第4話:愛が重い女の子
「あはは、一人暮らしなんですね」
で、駅で砂漠谷さんと別れて、そのまま常闇さんを家に連れて帰った。そのままセクロスまであるかもしれないと思うとテンション上がるが、やはりそれは童貞乙なのだろう。
「お茶は何がいい? アイスティーは紅茶と緑茶と麦茶があるが」
「お構いなく……」
そういうよな。とりあえずグリーンティーのアイスティーを用意する。そしてリビングに顔を出して、茶を振る舞う。
「あの。なんで助けたんですか?」
「お前が思いつめた表情をしてるから自殺でもするんじゃないかと。案の定だったがな」
別に助けなくてもよかったが、後で後悔するくらいなら、泥くらい被ろうと思っただけだ。単に俺の精神的な衛生の問題。
「嬉しいです……」
で、そんな俺にギュッと袖を握って、常闇さんは涙を流す。
「こんなに素敵に助けられたの……初めてです」
そうですか。
「で、なんで飛び降りたの?」
「彼氏から別れるって言われまして」
「はぁ」
「じゃあ別れるならビルから飛び降りるって言ってしまったんです」
それはまた軽率な。
「なんで……なんで……私はこんなにも愛しているのに……なんで……」
「愛が重いとか?」
「でも彼は愛が重くても構わないって言ってくれたんですよ?」
「お前が男を見る目が無いのは分かった」
「?」
「目の前の女の子と付き合うためなら、男ってのは詭弁を弄するんだよ。覚悟も無く愛が重くても構わないって言ってのけるんだよ」
「嘘じゃ……ないですか」
「そういう風に嘘をつくのが男だ。一つ勉強になったな」
ポンポンと常闇さんの頭を軽く叩いて、慰める。
「じゃあ伏見くんも私とヤりたいから今こうやって優しくしてくれているんですか?」
「イエスアイドゥー」
もちろんだとも。月影の女神とヤれるなら失恋の傷を慰めるくらい平気でする。なので、俺は常闇さんに優しいのだよ。
「じゃあ、もっと優しくしてください」
「これ以上か? とするとオプションが必要だぞ」
「身体で払います。伏見くんの望むプレイをします。だから私を慰めて……」
そう言って、ギラギラした猛禽の目で俺の瞳を見つめ、唇を重ねてくる。
「ん……ぅん……♡」
俺にキスをして、そのままトロンと目を細める。熱に浮かされている人間の顔だ。
「あの……私これでも可愛いと思うんですけど」
「そーだな。常闇さんは可愛い」
「アキラ……と呼んでください」
「俺がアキラとか呼んでいいのか?」
「伏見くん……ううん……ネバダくんにならいいですよ」
そしてまたキス。彼女の手が俺の手を掴んで、その手を自分の胸に誘導。
「そんなに大きくなくて申し訳ないですが」
「大きさが全てじゃないと思うぞ」
とか言いつつ砂漠谷さんの巨乳には圧巻だったが。アレは多分Hカップはある。アキラのはCカップくらいだろう。普通にあるにはあるし、少年の欲情を刺激するには十二分だ。
「ネバダくん……ネバダくん……ネバダくん……♡」
俺の唇を奪うアキラ。だが盲目過ぎないか?
「ちょっと落ち着け。俺として楽しいか?」
「だって私の投身自殺を助けてくれたじゃないですか」
「アレで惚れたとか?」
「はい」
チョロ!
「前の男はいいのか?」
「どうせフラれましたし。ネバダくんは私の重い愛を受け止めてくれますか?」
「イエスって言ったらどうなる?」
「私は今日朝帰りですね」
「いや、そこまでは……その……」
「私の全部を上げます。生憎と処女ですけど、唇もおっぱいもアソコも全部差し上げます。いりませんか?」
すっげー欲しいけどさ。
「じゃあ契約成立ですね。私とヤっちゃってくださって構いませんよ?」
「童貞の夢だな」
「ネバダくんってあっちはどんな感じですか?」
「小さい方」
「大丈夫ですよ。私は気にしませんから」
そう言われると救われるが。
「え、マジでヤるの?」
「ここでヤらないなら、私はシャワールームで自分を慰めるしかないんですけど」
それもどうよ。
「私と付き合ってください。そしたら私の全てを差し上げます」
「全てって……全て?」
「貯金はあまりありませんが。あ、我が家の土地の権利所とかありますよ?」
怖いよー。マジで言ってるよー。こいつ。
「あ、それとスマホのセキュリティロックを教えてください。恋人になるんですから情報共有は彼女の義務です」
「彼女面するな」
「付き合って……くれないんですか?」
「もち。スマホのセキュリティも教えん」
「でも私以外の女の子なんて必要ないですよね。電話番号もSNSも全部削除しましょう? 私が相手しますので」
なるほど。愛が重いな。
「お前、そんなんだからフラれるんだぞ」
「ええ? だって恋人以外の異性のアカウントって必要なくないですか?」
「じゃ、お疲れ様でしたー」
「ネバダくん……嫌だ……捨てないでぇ……」
必死に取りすがるようにアキラは迫ってくる。俺におっぱいを揉ませて、嬌声を上げながら俺にキスをする。その必死のプレゼンを、俺は蔑ろにした。
「ネバダくん……好きぃ……大好きぃ……ネバダくん以外の男には捧げないからぁ」
キス。キス。キス。
「お願いします。私をネバダくんの恋人にしてください」
「面倒そうだからヤダ」
「私にはネバダくんしかいないんです」
「男は他にもいるぞ」
「でも投身自殺した私をお姫様抱っこしてくれたのはネバダくんだけだから」
生憎とアレは嫌がらせだ。
「じゃあせめて女性の電話番号だけ消させて? お付き合いするのはそれからでいいから」
「絶対イヤ」
「あと学校では私以外の女子とは話しちゃダメですよ? 話し相手が欲しいなら私がお付き合いしますので」
だから重いんだよコノヤロー。これで彼氏が愛想をつかす理由も分かった。こんなメンヘラと付き合っていたら自我がどうにかなってしまう。一夜の過ちと引き換えに精神的苦痛を味わうのは馬鹿の所行。そして俺はバカの方向性が違った。
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