったです。それに死んだんですよね」


「もち。ガチで死んでたぞ」


「ソレを生き返らせた。と。本当に異常ですよね。ネバダ先輩って」


「いやぁ」


「褒めてませんからね」


「とは言われても、だ。ここで死体を出すわけにはいかんし。刑事事件なんてもってのほかだろ」


「そこに関しては失礼しました」


 以降気を付けるように。


「じゃ、飯でも食うか」


「いいんですか!?」


「ちょっと気になる中華料理屋があってな」


「連れて行ってくれる……と」


 というか、血臭が酷すぎて、ここで飯を食う気にならない。


「炒飯!」


「五目あんかけ焼きそばと酢豚」


 そうして中華料理屋に行き、俺の奢りで飯を食うことになった。油の味がする料理は不健康ながらに美味しく、さすが中華というか。俺にとっては至福のひと時。


「ところで先輩って……死者を生き返らせられるんですか」


「否定も難しいな。絶対ではないんだが」


「絶対じゃない……というと?」


「死体が新鮮な状態で残っていれば、大体まぁ行ける。だが火事に巻き込まれた焼死体とか、既に納骨されて骨だけだとかでは無理だな」


「だから私を、ですかー」


 死なれるよりは生きてもらった方がどうにか嬉しいだろ? 酢豚を食べて、五目あんかけ焼きそばを食う。ちなみに酢豚はカーマと共有している。


「じゃあアキラ先輩のヤンデレも通用しないと」


「そういうことになるのか?」


「私が刺されても助けてくださるんですもんね」


「あくまでその気になればな」


 毎度のように便利に使われるのは御免だ。俺だって助けなくていいなら助けたくないんだよ。


「ううん。先輩はいい人だよ。アキラ先輩が惚れるのも分かるな」


「男嫌いのお前にそう言われると、少しは嬉しいな」


「そんなわけで。帰ったらエッチしましょう」


「やだ」


 即答だった。


「…………何故」


 血の臭いのするとこじゃ勃つモノも勃たないって。


「じゃホテルで」


「学校関係者に見つかったら袋叩きだぞ」


「先輩はロリ巨乳の恋堕の天使とまぐわらなくていいと仰る?」


 抱いていいならもちろん抱きたいが、それをやると色々とな。


「もしかして不死身だから生殖能力を持っていない……とか?」


「いや? 普通にオナニーもするし発情もする」


「ちなみにそれって呪いかなんかです?」


「もうちょっと思想的で魔法的だな。別に自慢するほどのこっても無いんで、誰にも言っていないだけだ」


「私を不死身に出来ますか?」


「ある意味イエスで。ある意味ノー」


「その心は?」


「スワンプマン、っていう単語を調べるとわかるぞ」


「じゃ後でスマホで。あ、先輩も炒飯食べます?」


「そうだな。頂こう。お前も五目あんかけ焼きそばを食え」


「じゃ、いただきまーす」


 そうして二人で中華料理屋で腹をくちくした。意外と好評だったので、機会があればまた行くか。今度は海鮮焼きそばを食べてみようと思う。


「先輩の家ってワイファイありますよねー」


「既に色々やってるだろ」


「我が家はちょっとアレだったんで。中々ネット環境も難しく」


「スマホ代。俺が払おうか?」


「いえー。そこまで迷惑をかけるわけにはー」


「大丈夫だ。日本人の血税で養われているから」


「それもっと断りたい奴ー」


 たしかにな。だが陰陽省が俺の予算をくれたの事実だし。それによって今俺は柳原区に来ていると言っても過言ではない。


「つまり政府の意向を受けて動いていると?」


「うーん。どっちかってーと柳原で確かめたいことがあるから、ついでに調査依頼を受けて金を出させた……が正しいかね」


 ズゾゾゾーとあんかけ焼きそばを食べながら、俺は身も蓋も無いことを言った。

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